決着 そして
コーナーを立ち上がったとき、バックミラーにはG4の丸いヘッドライト...ではなく、エキシージのまぶしいLEDライトが輝いていた。
前を見ると小さなボディと丸いテールランプが前を走っている。
「抜かれ...た...?」
加速でアドバンテージを取り、半車身程前にでたハチロクが絶対有利の状況で抜かれた。
あまりの一瞬の出来事に頭がついていかない翠。
フルブレーキング直後、コーナーをドリフトで突っ込む2台。
やはりインにいるハチロクがジリジリと離す。
「いける...もうこの先はない...!私の勝ちだ...っ!」
しかし...
「!!?」
コーナー後半、ハチロクのボディがアウトに膨らんだ。
そのすきにG4が一気にアクセルを開ける。
「行っけぇ!!」
エンジン全開。レッドゾーンの8000回転まで一気にブン回す。マフラーから炎を吐き、甲高いエキゾーストがハチロクの左側から聞こえる。
焦った翠はアクセルコントロールミス。減速したハチロクの前をG4が走る。
「勝った...」
その瞬間、激しいドッグファイトは幕を閉じた。
ゴール直前の直線。
大勢のギャラリーに最初に姿を現したのはG4だった。
「G4が前だ!!」
その言葉に歓喜が巻き起こる。
後ろからハチロクのヘッドライトも追いかけるが、追いつくのは不可能。
そのまま一直線にゴール。葵が勝ったのだ。
「凄いよ葵さん...私とは桁が違う...」
「そんな事ないよ!私だって最後の最後でやっと前に出れたし...」
「でも、なんで最終コーナーの後半、あんなにラインがふくらんだろ...」
二人が考えていると、
「後半の方がRがきついからだよ」
と博人が言う。
「え?」
「後半の方がきついコーナーだから、前半のスピードのままだと後半オーバースピードになるんだ」
「そうだったのかぁ...でも葵さんあの時結構ゆっくり突っ込んだよね?」
「うん...なんか直感的にああなったの」
「えぇぇ...でもアウトから大きくラインとれたから問題なかったのね...」
「かもね...でも翠ちゃん速かったよ!私半分あきらめてたし...」
「そ...そうかな...」
「二人とも速いさ。榛名のコースレコードを更新したんだぞ?」
と博人がもう一言。
「えっ!?」
「それにあんなドッグファイトは久々にみた。凄かったよ、君たちの走り。」
「あ...ありがとうございます」
「近々俺とバトルしてくれないか?」
「私はいいですよ?翠ちゃんは?」
「私は...まだいいかな」
「分かった。予定が決まったら伝えに行く。じゃあな」
そう言うと、白のエキシージは去って行った。
「翠ちゃん!今日はありがとう!」
「いえいえ...私の方こそありがとうございました」
「また今度一緒に走ろうよ!」
「うん...!」
次の日。
「いやぁ!!昨日のバトルは凄かったッすね先輩!」
「あぁ!しびれたよほんとに」
「でもあの翠ちゃんとか言う人も凄かったっすね」
「あぁ。旧式のサスペンションであんなに行けるもんなんだな」
「凄いっすよね」
「お前凄いしか言ってねぇじゃん」
「だって凄いっすもん」
輝之と一樹が話をしていると、白いエキシージがガソリンスタンドに入ってきた。
降りてきた青年。イケメンた。
「とりあえず...ハイオク満タンで」
「ハイオク満ターン!」
一樹の大きな声がスタンドに響く。
「なぁ、君たち、スーパーコメットのメンバーだろ?」
青年が一樹に声をかける。
「えぇ。そうですけど?」
「青いG4乗りの明日川とか言う娘に、伝えてほしい事がある」
「はい?」
「明後日の夜11時。碓氷頂上で待つ。と言っておいてくれないかな」
「わ、わかりました」
「頼んだよ...おっと、名前をいってなかったね。俺は、碓氷ナイトエクセレントのリーダー。工藤 博人だ。」
そういうと、車に乗り込み、スタンドをあとにするエキシージ。
「せ...先輩」
「あぁ...これは...」
「挑戦状!!」
午後8時。葵の携帯が鳴る。
「もしもし?」
「明日川!!大変だぞ!ナイトエクセレントのスーパースターから挑戦状だぜ!?」
「え」
「う...受けるよな!!?」
「うん!勿論受けるとも!」
「おぉぉお!!流石我らが青い彗星!」
「...彗星って元々青じゃない?」
「...」
「挑戦状かー...あのエキシージ速かったもんなぁ」
「見たことあるんすか先輩」
「あぁ、凄いスピードでコーナーをクリアするんだよ」
「まぁ、元々ロータスはハンドリングで有名っすからね...しかもミッドシップ」
「葵ちゃんにとっては苦しい戦いになるかもな」
「そうっすね...あぁぁ、俺も明日川みたいに速くなりてぇよぉ」
「今夜一緒に走るか?」
「まじっすか!走ります走ります!」
午後10時。碓氷を走り出した二人。
このとき、一台の車が近づいていた。