1
目を開けるともう朝だった。少しばかり空気がうすい。
――まだ寝ていたいな。
布団の中はぬくぬくとしていた。その毛布に頭をすっぽりと埋めてしまい、二度寝したい気持ちに襲われる。
――これ以上いつまでそうしているつもりだ? もうとっくに起きなきゃならない時分だろう。
「うう……ねむいなあ」
怠けそうになる自分自身を叱咤してのそのそと誘惑のぬくもりから脱したものの、ぶつぶつと声を漏らす。けだるげに欠伸をしたのは可愛らしい、少年。あどけない顔立ちの小柄な男の子だ。とろんとした目の上瞼をこすりこすり、それ以外は何をするということもなく、シーツを波立たせて座りこんでいた。
「服、着なきゃ」
朦朧とする頭でするべきことを思い出し、もぞもぞ替えの服を着る。その動作に随分と時間がかかった。
ゆっくりシャツに袖を通してゆく。ほっそりとした腕である。流れるように華麗な、緩慢さをもって前身ごろのボタンをはめて、下もはき、髪を梳かそうと櫛を手にする。
髪は見事な金色で細やかな毛先をしており、その髪に触れたなら分かるであろう、ふんわり柔らかな質感をもっていた。
睫は長く、淡雪の肌で、頬は薔薇色に光り輝いていた。それから紅くつやつやした唇がちょこんとあった。
そして、何物にも喩えられぬ美しい緑の瞳をしていた。彼はその目に翳りを滲ませて、
「母さまはまだ眠っているのかな……すごく静かだ」
と呟いた。まだ声変わりの終えていないその声はやや高めではあるものの澄んだ音となって室内に満ち満ちていた。
少年の部屋の隣に両親の寝室があった。
「ちょっとのぞいてこようっと」
少年は冷たい扉の取っ手をつかみ、引っぱった。