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わたしはペリリュート家の人形だった――――…………。
オルリアン王が治めし国の中には幾つかの町や村がてんてんとある。そのうち最も北方に位置する地帯は、代々ペリリュート家の当主が管理し、支配下に置いてきていた。
その現当主という者はその名を、カーティといった。わたしの養父である。齢四十五の養父は民衆に対しては我関せず、自分より高位、もしくは同等と思われる人間とのみ気安い男だった。
拾われ子のわたしは当然彼の脅威ではないし、か弱いものへの庇護欲をかきたてられたわけでもないのだろう。全て彼の妻のしたいようにさせただけだ。
養母は元より病弱で外出なんぞは数えるほどしかなかった。それが奇しくもぴんぴんであったときがいっぺんだけあって、社交の場に夫婦そろって向かったことがあった。その途中、普段は通りもしない森の中央でちいさないのちがうずくまっているのを妻のほうが見つけた。まだ五つくらいの頃だからわたしは憶えていないのだが。
とにかくそのときわたしは貴族の一員になった。良い家柄の人というのは厳しい制約なんかがあってとても息苦しいものだ。そこには、限られた自由しかない――いやしかし、それが乞食だろうと王族だろうとわたしたちに隔てない自由など存在しようか?
不満はないわけでもなかったが、軽くいえる地位にあるわけでもなし。
どうでもいい。それが”普通”というのだからそういうことなのだとのみ込むより他はない。なるべく行儀よく。目立とうとしないでいる、たったそれだけのこと。
この国の貴族率は類を見ないほどだ。彼らは皆、社交の催しが大好きだし、国のほの暗い部分には目もくれる暇がない。今でこそ各地にとどまる彼らは、かつては同じところに属していた。皆等しくといわずとも過去の血を受け継いできているのだ。同族意識が彼らの身の内にはあった。
くだらない。