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異端のLegitima   作者: 瑞希
《奇怪の異能》
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《リミッター》

エミヤたちが退治に行っているころ、

特殊能力部にはダンボール箱が届いていた。


「お、届いたわね」

志保はそういいながらダンボール箱を開けた。

中には綺麗に包まれたアクセサリー二つが入っていた。


真ん中に赤い宝石がはめ込まれた腕輪と

青い宝石でできた蝶がモチーフの髪留めだ。


「毎度のことですけど、凄いな高そう……」

碓氷がアクセサリーをじっととみて感嘆の声をあげた。


「えっへん」

志保は両手を腰に当て、

自分の手柄とばかりに得意気に笑った。


「リミッターは柊家じゃないでしょう。

 金の出所はそうだが…。」

柊財閥は世界的な富豪。

父は有名な政治家、母は企業の取締役

兄は聖神病院の理事長、姉はHOMAREなどの社長なのだ。


「ま、私は普通の先生だけどね」

志保はそういいながら、

包まれたアクセサリーを取り出し机の上に置いた。

(普通…?)


「ていうか、碓氷くんの家だってお金持ちでしょ?」

「…それはうちじゃなくて神氷かみひょうり。」

「あら、親戚でしょ?」

「俺は関係ない…です。」

碓氷は志保の言葉に目をそらし、苦い顔で否定した。


「ま、神氷家はキツイからちょっと苦手ね。」

「あんたのとこもきついよ…」

碓氷がボソッとつぶやいた。

志保は聞こえてるのかいないのか、にこにこと笑っている。


「あの子たち帰ってきたみたいね」

「そうですね」

廊下から聴こえてきた足音に

志保が碓氷に笑いかけると、碓氷もつられて微笑んだ。




ハヤテが扉を開けそれに続いて全員が部室に入った。

「おかえり。どうだった?」


志保がにこやかに聞くとサキアが応えた

「低級悪魔を1体討伐しました」

「すごいんですよ!

 タイガが能力つかっちゃって!」

「あら…そう。

 すごいわね、お疲れ様。」

そのあと数分間、志保と部長を中心に報告会を行った。


「エミヤちゃん、タイガくん」

報告会が終わると志保はエミヤとタイガを手招きした。


「は、はい」

エミヤとタイガが机の方に行くと、

綺麗な髪留めと腕輪があった。


「わあ、キレイ」

「でしょ~?髪留めがエミヤちゃんの

 腕輪はタイガくんのね。」

タイガはさっそく腕輪をはめてぼうっと眺めた。

エミヤも元々下ろしている髪に髪留めを付けた。


「貰っちゃいましたけど、

 何ですか?これ」

エミヤは髪留めを触りながら、志保に問いかけた。


「説明するわ」


これはジェムというもので出来た

リミッターという能力を安定させる為のもの。

時として能力を抑制し、また援護する。

その調節は本人の意思、もしくは遠隔で操作される。


「まあ、上限を超えない限り、

 これを着けていれば安全になる」

「まさか、最初から

 使えるなんて思いもしなかったから…」

着けていれば安全ということは、

着けていなければ必ずしも安全ではない言うことだ。

ハヤテや志保が言っているのはそのことだろう。

(まぁ、使えちゃったものはしょうがないよね?)


「ついでに皆も見せたら?」

志保が提案するとみんな頷いた。

ハヤテが青い宝石が埋め込まれた銀のウォレットチェーンを見せ、

次に双子が左耳、右耳に付いた緑のイヤリングを見せてくれた。


「手こんでるな………」

「全くだ。」

タイガが呟くと、ハヤテが頷いた。


「話は変わるけど」

志保がエミヤとタイガに向き直って改めて話を始めた。


「一人は危険だから、連絡先を交換しておきましょう。

 何かあったら部長にでも連絡してね」

エミヤとタイガは連絡先を交換するとSMSにも追加された。

そして、[中学生組いぃぃぃ!]と[24特殊能力]

というグループに招待された。


「まぁ、タイガは既に能力を使えてるし

 2人は家が隣なんだろ?」

「え…何で知ってるんだ」

タイガがハヤテに不審そうな目を向けた。


「………」

「私が教えたのよ~。家が隣同士だって」

押し黙ったハヤテが志保に視線を送ると

それに気づきにっこり微笑んだ志保が代わりに答えた。


「へぇ~。そうなんだ」

同じくハヤテに不審そうな目を向けていたユキカが

納得したように言った。


「ふーん…。

 そういえば、さっきの電話なんだったんだ?」

さっきの電話とは時計塔で

集まっているときに鳴ったエミヤの電話の話だ。

タイガは電話を連想して思い出し、エミヤに問いかけた。


「マネージャーから

 ドラマに出演する子供のエキストラさんを5人探してって」

「………………………ぁぁぁぁあ!」

タイガは目を見開き突然大きな声を上げた

その声にエミヤも含めたほぼ全員がギョッとした。


「な、なに…?」

「いや、ほら俺たち5人!」

エミヤのギョッとした顔に少し戸惑いながら

タイガは自分とハヤテとサキアとナツカとユキカを指差した。


「え、テレビ!出れるの!?」

ユキカがエミヤをバッと見て、嬉しそうにはしゃぎ始めた。


「え…エミヤちゃん、良いの?」

サキアが戸惑いながらエミヤに聞いた。


「はい!ぜひ!」

エミヤは嬉しそう笑って答えると、

サキアも少し嬉しそうに笑い碓氷を見た。


「そうだな、社会科見学と偵察をかねて」

有無を聞こうと志保を見た碓氷はまたもやギョッとした。


「エミヤちゃん!一条くんのサインお願い出来ない!?!?」

志保はガバッとエミヤの手を取り懇願した。

一条とは最近人気のドラマの主演者だ。


「え、は、はい…頼んでみますね?」

エミヤはそんな志保に微苦笑を浮かべて了解した。


「この人は………………」

碓氷は呆れ顔で志保に視線を送りエミヤから離した。


「じゃ、じゃあ、連絡しておきますね」

エミヤがそういうとちょうど帰り放送が鳴った。


《下校時刻となりました

 帰りの支度をすませ、素早く帰宅しましょう》


「あら…。今日は解散、帰りには気をつけてね」

志保がやんわりと手を振り、

挨拶を済ませると全員が帰った。




生徒たちが帰ったあとの部室。

夕焼け色に染まっていく部屋は静けさに満ちていた。


「このまま言わない…訳にはいかないですよね。」

碓氷は守るべき生徒たちを昔の自分と重ね合わせ言った。


「………そう…よね…」

いつもは楽しい笑い声が響く部屋で、

泣く自分の音だけが戻らない時を虚しく教えていた。

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