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異端のLegitima   作者: 瑞希
《夜ノ流転》
82/100

《広報の役割》

「エミヤちゃん」

レジティーマハウスの土地から出ると、克己が待ち構えていた。

一瞬タイガかと思ったけど、影だけで違うのが解った。

もっとも、日が落ちてきたから影と言うよりは雰囲気…あ、オーラだね。

“視える目”の。


「………誰ですか」

志野さんが機嫌悪そうに克己のことを睨んだ。

多分、ストーカーだと思ったんだろう。

何度となく有ったし。


故に隆壱さんが私を庇う姿勢で克己の前に立ちはだかるのも仕方がない。

私の身に危険が及ぶことだって、それはもう両手じゃ数えきれないくらいはあった。

もちろん、指一本だって触れられたことはないけれど。


「今回は学校の友達です。

 平気ですよ」

と、隆壱さんと志野さんに微笑みかけた。

二人は少しの間を置いて、横にずれてくれた。


「今回“は”?」

目を細めて首をかしげる克己に、私は微笑んだ。

態々説明することでもない。


誤魔化す意味も込めて、私は速めに用件を聞くことにした。

「それで、どうしたの?」

克己は目を一層に細めたけど、私に答える気がないのが解ると元に戻った。


「どうしたって事もないよ。

 ただ、時間が少し惜しくなっただけ」

………どうやら克己は、私が3日しか滞在しないことを何処からか聞き出したらしい。

隠した覚えもないから…にしても情報が速すぎる。

克己はかなり顔が広い、情報通のようだ。


「…………あ。」

「ん?」

私は克己に向かって満面の笑みを浮かべた。


「志野さん、隆壱さん、今日は克己と帰ることにします。

 また時間があれば食事でも行きましょうね」

と、最後に志野さんに向かって悪戯っ子の笑みを浮かべた。

多分志野さんは、今日食事にでも誘ってくれるつもりだったんだろうけど、今日は無理になってしまった。


「……そうですか。」

志野さんはあからさまに(みんなは解らないらしいけど)残念そうな声をした。


「じゃあ、志野さんは俺と行くか?」

と、隆壱さんは自分を指差しながらニヤッとした。

「…結構です。」


そんな二人を横目に見ながら、私は自分の家でなく公園の方へ向かった。




「君さ、どういうつもり?」

公園まで着くと、克己は足を止めた。

私はもう少し奥に行きたかったけど、克己が居なくては意味がないので私も足を止めた。


「どういうつもりって?」

まあ、特段焦ることでもない。


「夕方…つか、殆ど夜の公園に来るとか……何考えてんのって。」

それは言えない。

言ってしまっては意味がない。


「何か話したいことがあるんだと思ったけど……?」

違うの?と私は首をかしげた。

理由はそれもある。

まあ、それだけならここである必要もないんだけど。


「警戒心があるんだかないんだが…

 君は女で、俺は男。

 力で勝てると思ってるの?」

愚問だな。と、私は心の中で笑った。

私が、能力も持たない克己一人にどうこうされるような非力な人間では…生命体ではないのだから。

…そんな非力な生命体であったなら、きっと…あの戦災は起こらなかった。

克己には知るよしもないけれど。

それに知らないからこそ、私に普通に接してくれてるんだから。


ザッ…


何故か一歩前へ出てきた克己に、腕を捕まれた。

「それとも遊ぶ気になった?」

…え?


顔が近づいてきた…?!


「エミヤ!!!」

聞きなれた声がして、私はサッと口を閉じた。

「タイガ…」


「…っ!!!!!!」

タイガが一気に恐ろしい顔になっていって、克己に殴りかかってきた!


「!……、そのまま!!!」

私は言いながら、克己を突き飛ばした。

克己がそこから居なくなったことで、克己に当たるはずだったタイガの拳は

私の思惑通りにその背後に居た悪魔へ炸裂した。

タイガは生身だけど、紋章に当たったために的確に浄化された。


「「なっ…」」

タイガも、克己も、同じくらい驚いてる様子だった。


「…わぁ!タイガ、助けてくれてありがとう!

 克己も危ないところだったね!」

私は、少し手はずは変わったけれど、予定通りに克己に向かってそう言った。


「…え?

 え、あ、ああ…」

克己は尻餅もついたまま、良いんだか悪いんだか解らないという顔をして居た。


「ほら、克己。

 まだ残党が居るかもしれないから、速く帰りなよ!」


「…え、え、えええ?」


困惑した様子だった克己も、しばらくすると本当に危ないことを理解してすぐに帰っていった。




「…………どういうことだ?」

残ったタイガは私に向かって訝しげな顔をした。


「克己は顔が広いみたいだからイメージアップを謀ろうと…」

レジティーマハウスに居た時点で、公園の方に悪魔オーラが見えていたのだ。

丁度良いので、悪魔に襲われそうになった市民を助けました~みたいなのをやろうと思ったんだけど…。


「あれは要るのか…!」

あれって言うのは、克己に恐らくキス?されそうになったことだと思う。

まさかあんなに手が速いとは思わなかった。

いや、多分本当に出すつもりはなかったはずだけど。

危うく歌で証言者を眠らせてしまうところだった。

タイガがあと少し遅かったら…アウトだった(克己が)


とにもかくにもタイガの質問に答えるなら

「絶対に要らなかった。」

友達って言ったのに、本当にもう。

どこに線を引いたら良いのか、本当に解らなくなってしまう。

克己はどう考えても私を異性として見てないのに…。

恋に恋でもしてるのかね!


「……………………」

タイガは何度か口をパクパクさせて下を向いた。


私はどうしようかと思ってタイガに手を伸ばそうと思ったけど、止めた。

多分、初めてタイガ以外のそういう人に触られた。

「…お前は、警戒心が無さすぎる。

 顔を近づけられる前に逃げろ。触らせるな。」

気持ち悪かった。

克己にキスされそうになって。

何がってこともないけど、そう思った。克己には悪いけどね。


あんまり、触られたくないな。

「…うん、ごめんね」

可笑しいな。

前は結構、みんな好きだったのに。

前の“エミヤ”は誰かを嫌ったりしなかったのに。


「…帰るぞ」

タイガはそう仏頂面で言いながらも、手を差し出してきた。


自然に顔がほころんで、私はタイガの手を握った。

「うん」

前は、誰かを好きになったりもしなかったの。














「計画通り」

キラーンと脳内で音が鳴った。


「案外やる気あるのね」

セイラが少し意外そうな顔で言った。


セイラの思ってる通り、私としては能力者だのなんだのは正直どっちでも良い。

ただ

『タイガって凄いな!』

『本当に護ってくれてたんだ…!』


タイガの評判まで能力者レジティーマの評判と一緒に落とされるのが嫌だっただけ。

本来の作戦からは少し脱線したけど、むしろタイガの評判が上がって良かった。

これもそれも。


「克己のお陰ね。」


「……あんまり言ってると、知らないわよ。

 貴方の愛しの彼が本気で怒るわ。」

…それは、本当に避けたい。


「でも、だからって………」

利用しまくった克己を蔑ろにするのも、ちょっとあれだ。

次がまるでなくなる。

克己ほどの情報通はこの学校では知らない。


「好きにしなさい。

 貴方が思ったことが、最善の未来だわ。」

そう微笑んだセイラの言う“最善”っていうのは、きっとみんなが思うような、誰にとっても一番良いこと。っていうのじゃなくて

私の人生にとって一番、後悔しないこと…なんだと思う。

どの未来を取ったって、取ろうとしたって、誰かはきっと不幸になる。

誰かはきっと幸せになれる。


だからこそ、自分が一番後悔しない道を…傷ついてでも進まなくちゃいけない。


「行ってくる」

私の幸せはタイガが笑うこと。

欲求は、欲望は、そこに私が居ることだけど…

居られないのなら、私が居なくても、笑えるような環境に居て欲しい。

その為には克己は必要な存在だ。











「…で、俺はまんまと利用されたってか?

 俺はお前の下僕じゃねぇぞ!!」

噂を広めてくれたのは、他でもない克己なのに…

でも、克己がそう感じたのなら、仕方がない。


「…友達でも下僕でも利用できるなら、それで良いの。」

百々のつまりはそういうことだ。

利用も出来ない友達なんて、それは必要ない。

何の利害も生まない関係は、無駄な時間しか生まない。


「なんのため…?!」


何のため?

「そんなの決まってるよ。

 大切な人を守るため。」

タイガも、仲間も、友達も、全部守るため。

そんなことが不可能なのは重々承知してる。

それでも、……それが、私の思ったことだから。

もうそれ以外に、望めることがない。

それだけでもあってくれたら、十分だから。


「俺はそのための道具だって言うのか!」


「道具…?

 道具………。

 まさか、そんなわけない。」


「…え…?」

克己を道具だなんて思ったことは、1度もない。

「言ったじゃない。友達って。」

克己が友達になろうと言ったのだ。


「そ…、そのトモダチつぅのを利用するんだろ?!」

「もちろん。当たり前じゃない?」


「どこがだよ!」

どこがって…………


「貴方だって、何か困ったことがあれば、私を利用すれば良いのよ」

むしろ、どこに間違った部分があるのか解らない。


「なっ…んなの………ん?!

 …………それただの助け合いじゃねぇか!!!!」


そうとも言うけれど、

「随分と軽い言葉を使うのね」

ランさんと言い、みんな案外そういう言葉を使う。


「はぁ?

 軽いって………全然軽かねぇだろ」

克己は呆れたような、戸惑ったような声をした。


私こそ困惑する。

「軽いわよ。

 助け合いなんて、片方がずっと助けてればただの言い訳。」

私はそんな情でやってもらってる訳じゃない。

私が勝手に考えて、勝手に利用しているのだ。

そこに克己の情は存在しない。

故に、何があっても克己は何も悪くない。


「お前バカだろ?」


…………


「あ、今お前怒ったろ?」


…そりゃ、唐突に悪口を言われたら

「私だって怒る…」


「ハッ…やっぱ、お前はバカだな。」

また悪口。


「…なんで」

克己にそんな風に言われる筋合いはないはずだ。

私は何も間違ったことは言ってない。


なのに克己は呆れた不利をしながら、勝ち誇った顔をした。

「そうやって、バランスが難しいから…

 だから軽くねぇんだろ。

 難しくて大変で、だから大切で重いことなんだろ?」

ああ、ドヤ顔ってこういう顔のことを言うんだなと思った。


……でもそうか、難しいか。

…確かに難しい。

…………大切なのか。

「それって…幸せも?」


「ったりめぇだ。

 もっと重ぇよ!!!!

 その責任も、難しさも、嬉しさとか喜びもな!」


「…………貴方、良いこと言うのね」

ランさんは、そういうことを言いたかったんだね…。

そっか。


「小学生だって解るぞ。

 バーカ!」

またまた悪口。


「解らなかった。」

それを解っていられたなら、何も失わなかったかもしれない。

御兄様も、………ナツカさんも、あの幸せだったはずの日々も。


「無駄に頭ばっかり動かすだろ。

 もっと、心を動かせ!」


克己の言葉に、私は眉を寄せた。

「………心は脳にあるものよ。」

無理をしようがどうしようが所詮はすべて脳の成分によるもの。

心とはそう言うものだ。


「そういうのは解かんねぇよ……

 ちげぇよ、もっと…こう、魂に刻まれた本能?!みてぇな!!」


非科学的とかそういうレベルですらない。

「………大雑把ね。

 それに、本能なんて本当にあるの?」

三大欲求とかならまだ理解ができる。

けれど、本能は…

少なくとも、今の人間に本能があるとは考えにくい。


「本能の定義がよく解かんねぇけど…

 最初っから潜在的に

 みんなが持ってるものは、あるんじゃねぇの?」

…………そんなもの、あるの?

にわかに信じがたい。


万が一あるのなら、それって。

「なに?」


克己は途端に眉を潜めた。

「な………なに…?

 あー…………んーー………………愛?」

かなりの時間悩んで出た答えがそれだった。


「…何真面目にバカなこと言ってるの?」


「おまっ…バカっつったな!」

さっきまで人のことバカバカ言ってたのは誰よ。


「バカだと思ったんだもの」

かなり本気で。


「なっ――――」


「でも。」

私の声によって克己は言いかけた口を止めた。


私は克己に微笑みかけた。

「そうね。

 愛とか勘とか信じるとか。

 そういう不確かなものを大切にしないと、人は人に……幸せにはなれないのかもしれないね。

 全てが解りきってしまったら、全てが完全になってしまったら、

 きっと私は世界に絶望する。」

それが、どれほど酷い世界なのか知ってる。

その世界の中でも、どうにか生きようとして居る人も知ってる。

その瞳に映す世界がどれだけ残酷であっても、その先に、それまでに、きっと幸せな日々があったはずだから。


「またそうやって考える…………」

克己に呆れたような視線を注がれてしまった。

バーネットさんにも、似たようなことを言われたなぁ…


私は克己に向かってニンマリと笑って見せた。

「つまり、バカな人が周りに居ると幸せで堪らない!」


「おぉ…?!

 …………ん?あぁぁ?!?!!

 誰がバカだ?!!」

突然叫んできた克己に、私は迷惑そうに目を細めて耳を手で閉じた。


「もう…急に叫ばないでよ。」

心臓に悪い上に不愉快だ。


「だっ…れのせいだよ!!」

「知らないわよ。」

少なくとも、私のせいではないわ。

終わりそうです…3代目の話が…。


エミヤの言う“完全な世界でどうにか生きようとしている人”。

伏線が長すぎて覚えていられないと思うので(重要なネタバレになるため名指しはできませんが)

それはエミヤ達や悪魔リビドー天使ラティオ、特に“名も無きもの”や“妖”と呼ばれる存在に、最も近い…

もしくは同一視される存在で、よく“終わりの神”とか“黙示録”とか、そんな呼ばれ方をされます。

モデルはアーカーシャ。

アーカーシャは、確か概念なので神様ではないですが、私は神道なので、

あ、この人めっちゃ強いじゃんマジパネェと思ったら全部神様って呼びます


神様マジパネェ

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