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普通の学園生活って何ですか?  作者: 有木千夏
第一章 『揺らぐ気持ち』
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初めての朝

「あ……さ……」


 どこからだろう、すごく遠い場所から声が聞こえてくる。


「あま……ん……」


 声が近くなった、誰の声なんだろう。


 近づく声に天羽は気にせず意識を飛ばそうとする。


「天羽さん!」

「んえぁ……?」


 あまりの声量に目を覚ますと、涙目のフェルンが天羽を横からのぞき込んでいた。


「起きるの遅いですよ! 何回も呼び掛けたんですから!」

「そんなに俺寝ていたのか?」


 ベッドの後ろにある時計を確認すると既に七時を過ぎていた。

 いつもなら起きていないといけない時間だが今日は日曜日だ。

 休日とは欲望のままに寝ていられる素晴らしい日のことである。

 天羽は再び布団をかぶり二度寝すると、フェルンは俺の体を激しく揺らしながら無理やり起こそうとしてくる。


「おーきーてーくーだーさーいー! 今日は新入生たちの集まりがあるんですよー!」

「え、そうなの? って、わかったわかった! 起きるから揺らさない、でぇ……うっぷ……」

「あ、ごめんなさい! 大丈夫ですか!?」


 激しく体を揺らされたせいで少し気持ち悪くなったが、ゆっくりと起き上がり心配しているフェルンに質問する。


「……で、新入生の集まりってのは何のことだ?」

「あ、はい。新入生は、今日の朝九時から校舎の三階会議室で懇親会(こんしんかい)があります。ですから急いでください! 朝ごはんを食べる時間と着替える時間で遅れてしまいますよ!」


 そう言ってフェルンは天羽の腕を引っ張り洗面台に連れて行かされ、歯を磨いている間にフェルンは朝ごはんの準備をする。

 歯を磨きうがいをして口の中の泡を落とすと何か焦げ臭いにおいがする。

 気になりリビングへ向かうと、そこには半泣きしているフェルンがいた。

 見るとフライパンに黒く焦げた謎の塊がくっついている。目玉焼きを作ろうとして失敗したというお約束のパターンだ。

 天羽はフェルンの頭を撫でながら場所を変わる。


「あとは俺に任せろ、フェルンは飲み物とか(はし)をテーブルに置いてくれ」

「はい、わかりました……ごめんなさい」

「こんなことであやまんなくていいから、な?」


 笑って許し、半泣きのフェルンにも笑顔が戻る。

 が、フェルンが一生懸命作った焦げ焼きは捨てざるを得ない。

 フェルンから見えないようにさっとゴミ箱へ捨てると、パンを二枚冷蔵庫の隣にあるトースターで焼いている間に、半熟の目玉焼きとおまけにベーコンを二枚焦げ目がつかない程度に焼いて皿にのせる。

 テーブルに持って行くと麦茶の入ったコップと箸と醤油と塩が置かれていた。


「「いただきます」」


 十分くらいで食べ終わり、フェルンが皿を洗っている間にテーブルを拭き、その後寝室に行ってクローゼットを開けハンガーラックに掛かっていたこの学園の制服に着替える。

 下は黒一色のズボンで、上は黒地に白が強調された変わったブレザーだ。

 淵には青いラインが入っていて元居た中学校の制服とは全然違う。

 寝室のドアをノックする音に反応して開けると、フェルンが中に入ってきて同じくクローゼットの中にある制服を取り出し着替え始めた。

 天羽は見ないように寝室を出ていきドアを閉めると、リビングに置いておいた書類を漁る。

 そこには確かに懇親会開催の旨が書いてある紙があった。

 内容は学園の説明とその名の通り懇親会。


 凛堂の所にも別生徒がいるはずだから、その人と顔を合わせるって事なのか?

 いや、この敷地の広さから考えるにもっと多くの新入生がいるかもしれない。


 考えていると制服姿のフェルンが寝室から出てきた。


「お待たせしました」

「……」

「……どうかしましたか?」

「いや、何でもない」


 ブレザーはボタンの位置以外同じだが、スカートは黒地の裏に白のフリルが付いていて、淵に青いラインが入った前面が無いスカートを二重に着ている。

 はっきり言って可愛い。

 小さな研究者みたいな見た目でちょっとドジをしそうだ。


「天羽さん、これを」

「おう、ありがとう……って重たっ!」


 くだらないことを考えていると、フェルンは黒いスクールバックを渡してくる。

 妙に重く中身を見ると、授業で使用するのだろう新品の教科書やノート類と文房具が入っていた。

 流石に懇親会で教科書はいらないだろうと、天羽は教科書をクローゼットの中に置きに行く。

 寝室を出るとフェルンは火の元を確認していて、先に玄関で靴を履いて待っていることにした。


「お待たせしました。天羽さん、カードキー忘れていましたよ」

「あ、いっけね。悪いな」

「いえ」


 カードキーを渡すと、フェルンも靴を履いて一緒に部屋を出る。

 部屋の扉もエントランスにある扉同様オートロックになっており、ドアが閉まるとガチャンという音を立てロックされた。

 学園に向かって歩くこと数分、並木通りを通っていると制服を着ている一人の男子生徒とすれ違う。

 見ると、天羽たちが着ている制服には淵に青いラインが入っていたが、その生徒の制服には赤いラインが入っていた。


 見た目からするに先輩だろう、この学園は学年で制服のラインが変わるのか?


 それからさらに数分、ようやく校舎の前に着いた。

 中に入ると『懇親会会場は三階です』と書かれたスタンド看板がやたらと長いエスカレーターの前に置いてあった。


「これ三階まで一気に行けるエスカレーターか、ずいぶん高いな」

「行きましょう天羽さん」

「そうだな。他の奴らはもう集まっているかもしれないし、早くした方が良い」

「……そうですね」


 その時、何故かフェルンは一瞬だけ暗い顔をした。

 少し気にはなったが今は聞くべきじゃないと思ったので、懇親会が行われる会議室に向かう。

 数分後、会場の会議室に着き大きな扉を開けると、中には麻耶を始め知らない女性三名が(けい)型に並んだテーブルに座っていた。

 ホワイトボード側にテーブルは無く、椅子が置かれているだけだった。

 天羽たちは空いているホワイトボード正面の椅子に腰かけると、タイミング良く後ろからレイシスが入ってきた。


「皆、集まっているね」

「皆……という事は、俺以外全員女子かよ」

「これから一緒に過ごすんだ、仲良くしてくれよ?」

「……わかりました」


 レイシスがホワイトボードの前に行くと、一回咳ばらいをして懇親会を始めた。


「これより、A組の懇親会を始める」

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