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「おーい、ニコル。準備できたー?」
「もうちょっとだから待っ……うわっこれも捨てたい」
「程々にしてよー。店長が『後始末は俺に任せろ』ってカッコつけて言ってたし適当で大丈夫だよ、ねえ」
バタバタと忙しなく部屋中を駆け回る掃除大好き少女――もとい、掃除大好き少年ニコルの支度の遅さには呆れる。
長かった夏が終わり、季節で言うとあとは秋と冬を残すのみ。
「もう夏は結構よー暑いのだるい……わっ埃すご」
繋がれた馬が待ちくたびれたようにヒヒ~ンと啼いた。さっさと出発したいらしく足を踏み鳴らしている。
「すみません、連れがなかなか出てきてくれなくって」
「いーえいえ、ゆっくりで良いんですよ。私も丁度休みたくてね。何せ歳が歳なもんですから」
額から流れる汗を頻りに拭う御者とアランが会話していても一向に現れないニコル。
「……本当に、申し訳ないです」
(あいつ後で言ってやらないとな)
「何だか、親のようですね、まだお若いのにご苦労様です」
「え。は、はあ……そうみえますか」
「私にも若い時があったんですけどねえ、身体もガタがきててもう……」
この御者は良い人だけどこれから長話に付き合うことになると悟りアランは『早く助けてニコル』と心の中で相方を呼び続けた。
頭の真上に太陽が昇る頃、ようやっとニコルが身支度を終えて暢気にやって来た為、アランは強制的に御者へ長時間待たせたことを謝罪させた。子どもは不服そうにむくれた。
「なんでさ。使ったんだから部屋は綺麗にしないと礼儀的に良くないじゃんかぁ」
馬車が走り始めた後も暫くは険悪な空気を漂わせ、結果御者に要らない気を遣わせた。仲直りしたのは丸一日経ってからのこと。




