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怪物の弱点

133ヘアピンまでに後ろまで迫ったG4。しかし、ここで一度離されることになった。


「いくぜぇ!!」

叫ぶ豪。さっきの冷静さは消え、熱い男へと変わる。

そしてGT-Rも、リミッターを解除したことにより一気にパワーアップ。

リミッター解除中はなんと650馬力。R35すら超えるパワーだ。

「離される...!」

一気に突き放されるG4。GT-Rは恐ろしいほどの加速力だ。2~300m程のストレートではあるが、瞬く間に離れていく。

ストレートエンドのブレーキング。重量が軽いG4が詰めるものの、ペースダウンしクーリングを行ったGT-Rも強力なブレンボ製ブレーキの制動力と高度なABSで対抗。

思うように差を詰める事が出来ない。

129コーナーをパス。そして再びストレート。先ほどより差が開く。

「凄い加速...でもそんな事したら...」


「すげぇ爆音だな。兄貴」

「おそらく、600馬力はあるな」

熊の平パーキングで待機している工藤兄弟。

「兄貴。GT-Rの弱点って何なんだ?」

隆人が聞くと、しばらく黙ってから博人がいった。

「重たいボディと、ABSだ。」

「ABS?」

「GT-RのABSの性能は非常に良い。だがそこに盲点があるんだ」

「ABSに...?」

「性能が良いと言うことはいつでもハイレベルなブレーキングが出来ると言うことだろう?」

「あぁ」

「しかし、あの重たいGT-Rでそんな事をしていると...」

「そうか...!タイヤとブレーキがたれる!」

「そう。ブレーキング中に細かいステアリング操作が必要な碓氷では尚更たれやすい。そして、それが後半に大きく影響するんだ。」


138コーナーを抜ける2台。

「ここで少しでも近づかなきゃ...」

流石の葵もあれほどの加速を見せつけられるとかなり真剣。

コーナーで詰めようと試みる。

連続高速コーナーセクションの138~121コーナー。

パワーとブレーキを限界まで使うGT-R。

しかし、そのせいでかなりブレーキとタイヤがたれてきていた。

2台はその後のストレート、高速コーナーをクリアし、差が詰まらないまま110コーナーまで来た。

「ここからはコーナーセクション。LOブーストだ」

冷静さを取り戻した豪。しかしすぐにGT-Rの異変に気づく。

「ブレーキとタイヤがまずい...ちとやりすぎちまったか」

「ここからが勝負...いくよG4!」


「GT-Rのペースが一気に落ちた!でもG4はペースアップしてるぞ!」

報告が入る。

「まじかよ...重いGT-Rの弱点がこれからさらに出てくるぜ」

「やばいよなあ」

マッドスピードメンバーに焦りが出てくる。

「すげぇよ...100馬力のG4がGT-Rに食いつくなんて...それだけでも奇跡だぜ」

「そうっすよ!勝ったらあいつやばいっすよ!」

報告を聞きテンションが上がる一樹と輝之。

「俺らのあこがれだぜほんとに」

「そうっすね!」

「スーパーコメットに入ってくれないかなぁ」

「えっ...」

「ん?どうした一樹?」

「い...いやなんでもないっすよ!」

「そうか」


連続S字の102~99コーナー。

先ほどまで4秒程あったマージンはどんどん無くなっていく。

「ぐぉぉ...ブレーキは効かねぇし挙動はどアンダー...きついぜこりゃぁ」

「いける...ね。仕掛けるポイントは熊の平パーキングの82コーナー...」

ペースを上げるG4。95~93コーナーのヘアピンを綺麗にクリア。

これだけドリフトをしてペースをあげても、タイヤもブレーキも全くたれていない。

その後の88、87コーナーを流しっぱなしの超高速ゼロカウンターで一気にGT-Rに張り付く。

「何だぁ今の!!とんでもねぇ突っ込みすぎなくらいの勢いだったぞ!」

「しかも88から87まで流しっぱだし!」

「なんでグリップよりドリフトの方が速いんだよ!!」

驚くギャラリー達。

「(88コーナーは突っ込み重視のドリフトで入り、そのまま87コーナーまで流した方がグリップより遙かに速い。だがそれを知っている奴はほんのわずか。しかも相当なテクニックが必要だ...それを平然とやってのけるなんて...なんてやつだ...!)」

トランシーバー越しにギャラリーの声を聞いていた博人でさえ驚いていた。

「ドリフトなんざギャラリーを湧かすだけで遅いと思っていたが今のは明らかにグリップより速い...!どうなっているんだ!」

葵のドリフトに焦る豪。

85コーナーの立ち上がりで離すものの、83コーナーへのブレーキングでG4はアウトに並ぶ。

「なにっ!?アウトからだと!?馬鹿野郎!アンダーで俺が膨らんだらお前けがじゃすまねぇぞ!」

そのまま横並びで突っ込む2台。GT-Rがアンダーでアウトに膨らむ。

「G4が危ねぇ!!」

「もうだめだっ!」

ギャラリー達が叫ぶ。しかし、葵はあくまで冷静。

軽くブレーキを煽り減速、ラインをクロスさせたところで道路脇にある段差の内側に右フロントタイヤを引っかけた。

「!!?」

ギャラリーも、豪も、工藤兄弟も。誰もがその光景に目を疑った。

なんと変形の「溝落とし」を繰り出した。段差とガードレールには2、30cmしか幅がない。

しかし、フェンダーやボディを一切ぶつけることなく、見事にやってのけた。

そして、アクセル全開。大歓声の中、わずかにテールスライドさせながらG4はものすごい速さで82コーナーを駆け抜けた。


「G4が...抜いたぞ!しかも直後に溝落としをしてすげぇ速さで抜けてった!」

その報告に誰もが唖然とする。

「GT-Rはもうだめだ!ブレーキもタイヤももう使いもんになってねぇ!」

「あ!GT-Rがリタイヤした!...G4の...勝ちだ!」


「...先輩」

「あぁ...」

「G4が勝ったぁ!」

歓喜に沸くスーパーコメット。泣いているメンバーすらいる。

「そんな...豪さんが負けた...」

「嘘だろ...」

「信じたくねぇよ」

マッドスピードメンバーは相当落ち込んでいるようだ。


「なぁ、お前」

バトルが終わり、マッドスピードメンバーが帰った後、めがね橋パーキングに止まったG4とGT-R。

「?」

「凄ぇなほんとに。負けたのにさわやかな気分だよ」

「あ...ありがとうございます...?」

「お前、恐ろしいくらいのテクニックだったが...レーサーか?」

「いえ...ただ親が整備工場やってて、自分は小さい頃からカートもやってましたし...でも何より車が好きなんです」

「そうか...誰にでも乗りこなせる車ではなさそうだが、その車は本当に良い車だ。大切にしろよ」

「はい!」

「夜中に長話も良くない。機会があったらまた会おう。よかったら榛名にも遊びに来いよ。じゃぁな」

そう言うと、豪はGT-Rに乗り、榛名へと帰っていった。


「怖いけどかっこいいひとだなぁ...勝負して良かったかも」

GT-Rを見送ると

「ごめんねG4。ちょっと無理させちゃった...帰ったら点検してあげるね。ありがとう」

いつものようにG4を撫でると、疲れたG4をいたわるように、ゆっくりと家へ帰った。

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