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普通の学園生活って何ですか?  作者: 有木千夏
第二章 『境界に踏み込む者たち』
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放課後の帰り道

「少し早いですが、これで授業を終わります」

「「「ありがとうございました」」」


 30分くらい早く四コマ目の授業が終わり、天羽はフェルンと一緒に寮へ帰っている途中、またロイゼの言葉を思い出していた。


「シビス、か……」

「どうかしましたか?」

「あ、いや。何でもない」


 ロイゼは004に殺されたと言っていたが、これはおそらく消え際に言っていたシビスという奴のことだろう。

 殺人鬼004、シビス……

 殺人鬼というからにはロイゼの他にも殺された奴がいるに違いない。

 今考えてみれば、殺されたロイゼは審判(ジャッジメント)の力で幽霊(のような存在)となり生き延びていた。

 つまり、審判(ジャッジメント)は死者を生き返らせることが出来る能力なのだろうか?

 それに、ロイゼは世界に二十二人しかいない強力なタロットカードの能力者。

 ディヴィアント学園側からすれば残しておきたい存在のはず、なのになぜシビスに殺させた? 

 いや、間違いでシビスに殺されてしまった可能性は……?


「あ」

「お?」


 考えながら歩いていると、前から蓮が歩いてきた。

 右手を挙げて近づいて来ると、天羽もそれに返すように一礼をした。


「こんにちは、蓮さん」

「やぁ、麗城君とフェルンさん。初めての授業の方はどうだっ……た?」


 笑顔だった蓮の顔は一瞬で険しい顔になった。

 蓮は天羽だけを見つめて、


「麗城君、その子は一体何者だ?」


 突然何を言っているのかと思ったが、瞬時にその言葉の意味を察した。


「……一応聞きますけれど、隣にいるフェルンの事じゃないですよね」

「違う、君の中にいる子の事だよ」

「……どういうことですか、何が起きているんです?」


 忘れていた、蓮は心を読める能力の持ち主だから今一番会ってはいけない人物だった。

 フェルンは状況が呑み込めず天羽と蓮を交互に見ている。

 しかし、天羽はそれに構っている余裕はない。

 ロイゼの存在はフェルンにも言っていない、いずれ皆に話す時が来るにしても今ではないと直感がそう言っている。

 蓮に審判(ジャッジメント)の力を知られたと思い焦ったが、蓮は全てを理解したかのように頷いて天羽の肩を叩く。


「麗城君、少し俺の部屋でお話をしないか? 実は俺もその力について気になっている事があるんだ」

「……気になっている事?」

「天羽さん?」

「悪い、フェルンは先に……」

「いや、フェルンさんも一緒で良い。むしろ、一緒が良いだろう」

「え、でも……」

「……わかりました、私も聞きます」


 蓮の提案にフェルンは力強く答え、隠し事は許さないと訴えているような表情が天羽に刺さる。


「どうしてそこまで……」

「昨日帰ってきた時から、天羽さんは何かを考え続けているような感じに見えていました。なので、少しでも力になれたらな、と思いまして」

「……」

「フェルンさんは優しいんだね」

「え、それは、その……!」

「わかりました。話しますから早く行きましょう」


 二人の押しに耐えられず天羽は渋々フェルンの同席を承諾(しょうだく)した。

 蓮と一緒に寮へ戻り蓮の部屋に着くと、リビングにあるテーブルの下の椅子を出して向かい合うように座り、軽く腕組みをしながら話を始める。


「では、さっそく本題に入ろうか。麗城君の中にあるその力はアルカナの力、審判(ジャッジメント)の力だね?」

「はい、昨日外で幽霊みたいな少女に託されまして」

「力を託された、か……」

「え? ゆ、幽霊ですか?」

「……あの、蓮さん。蓮さんが気になっている事って何ですか?」


 少しおびえているフェルンを横に、下を見て考え込んでいる蓮に質問するとゆっくりと頷いて、


「俺はこう見えて能力の歴史を研究しているんだ。俺がここに入りたての頃、学園長からダグラス・クロウリーの能力世界(ザ・ワールド)を教えてもらってね、それについて色々と調べていたのさ」


 すると蓮は立ち上がり、ドアの開いた部屋(天羽たちの部屋でいう寝室)に行き黒いファイルを取ってきた。

 中から端が破けた跡が残っているコピー紙を三枚取り出して天羽たちに見せると、その紙には見たことのない文字と人や動物のような絵が書かれていた。


「これはフレジクトの暗号と言って、フィルツ・アレクサ・フレジクトという男がこの世に存在するあらゆる能力を解明しこの世に残した禁書の一部だ」

「禁書、ですか?」

「そういえば、教会にも似たようなものがあったような……」

「……そうか、君たちはイヴリシアの教会から来たんだね。イヴリシアの教会にあった書物は我が学園が保管しているよ。これは違うけれどね」

「え、そうなんですか?」

「うん。フェルンさんを助けたのはうちの学園長、ヴァルナ・レイシスだからね」

「教会と学園にそんな関係があったなんて、俺知りませんでした」


 教会と学園の関係が分かったところで蓮は咳ばらいをし話を戻す。


「元々フレジクトは能力が無い時代に使われていたとされている古代魔法の研究をしていたが、ある日難病にかかってしまい寝たきりになってしまった。寿命もあとわずかと言われていたその時、完全解明(パーフェクション)という能力が覚醒した。完全解明(パーフェクション)は自分が知りたい事を何でも理解できる能力で、彼はその力を使って古代魔法や能力の事を理解しそれを世に残そうとしたが、彼は次の年を迎える前に病死してしまった」

「その間に書き残した本が……?」

「そう、この禁書だ。しかし、フレジクトは残り少ない時間で書き残すために、一画か二画で書ける文字を使用した暗号を使い禁書を書き上げた。その後、禁書はフレジクトの後輩学者に渡された……が、その者は禁書を解読できずに発狂し破り捨ててしまったんだ」

「破れた跡はそういう事ですか」

「このページは学園にある図書館の地下室から取ってきたもので、もちろんこれは本物ではない。俺の知り合いに物を複製できる能力の持ち主がいて、そいつに協力してもらってページの複製をした」


 蓮はもう一度咳ばらいをして、


「すまない、話を戻そう。結論から言うと、この禁書のページには世界(ザ・ワールド)は二十二のアルカナ全てが揃った時に現れると書いてあるんだ」

「アルカナが全て揃った時……?」

「それって、どういうことですか?」


 天羽たちにはその言葉の意味が理解できなかった。

 蓮は天羽の胸に指を指して、


「つまりだ、麗城君は今、審判(ジャッジメント)の力を託されて(・・・・)自分の力としている。それなら、ダグラス・クロウリーが持つ能力は一体何なのか……という事だよ」

「……そういうことか!」

「何かわかったんですか?」

「ああ、もしも蓮さんが言っている禁書の内容が本当なら……」


 蓮は天羽の言葉に頷きで返し、


「この学園にも一人だけアルカナの力、(ストレングス)の能力を持つ者がいるが、それだけではこれを結論付けできかった。しかし、麗城君が幽霊の子から審判(ジャッジメント)の能力を託されたという事実で、俺の考えもようやく確信出来た」

「二十二のアルカナが全て揃った時、それは」

「全てのアルカナの力を一つに集めた時」

「それなら……」

「ダグラス・クロウリーの世界(ザ・ワールド)の力は……」

「「使えない可能性が高い!」」


 天羽と蓮の声が重なりお互いに笑い合い、フェルンも時差で内容を理解しなるほどと納得していた。

 その時、俺の中から声が聞こえる。


『つかえ、る……よ……』

「「……ッ!」」


 突如聞こえたロイゼの声に、天羽と蓮は驚きを隠せなかった。

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