―第一次月下戦災・第二次血桜戦災 終戦―
周りを見てみると、とんでもない惨事になっていた。
道には色んなものが散乱し、傷ついてヒビが入っている。
家や建物にも引っ掻き傷があって崩れている家もいつかあった。
物が散乱したのはエミヤの風と考えるのが妥当だろうが…
建物に被害が出たのは、ほぼ間違いなく悪魔だろう。
…これを、どう処理するんだ。とハヤテは血の気が引く思いがした。
だが少女が自分の家だという、広い敷地だけは不思議なほどに綺麗な状態だった。
「出る前に結界を貼っておいたの」
不思議そうな顔をするハヤテに気付いてか、少女が微笑みながら言った。
ハヤテはますます解らなくなった、神夜の力が何なのか。
そもそも、人か?悪魔か?それとも、また別の何か…?
答えは出ぬまま少女の部屋にまでついてしまった。
中はシンプルというか、殺風景だった。必要最低限のもしかないという感じの部屋だ。
「…とにかく癒すわね。
ついでだから、貴方達も側に居て。」
神夜の言葉に、ハヤテとユウヤは顔を見合わせ、言う通りに負傷した3人の側についた。
神夜は再びさっきと同じように歌った。
たださっきとは違って舞わずに扇を握って、誰かを慈しむように丁寧に歌った。
するとハヤテやユウヤの傷は癒え、体力も回復していった。
みれば、タイガ達の傷も癒えていた。
「…まさか」
「おじょうさまーーーーーー!!!!!!!」
ユウヤが何かを言おうとすると、叫び声と共にドタバタと強い足音が聞こえた。
「あ、忘れてた…。
はーい、ここだよー!」
神夜はしまったという顔をして、廊下に向かって返事をした。
すると、勢いよく襖が開き、若いの女性が怖い顔で入ってきた。
「お嬢様!!!あれほど危ないことはしないでと!
私はもう心臓が止まってしまうかと思いましたよ!?
みんな心配していたんですから!
またあんなことになってしまったらと思うと…!
……?」
女性は一呼吸で一気にたくさんのことを話した。
切りがつくと、ハッとして俺たちを見た。
今気づいた。という感じだ。
…この人の肺活量は一体どうなっているのだ……。
「この方々は…?
あ!…お嬢様!危ないことはやめてください!」
女性は何かに気がついたようにハッと息を飲み。
神夜の肩をぶんぶん揺らして言った。
神夜は女性を見つめ返し、しっかりと首を降った。
「そういうわけには行かないわ。
まだ、あの子は見つけられてない…
この子の近くに居るとは思うけど……」
この子と言って見つめるの先にはエミヤが居た。
それは解る。が、あの子…?
「………怪我だけはしないでください!
皆のためにも!」
女性が言うと神夜はにっこり笑って頷いた。
皆…?
他にも協力者が居るということか…?
まさか結も…?!
ハヤテは途端に眉を潜めた。
「どういうことだ?
“また”とかあの子とか訳がわからん」
少女がこっちを向くと女性はパッと手を離し、少女の一歩後ろにさがった
「私は弥扇 神夜
こっちは冬堂 緋子さん」
少女…弥扇が女性の名前を言うと緋子はさっきとは打って変わって、丁寧にお辞儀をした。
侍女かメイドであろう蒼冬に、ハヤテはお辞儀してから口を開いた。
「単刀直入に言うが、お前は人間か?悪魔か?」
そんなに親しくはなかったが中高と同じだったんだ。
悪魔とは信じがたい…、が。
過去そういう事例もあった。
ハヤテの言葉に、神夜は目を細め、妖しげに微笑んだ。
「今は人間よ
でも、前世が悪魔だったの」
そういうことか、と言おうとしてハヤテは心の中で首を振った。
そもそも前世があるかなんて、信じられない。
けれど神夜がエミヤの力を無効化したり、傷を癒したのも、また事実だ。
あれを偶然だというのなら、奇跡にもほどがあるだろう。
「私も単刀直入に言わせてもらうわね?
二つの世界での戦争をやめて
むしろ、何故こんな事をして居るの?」
馬鹿なの?とでも続きそうなほど呆れ返った神夜の言葉に、ハヤテとユウヤは一瞬カッとなって、冷や汗をかいた。
神夜が恐ろしいか押していたからだ。
「これで何人死んだ?
何人傷付いた?
何人憎しみ、悲しんだ?
そして、どれほどの憎しみの連鎖を生んだ?」
ハヤテもユウヤも考え無しだったわけではない。
誰かのためを思い、最善を尽くしたつもりだった。
けれど神夜にはその行動を愚かしいとしか思えなかった。
何故、話し合わないのか?
何故、すぐに手を出すのか?
解って貰えないからと暴力に訴えるのは、本能剥き出しの獣か、愚かなる…愚者のする行為だ、と。
けれどそれも、机上の空論。
もっとも、神夜の場合はそれを行動に移せるからこそ言っているのだろうが。
「私の身の上話をするつもりはないけれど
信用して貰うためにも言うわ。
私はこの子の祖母よ。
ね~?」
と、神夜はエミヤを見てからユウヤに笑いかけた。
とうの笑い掛けられた本人は若干震えている。
「化けて出てきた…!」
いやいや、前世だって言ってただろ。とハヤテは心の中で突っ込んだ。
だが、ユウヤの反応は正しいものだろう。
死んだと思っていた相手が突然現れたのだから。
この場合は、神夜とユウヤの独特な関係によるものが大きいが。
「あらあら酷いじゃない。
ふふっ。それにしても、颯天くんが…」
心底幸せそうに笑った神夜に、ハヤテは純粋に首をかしげた。
神夜は更に頬を上げ、手で口を覆った。
「真綾の甥だったとは、ね。」
神夜の言葉に、ハヤテは戸惑って否定した。
「いや、でも、血は…」
神夜は少し驚いたように目を見開いて、また笑った。
「ふふっ。
血なんて関係ないわ。
それに血があっても、そこに愛がないと」
「あ、あい?」
とても前世が悪魔だとか、エミヤの力を一瞬で無効化したとは思えない人の発言だ。
「そうよ。
私は、血に興味はないから。」
そう言う神夜には冷めたような光が灯っていたが、それをハヤテが気付くことはなかった。
「でも、さすがに自分の子は
愛おしく思わずにはいられないわ。
ユーヤッ!」
突然抱きついてきた神夜に、ユウヤはハッと我に返った。
「っ…やめてください!」
ユウヤは顔を赤くして全力で拒否した。
「どうして………?」
心底悲しそうな顔をした神夜に、ユウヤは怯んだ。
そして、ハヤテはコロコロ表情が変わる人だなぁと思った。
「くっ…………
アンタは皇帝でしょうが…!」
「あら、もう違うでしょ!
今しかこんなことできないわ。
ね?」
寂しげに言っているのがハヤテにも解った。
前世では神夜の思う通りには行動できなかったらしい。
表情がコロコロ変わるのは、その反動で素直になったこともあるのだろう。
「…………そう、です…ね……。」
そう言うとユウヤは大人しく神夜の腕に収まった。
ハヤテはそういうところはまだちゃんと子供なのだなと安心した。
神夜は微笑んで、ゆったりとユウヤの頭を撫でた。
「ありがとう、優也。
ずっとずっと、大変だったよね。
ごめんね、何もしてあげられなくて。」
ユウヤは目を見開いてから、穏やかに目を閉じた。
「………………別に。
しょうがなかったでしょう。」
「優也は本当に優しい子に育ってくれたわね。」
神夜の言葉に、ユウヤは少し表情を固くした。
「…僕は夕闇です。」
離れようとするユウヤを離すまいと、神夜はがっつりホールドした。
「そんなことないわ。
貴方は優しい優しい子よ、優也。」
「…っ………」
ハッと目を見開き、そして泣きそうになるユウヤを、ハヤテは微笑ましく見つめた。
そんなハヤテに神夜はちょいちょいと一緒に抱かれるよう勧めたが、ハヤテは苦笑いをして首を振った。
神夜は悲しそうな顔をして、ハヤテをじっと見つめた。
ハヤテはいやいやいや。と全力で首を振った。
神夜は溜め息をついた。
諦めたようで、その後しばらくユウヤを抱き締めていた。
少し経って、ユウヤがそろそろ恥ずかしくなったらしく、自ら離れた。
神夜は名残惜しそうにしたが、諦めた。
「ああ、今気づいたのだけれど
優也にとっても颯天くんは甥なのね。」
ユウヤは少し赤い顔のままに頷いた。
「ええ。まあ。
吃驚するほど可愛くないですけど」
「…え?」
と自分で言ってから、ハヤテは少し間を開けて首をかしげた。
考えてみればエミヤの祖母と言ったのに、神夜はユウヤの事を自分の子と言っていた。
子孫と言う意味なら…と思ったが………。
「だって、真綾のお姉ちゃんなら
優也にとってもお姉ちゃんじゃない。」
そのお姉ちゃんとは、ハヤテの母である遙華のことだろう。
「あれ、ユウヤ、お前
エミヤの兄だって…」
「そんなことも言ったね。」
とユウヤは悪びれる様子もなく、元に戻っていた。
どうやら、さっき神夜が言った祖母とはエミヤだけに対するものだったらしい。
「あら、そんなこと言ってたの?
貴方今年でいくつよ」
「さあ、ざっと300才?」
桁が違う!とハヤテは心の中で叫んだ。
「もう三十路なのねぇ…………。」
と、神夜は頬に手を当てた。
にしたって、
「年増過ぎるだろ!!!」
「ふっ…見てくれに騙される方が悪い!」
「開き直るな!
つか、誰よりも年上じゃねぇか!」
「年下のような態度をとったつもりもない!」
「ごもっとも!!」
そう言えばユウヤは誰に対しても敬語を使ったことはなかった。
あれはそう言う意味だったのか…。
とハヤテは神夜に敬語を使っていたことで納得した。
「ふふっ…
それで、話は戻すけど…
貴方達の主将と話し合いをさせて。」
主将と言えば柊 志野だろう。とハヤテはすぐに思った。
枷さんもほぼそれに等しいが…、表向きの話し合いならば柊家だ。
3人でと言う手が一番だろう。
「あの子の為でもあるの。
魔界とこの世界は二つで一つ。
どちらかが欠けてもいけない」
ハヤテには神夜が嘘をついてるようにはとても見えなかった。
「…解った、何とかしてみる」
神夜はパッと顔をあげ、嬉しそうな顔をした。
「あ、あと、そちらの主将の名前教えて」
神夜が目配せをすると、緋子はメモ用紙を取り出した。
「柊―」
「ああ、やっぱり柊家ですか」
ハヤテは言い終わる前に緋子は思った通り。と、頷いてメモはとらず、お辞儀をして部屋から出ていってしまった。
「やっぱり?」
緋子が居なくなった後で、ハヤテは神夜に聞いた。
「ふふっ。調べちゃった☆」
怖い…とハヤテは心の中で思った。
緋子のようなものが居る時点で。というか、この敷地の広い場所に来た時点で気付くべきだった。
神夜は柊家や枷家と同等までの金持ちだ。
「…けれど
少し遅かったようね…」
神夜は悲しげな視線はエミヤだけでなく、サキアに注がれていた。
その視線に、この人はまともない人だとハヤテは確信した。
この時点より、もうハヤテは神夜の事を疑ってはいなかったが、建前すらも無くなった。
「…他にも仲のいい友達とかって知ってますか?」
神夜は少し怖い顔でハヤテに詰め寄った。神夜も向き直ってきた?ようだ
ハヤテは苦笑いしながらも答えた。
大学生組合同での事件で、ハヤテはエミヤと仲の良い3人の事を知っていた。
能力の事などは全面的に秘密なので、一方的ではあったが。
「沢山居るぞ?
特に…えーっと、アミとヒナとセイラ。だったか」
神夜はハヤテの言葉に、目を見開いたあと胸を撫で下ろし、嬉しそうに微笑んだ。
「そうですか………。良かった…。」
ユウヤも一瞬、複雑そうな顔をしたが、神夜の顔を見て思わず頬が緩んでいた。
「本当にありがとう。ハヤテくん。
お礼と言っては何だけど、私も人として出来る限り協力するわ。」
神夜に頭を下げて、ハヤテは連絡だけすると、ここに五人で泊まることになった。
第一次、第二次、共にこのあと何度か出てくる名前です。
第一次二次世界大戦みたいな感じかなぁと思ってもらえれば。
ちなみにこっちの世界の世界大戦では、世界が滅んでます。




