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異端のLegitima   作者: 瑞希
[王の器]
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[家族の幸せ]

「真綾様!!!!

 俺だ!!!タイガだ!!!!!

 あんたの子…いや、娘が大変なんだ!!!!!!」

タイガは涙を流して真綾らしき者に向かって縋るように手を伸ばした。


けれどその者はタイガを一切見ることはなく、ただジッとハヤテを見つめていた。

「ハ…ルカ……?」

ハヤテに、自分の姉を重ね合わせたのだろう。

だが何とか紡ぎ出された言葉も片言で、とても正気には見えなかった。


ハヤテは振り払われたタイガの手を再び掴んだ。

「タイガ!真綾さんはもう死んだんだ!

 正気に戻れ!!」

その言葉に、タイガはピタッと止まった。


「…いや?違う。違ったんだ…!

 だって今、目の前に居る!!!

 嗚呼…!嗚呼…!!!

 全てはこの為だったんだ…!!!!」

タイガは一層に涙を流して気が狂ったように歓喜している。


すると、その横からさっきの黒い玉が分裂して落ちてきた。

その黒い粒は、悪魔一つ一つに取り込まれていった。

いくつかの悪魔は転げ回った後に、そのまま消滅した。

だが、消えなかったのもは…


「タイガ!!!!」

そんなものには目もくれずにその場から離れようとしないタイガに、ハヤテは焦った。

腕をどれだけ引こうと、微動だにしないのだ。

ただ、もう片方の手を真綾に向かって伸ばしている。

涙を流し。


『―きっと世界が違っても

  貴方にだって見えるはずよ

  私には見えないかもね―』

スピーカーから聴こえていたエミヤの歌声が強まった気がした。

真綾の闇と

エミヤの声が互いに反発しあって、対抗しあっているのだ。

真綾の闇が強まれば、エミヤの声も強まり…

悪魔は強靭化と、弱体化を繰り返す。


真綾とエミヤは戦っている。

実の親子同士が。


「ぁ………」

ため息のように小さく呟いた。

そして伸ばしていた手を、だらんとぶら下げた。


「タイガくん!!!!」

ハッと振り返ると、そこにはいくつもの悪魔の姿があった。

だが、それはいつも相手にして居るものとはおおよそ違っていた。


「っ…は…ぁぁあ………」

タイガは震えた声で息を吐いて、袖で涙をぬぐった。


「―第一の術式タイガが命ずる

 炎よ紅蓮が如く!―」

タイガがそう命ずると真っ赤に燃え盛る炎を剣に纏い悪魔達捕らえ、燃やそうとした。

だが、数十匹かの悪魔に水を出され、殲滅には至らなかった。


魔法ルーン…って奴か」

考えてみれば、今までもそうだったのかもしれないが、ハヤテにとっては初めて聞くものだった。

魔法ルーンとは能力レジとはまた違った異能だ。


「…俺の場合、悪魔の方が近いですけど…

 …………泣いてたとか、誰にも言わないでくださいね。」

タイガは悪魔の方を向いたまま、ハヤテとサキアにボソリといった。


「…どうしようかな~?」

「えっ、ちょっ…!」

焦って振り向いたタイガに、サキアは微笑みかけた。


「平気よ。未来は決まっているから。」

瞬間、サキアは力を失った。


「サキア!!!」

寸前のところで、ハヤテが抱き止めた。

ハヤテが迅速に確認すると息はちゃんとして居るようだ。


だが、体の方が…

いつの間にか攻撃を受けていたのか、既にボロボロになっていた。


キーーーーーーーーン


響き渡る振動が、悪魔を含むタイガ達を貫いた。


それをエミヤの歌だと認識するのには、少し時間がかかった。

その振動が大きく震えたかと思うと一瞬で消えたからだ。


タイガはハッと顔を上げた。

「貴方は…」

気が付けばハヤテ達の背後に、空から降り立つエミヤの姿があったのだ。


タイガは、今度こそエミヤに駆け寄ろうとした

「エミヤ!」

エミヤはギュッと目を閉じて、誰のことも見なかった。

そして、再び目を開き、また真綾を見つめた。


「…………」

エミヤの手元から槍のような剣のような形をした鋭利な棒を現した。


棒を構え、真綾に向かって飛んでいくエミヤ。

「エミヤ!!!!!!」


ザシュッ!!!!


「タ……イガ…………?」

槍には………タイガまでも貫かれていた。


真綾と共に、自分によって貫かれたタイガを、エミヤは呆然と見つめた。

誰のか解らない血が、エミヤの手元にまで伝わった。


棒から手を離し、ゆっくり後ろに下がるとタイガもエミヤの方へ倒れた。

重い体重がのし掛かる。

力が入っていないのだ。

自分の手を見つめても、タイガを見つめても、


真っ赤。

赤い。

紅い。

緋い。

紅蓮。

炎。

鉄。


…血?


「タイガ………ねぇ…」

タイガはエミヤの呼び掛けにも答えない。


何故?

なぜ?

ナゼ?

私が攻撃したから


いつまでも動かない?

何故?

なぜ?

ナゼ?

ワタシガアクマダカラ?


私が、生きていたから?


私が、生まれてきたから?


嗚呼、嗚呼、そんなの

私のせいじゃない。


タイガの居ない世界なんて

タイガを殺した世界なんて

私が生きている世界なんて


ホロンデシマエバイイ?


ホロンデシマエバイイ。


モウナニモイラナイ?


ナニモテニハイラナイ。


ち…が…………









ドォォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオン



「ああぁアぁあぁあアぁぁァアアあああァぁあああ!!!!!!!!!!!!」

エミヤはタイガだけを抱えて泣き叫んだ。

それに同調するように天地は揺れ、竜巻が起こり、雨が降り、雷が落ち、人も魔も無関係に襲っていった…

力に、思いに、重さに世界が揺れているのだ。


「何てことだ…!」

それらを避けながら、空から現れたユウヤの姿がハヤテには見えた。


「エミヤ!!!」

ユウヤはそのまま空から急降下した。

だが、あまりに強い風に、ユウヤは容易に弾き飛ばされてしまった。


「いヤぁぁぁぁァぁァあああアあァああぁぁぁアァああ」

エミヤはタイガを腕から落とし、頭を抱えた。

その拍子にユウヤと同じく、弾き飛ばされた。

それを見たユウヤは慌てて地上に降り、タイガを受け止めた。


タイガを受け止めたユウヤはボロボロになったタイガやサキアを苦々しげに見つめた。

「くそっ…!

 どうしたら…!!!」


ハヤテはサキアを抱き止める腕を一層に強めた。

「この風……エミヤが起こしてるのか…?!」

「…そうだよ

 エミヤの力は君たちの力とは違うんだ。

 こうならない為に!…………くそっ!」

ユウヤはそう言って、ハヤテの側まで来るとタイガを傍らに寝かせた。


そして静かにハヤテ達に手を伸ばした。

「第零の術式 アーテルが紋章を持つユウヤの名において命ずる。」


「ユウヤ…?!」

ハヤテは驚愕して、サキアとタイガに覆い被さった。

闇はハヤテに触れると半円状に広がり、3人を包んだ。


円球の中は風も雨も、何も当たらない。

「っ…!

 俺は必要ない!!!ユウヤ!!!!」

ハヤテの必死の言葉に、ユウヤは微笑んだ。


生身で再び飛び込んでいこうとするユウヤに、ハヤテは叫んだ。

「待て!!!!!!」

「待って」

誰かと重なった自分の声に驚いて、サキアとタイガを見たが、二人とも目を閉じたまま。


ハッと周りを見た。

「アンタ…?!」

そこに居たのは、生徒会長だった。

あのとき、サキアと話していた、結とハンナの親戚である弥扇みおうぎ 神夜かぐや


神夜は一瞬ハヤテを見て微笑み、エミヤを見つめた。

「ごめんね……………」

神夜は扇を開いた。


「────光は愛に包まれ生まれる────」

少女は歌い。そして踊り出した。

ハヤテには見たこともない日本古来の舞だった。

雅やかで艶やかで

不思議なリズムと声はそんな小さな体から出しているのが信じられないほど、伸びやかに広がった。


「え……」

それと共に風も雨も雷も止んでいった。

それを確認し、ひとしきり舞うと、神夜は扇を閉じてエミヤとユウヤに駆け寄った。

(何者だ…?まさか他にも能力者が………?

ハンナのように一代飛ばして生まれた能力者?

いや、能力を打ち消す力なんて聞いたこともない…!

ましてや…エミヤの力を……)


「お前、弥扇…だろ?

 …何者なんだ?」


ハヤテの言葉に、神夜はエミヤに伸ばす手をピタッと止め、ハヤテに振り返った。

「私?私は…えっと……何て言ったら良いのかしら……?」

キョトンとした顔でユウヤに問いかけた。

訪ねられた当の本人は、半ば放心状態だったが、やがて眉を潜め出した。


「……取り敢えず。

 移動しましょう?」

神夜は負傷した3人を見つめていった。

ハヤテは少し戸惑ったが、周りの悪魔がエミヤの力によって消されていたのを見て頷いた。

体格的な問題でハヤテはサキアを、ユウヤがタイガを、神夜がエミヤを抱えた。

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