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令嬢は兄弟を拾った  作者: ***
兄弟を拾ってから初めの一年
1/2

令嬢は兄弟を拾った

見てくださってありがとうございます。

なんだか色々拙い文章ではありますが、新連載始まります!


他作品共々、本作品もよろしくお願いします。

 いつも呻き声などが所々で聞こえるスラム街を凛とした少女、いや幼女がテクテクと散策している。


「ここはまだ領の援助を与えていませんでしたわね、護衛…今すぐにリストに書き上げなさい」


 まだ七歳ほどの幼女が、流暢に護衛に指示を出していく。その光景は見知らぬ者が見たらあまりにも驚き、悪い意味で聡い者ならば、誘拐などと企てるだろう。


 ここにも密かに思いついた者達がいた。まだ若いながら、頭が切れており、ここらの場所のボスである少年二人。


 ドスッ!


 少年達が不意打ちを仕掛けて護衛がまた一人、一人と倒れていく。


「一体なんなの…ッ?!」


 実は幼女は前世の記憶が残ってしまった稀有な存在。しかし前世は全く違う世界、すなわち異世界へと転生してしまったのだ。

 なので彼女は通常の人間よりも苦難はするも、早くに理性的になり、かつ聡くなった。それは今世での彼女の行いが身について出来たものである。


 彼女の今世の身分は伯爵令嬢であった。碧く澄んだ髪はさらりとしていて、まるで吸い込まれそうになる広大な海。顔立ちは瞳の大きな深緑色の目が気品さを出して彼女を淑女に仕上げる。そして性格からの可憐さが彼女を思わず守りたくなる美しさがあった。

 それは彼女が自ら望んで選んだ、『平凡で幸せな人生』。神々はこの身分ならば多少は不自由な生活をしないだろう、と思った。

 彼女の前世は酷く蔑まれた人生だったために、今世ではもう充分に満喫していたのだ。これが自分の人生、もう一度後悔の残らない人生が歩んでいけるのかもしれないとも思えてきた程。


 今世の両親へと感謝する為に、領民のために。

 その意思を叶えるための状況作りを今現在していたのだ。


 さて話は戻る。


「なぁ、仲間に入れてやる。来ないか?お前が居ればこの生活も終わるかもしれないんだ!」


 茶色い髪の少年と淡い金色の髪の少年が屈んで幼女を誘い込む。


「小さいが、頭は冴えているよね?僕たちに従うなら歓迎するよ。お嬢さん」


「遠慮しますわ。貴方達…家に来ません?護衛を倒せる程のその力、逆にこちらから喜んで歓迎致します」


「は?「え?」」


 唖然とする少年達を気にせずに、幼女は更に語り出す。


「我が家の領地は、まだ整っていない所ばかりで、田舎貴族で す が!これからは領民一人一人に教育を受ける権利や!医療費などをこちらが負担することも見据えていますわ!!…ゴホン。と、とにかくですわね、ここを、いや領地の改革をする為には人助けも欲しいのですわ。どうですか?」


「どうですか…って言えば、どうだ?」


 茶色い髪の少年は困った様に淡い金色の髪の少年に訊ねる。


「僕たちをある程度の教育を受けさせて貰えるのなら…いいと思う。自分の力を、伸ばしてもみたい」


 熱がこもった言葉が少年を後押しした。


 そして幼女は自分の力を見出そうとしたい少年二人をジッと待つ。


「…お嬢ちゃん。俺たちは兄弟で、生まれた時からここで生き延びてきた。ここを離れるのはいいんだが、お嬢ちゃんの屋敷で、ある程度の教育は受けれるのか?」


 少年二人はお互いを信じて生きてきた。そして、自分の力を伸ばしていけるならば、何も文句などはないのだ。


 キョトンとしてから幼女はニッコリと笑う。


「えぇ、受けれますわ!」


「ん、わかった。確か階級が下から名乗るんだよな?俺の名はヴェンだ。弟共々これからよろしくお願いする」


 茶色い髪の少年…改めヴェンは、元気活発な性格の様だ。茶色い髪に真っ赤な瞳。どこか情熱的な顔はとても整っている。表情は幼女を品定めしているようで楽しそうだ。


 ヴェンが軽く会釈する。続けて淡い金色の髪の少年も名乗った。


「僕はヴィース。もう一度言うけど、僕達は兄弟で僕が弟、こいつが兄だよ。あ、あー……護衛さん達の事はごめんね?こうでもしなきゃお嬢さんと喋れないと思ってねー…」


 二人共すまなそうに倒れた護衛達の方を向いた。


 こちらも改め、ヴィースは兄のヴェンと違って落ち着いた性格のようだ。髪は淡い金色で、こちらは蒼い瞳をしている。顔はやはり兄弟で、ヴェンを優しげな顔にすればヴィースの顔になるほどに似ている。


 髪色などが違わなければ、区別がつきにくい兄弟だろう。


「それで」 「お嬢さんの名前は言える?」


「いいえ、あの護衛達は気にせずともいいですわ。詳しくはまだ教えれませんけども…私の名は、ハーシィミン・ ナバードですわ。ナバード伯爵家の長女ですの。これからよろしくお願いしますわ!!」


「あぁ!」 「よろしくね」


 ハーシィミンが差し出した両手を、ヴェンとヴィースの二人が握り返す。

 それは将来の三人にとって、とても素晴らしい出会いだったという。


 ハーシィミンが手をパチンと叩くと、意識を失っていたはずの護衛達がゆっくりと起き上がった。


「この子達は皆、魔法ですのよ。ふふっ驚きました?」


 起き上がった護衛達を見て、二人は感心した声を出した。


「おう!こりゃあ…魔法はすごいな」


「だからハーシィミンは気にしないでって言ったんだね?」


「えぇ、正解ですわ!さぁ、早く馬車へ行きましょう!」




 ***


 護衛達に案内をさせながら、三人はお互いのことを話した。


「私の年齢は七つですの。だからもうすぐ社交界にデビューなのですわ…」


「社交界、てことはパーティなんでしょ?なんでそんなに残念そうなの?」


「確かに、パーティは美味いもんが沢山出るのに」


 二人とも不思議がる。ハーシィミンは頰をむくりと膨らませて応えた。


「そういうことではありませんのよッ!

 確かに情報集めは出来ますので嬉しい部分もありますわ!けれど、領地の研究が疎かになりますわ…」


「あ、なるほどね」 「ははっ頼もしいな!」


 どこか納得するようにしているのはヴィース。

 ヴェンはニカッと笑っている。


「僕は五歳上の十二歳。兄は僕と一つ違いだよ」


「へぇー私より随分とお兄さんなのですわね!」


「そうだーお兄さんだぞーあいたっ」


 ヴェンの肩をヴィースがポカッと叩く。

 まったく兄さんは、という感じのジト目でヴェンを見ていた。


 しばらくして、二人はハーシィミンに歩調を合わせていたのだが、ふぅ、と汗をハーシィミンが拭うと、ヴェンが気づいた。


「お、おい。ハーシィミン、大丈夫か?」


「長いのでハーシィでいいですわ…いえ、久しぶりにこんなに歩いたもので、少し疲れてしまいました、あはは…」


「じゃあハーシィ。負ぶってあげようか?どうする?」


 ヴィースも心配する。自分より小さい子が苦しむ姿はとても痛ましいからだ。思わず一瞬だけ目尻が下がる。


 けれどハーシィミンだって居た堪れない。いくら軽装とはいえ、ワンピースはかなりの布量だ。

 しかもそこに自分の体重が加わるから、堪ったもんじゃない。


(いくら歳が離れていたって、恥ずかしいですってー!!)


 ふるふると首を振っても兄弟二人は逆に心配していく。


「大丈夫ですわあぁぁ?!」


 よいしょっとヴェンがハーシィミンを半ば強引に背負う。


「いやー?!離してくださいまして?!」


「暴れ馬だなー!安心しろ!絶対落とさないからな」


「兄さん…あくまでも馬じゃなくて、この子は伯爵だからね…」


(そういうことではありませんのよー?!)


 馬車に着くまでの間、ハーシィミンの内心は凄く色々な意味で慌ただしかったという。




ここまで読んでくださってありがとうございます!


楽しんで頂けれたらとても嬉しいです。

よければ感想もお願いします。


更新は不定期更新となっております。

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