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異端のLegitima   作者: 瑞希
[王の器]
76/100

[絶対に言わないけどね]

そのあと、なにも解決しないままに

私は、ライブをすることになっていた。


災害の起きたチャリティーという建前で。


私はリミッターをキュッと握ってから髪につけると、

暗い舞台袖から見える眩しいステージを見上げた。


私の望む世界。


望む道。


生きたいと思える道。


一歩踏み出せば…、もうそこに。


さぁ、前奏が始まった。


「――夏の日ひまわりのような

   君の笑顔に救われた――」

私はステージの上で、力の限り歌い出した。

楽しくて、楽しくて、…堪らない!

キラキラキラキラ


熱い


私の想い、気持ち、その全力をぶつけたい。

ぶつけられる。

素直な思いを伝えられる。

熱情を

激情を

今しかない。

今しか伝えられない刹那的な 力強い思いを…!








『皆が知っての通り、ここでとんでもない戦災が降りかかりました』

歌う予定のほとんどが歌い終わって、私は話しを始めた。

すべてはこの為のライブだ。

そんなこと関係なしに歌っていたけれど。


『この中に居る何人かは、それに疑問を抱いていることでしょう。

 “その存在”を見た人も、居ることでしょう』

私の言葉に、会場はざわめいた。

志野さんや隆覇さんの言う通り、目撃してしまった人も大勢居るのだろう。

そもそもとして、避難所など作っている時点で………。


そのざわめきと共に、後ろのプロジェクターに映像が映し出された。

これは悪魔達の画像だ。


悪魔リビドー

 我々がそう呼んでいる“その存在”が、あの戦災の一因です。』

本来ここの台詞は、悪魔達によって起こされた。

だけど、私は嘘は吐きたくない。吐かない。

すべてが悪魔のせいじゃない。

…私のことも悪魔と呼ぶのなら、それでも正しいのだけど。


「火よ」

「氷よ」

「雷よ」

タイガ、カレンさん、マキリさんが後ろから現れ、その能力を観客へ見せつけた。

この三人は顔がバレても構わないらしい。


正直、タイガが出るのは反対だったんだけど…

『我々は、“その存在”に対抗しうる力を持った能力者レジティーマ

 今ここで、能力者達の存在を明かします』


『ここからは私から説明させていただきます』

私は更に後ろから現れた志野さんを見て、私達は舞台裏へ下がった。

今回のライブには多くのメディアが来ていて、軍の設立をアピールする。

正直、私には関係ない。というか興味ないのだけど。

たぶん私は広報部とかに回される。

もちろん広報だけじゃなくて、対悪魔に私の力も使われるだろうけど……。


ライトの光があんまりにも熱かったのか、タイガはペットボトルをおでこに当てていた。

それもタイガと居られる条件なら、私は構わない。

誰を巻き込もうと、誰を犠牲にしようと、

私は、私のしたいようにする。


私の望む道で生きてやる。




30分ほど経って、また私が歌うときが来た。

みんなは私の歌を聞きに来たのだ。

そこまで細かく説明することはない。

ただ、チャリティーしてくれた権利として、理由を一通り教えただけ。


私はたくさんの、たくさんの人への感謝の気持ちを込めて歌った。

それはチャリティーをしてくれた事への感謝ではなくて

私の歌を聞いてくれる事への。


この時の私の歌は場所を越え、時を越え、響き渡ることとなった。

まるで終わりの始まりを告げるように。






それからは、速いものでわずか三日で、整地され仮設住宅が作られたのだ。

能力者レジティーマの力も公に加えられたことで。


「もう、面影もないね。」

ただ残った避難所として使われたそれぞれの家や病院や学校だけが、どことなく、あの場所なのだと教えてくれる。

けれど………あまりに、違いすぎて………。


これも、すべて、すべてが私のせい。

私が招いたこと。

私が犯した罪。

それでも決めた。決めた。

今度こそタイガと一緒にここで暮らすって

決めたのよ。

けど、だけど…………生きてて…良いんだろうか。

ううん。考えるまでもない。

そんなの、駄目に決まってる。

でも、それでも私は、タイガと生きていくって決めたの。

…………でも。


私はただ病室から町を眺めた。

「エミヤ、私はエミヤが大好きだよ。

 それってエミヤが生きる意味の、一部にならないかな?」

ユキカさんは私の手を握ってそう言った。


「ユキカさん………」

ユキカさんは痛々しく、病室のベッドで未だ横たわっている。

みんな、目こそ覚ましたけれど。

ケイくんもまだ絶対安静で、リクホさんだってきっとまだ本調子じゃない。


「みんな、エミヤのことが大好きだよ。

 ナツカだって口には出さなかったけど、エミヤのこと大好きだった。」

だとしたら、…だからこそ、堪らなく苦しい。

私だってとても好きだったから。


「……………」

それをも私は殺した。


「例えばさ、子供を産んで、子供のために生きるとか」

「子供………?」

漠然と、いつかは産むんだと思ってたけど、そんなにちゃんと考えたことはなかった。

ユキカさんも、みんなも、子供を産んだりするのかな……?


………私も…………?

「そうそう!

 僕ね、子供生んだら、なつかとふゆかにしようと思うんだ。

 ずっと謎だったんだよね。

 何で夏と雪なんだろって!」

「た、たしかに…。」

言われるまで気づかなかったけど、確かにどうしてなんだろう…。


「だから今度は、夏と冬にする

 あ、夏音と冬音でも良いかも。

 夏人と冬人?」

まだまだ出てきそうなユキカさんに、思わず笑ってしまった。


「色々ありますね。」

ユキカさんはちゃんと未来のことを考えてるんだな…。

後ろばっかり見て、後悔するんじゃなくて、…これから、どうすれば良いのかを。

どうしたいのかを…。


「エミヤは?」


「え?」

ユキカさんは微笑んだ。

「エミヤは、子供に何て付けたい?」


そんな、現実的なこと…考えたこともなかった………。

「そ、そうですね………」

私は少しの間、目を閉じて考えを巡らせた。


「……………こんなのどうでしょう…?」

悩んだ末に思い付いた名前を口に出してみると、ユキカさんは笑ってくれた。






僕ね?

エミヤ。

凄く、好きなんだ。お前のこと。

元々好きだったんだけど

何でかな、ナツカが死んでから

余計に好きになったよ。

というか、元の好きに違う好きが混じったって感じ。

このピアス着けるとね、余計に。

多分、ナツカはこんな気持ちだったんじゃないかなぁ。

だからね、言わないけど

タイガなんて、死ねばいいと思うの。

言わないけどね。

だって、タイガの事だって好きだし。

でも、死ねばいいと思うの。

邪魔だなぁって。

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