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異端のLegitima   作者: 瑞希
《満月の夕闇》
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《炎の使い魔》

悪魔の群れが途切れ、

ハヤテ達の視線を感じていたタイガは、前を見たままに口を開いた。

「歩きながらにでも、話しますよ」

そう言って、タイガは歩き出した。

自分の事について話せるときが来たのだと。


少し重い足取りで前へ進みながら、一番始めに口を開いたのはユキカだ。

「…タイガ、も悪魔…だったの。」


タイガは少しの間を。少しだったけれど、みんなにはとても長く感じた重苦しい静寂の後で、口を開いた。

「悪魔より…、もっと酷い。

 ……俺は、悪魔の神です」

タイガの言葉に、全員が目を見開いた。


「神…?!」

「冗談でも例えでもなくて…。

 俺は…俺たちは使い魔と呼ばれ、王の為に一生を終える存在。

 俺は、エミヤの…エミヤだけの使い魔だ。」

タイガの言葉に、その場に静寂が流れた。

あまりに唐突すぎて、理解できないというのがほとんどだった。

ただ、一つだけ確かなのは、タイガはハヤテ達と同じ、人間ではないということ。

違う存在なのだ。

もしかしたら、エミヤやユウヤ以上に。


「悪魔の信仰の対象なんです…、俺たちは。

 王を選抜し、絶対的な力を持ち、それを与える。

 使い魔っていう種族は。」

使い魔。

王に使える魔である為にそう呼ばれる。

使えるとは言うけれど、下僕のような存在ではなく。

全くの異質ではあるものの、王と同等かそれ以上の権力や力を持っている。

魔界で語り継がれる御伽噺おとぎばなしに登場する、始まりの魔導士の子孫と言われている。

悪魔の中でも、全く違う異端的存在だ。

故に強い力を持ち、神と崇められる。


「…真綾さんの事、知ってたの?」

ユキカの言葉に、タイガは深くシワを寄せた。

ユキカが再び疑念にかられているかも知れないと思ったからだ。


「はい…。

 言い訳がましいかも知れませんが、思い出したのはつい最近です。

 それまでは…、忘れていた。

 魔界のタイガの記憶を忘れて火砕がさい 泰芽たいがとして生きようとしてたんです…。」

愚かにも。

タイガは心のなかでそう付け足した。

忘れていたことはタイガの心の奥底でいつまでも深く刻まれる忌々しい出来事だが、それを口に出すことはできない。

ハヤテ達が望んでいるのは、きっと、魔界のタイガではなく。この世界の泰芽たいがだからだ。

ハヤテ達、能力者レジティーマにとっては、そのまま忘れて貰っていた方が良かっただろう。


…忘れていても、無意識下でエミヤを守ろうとはしていたらしいが。


ハヤテは思わず、といった風に足を止めた。

「本当に真綾さんを、知ってたのか…?

 何度か会ったことも…?」

その言葉にタイガも一瞬足を止めて振り向いた。


「ああ。

 俺は真綾様と、とある村で過ごしていました。」

ハヤテは目を見開いて、心底驚いた様子だった。


「ほ…、本当なのか…?」

タイガはチラリとハヤテを見てから、前を向いた。


「本当です。エミヤが生まれてから、俺はこの世界へ来たんですから。」

タイガはそう言って、再び前を向き、歩き出した。

ハヤテも、少し間を置いてタイガを追いかけた。


「俺は未熟で、ここへ来たときに体が消滅してしまいました。

 エミヤとはぐれて…。

 何とか、死ぬ運命だった火砕 泰芽の中に入ったんです。」

タイガが言い終わるとしばらくの間、静寂が流れた。

死ぬ運命だったとはいえ、一人の人生を横取りしたのだ。

タイガ以外の誰も、そう思うことも、タイガを責めることも無いだろうが。

誰が聞いても気持ちの良い話ではない。


重い沈黙の後に最初に口を開いたのはナツカだった。

「エミヤは知ってたの?」


それにタイガは首を振った。

「…いえ。

 いつかは話そうとは思っていますが…。

 今は、絶対に全ては話せません。」

その断固とした強い言い方に、誰も否定できず、ハヤテはホッと息を吐いた。


「けど、いつかは話します。すべてね。

 エミヤの確固たる意志が生まれて、受けいれることが出来るようにになったら。」

ユキカも何も言わなかった。

人のための嘘もあるのだと知ったから。

それでも、そんなことは本人が決めることだと思う気持ちも、無いわけではなかったが。

ユキカはそれを口に出すのは止めた。

それはタイガの事を、信じているから。


「だがな、俺は納得した。

 アイツらは…、お前達は悪魔とは違うんじゃないか…?」


ハヤテの言葉にタイガは足を止め、前を向いたまま口を開いた。

「……………それを、俺の口から話して良いんですか?」


ハヤテにはその意味がわからず、眉を潜めた。

「…どういう意味だ?」

タイガはハヤテの顔は見ずに、再び歩き出した。

「………もし仮に、悪魔と、魔界に住む生物が別物だったとしたら。

 これは悪魔退治でなく、聖戦でもなく。

 単なる戦争か、人殺しになってしまうんじゃないですか?」


「……!!!」

タイガの言葉に、そこに居た、ほぼ全員がハッとなった。


「今までの悪魔討伐にだって、悪魔でない者が紛れ込んでいたかも知れません。

 過去の事ですから、絶対になかった。とは言い切れないんじゃないですか?」

「まさか…………」

サキアは有り得ない。と言いたかったが、タイガの言う通り、否定することはできなかった。


「そんな見分けもつかないような奴…」

ユキカは微かな怒りを含んで言った。


「そう。

 倒されたからには何らかの理由があることでしょう。

 そうでない可能性も捨てきれませんが…。

 しかしそれは人も同じ。

 悪魔でない者も、人と同じように悪に走ることもある…!」

思わず、といった風に捲し立てたタイガは緩く首を振った。

「…いえ。何でもありません。」


言い掛けて止めたタイガに、ユキカは頬を膨らませた。

「気になるじゃないか…!」

ユキカの言葉にタイガは弱いらしい。

「………エミヤを取り戻そうとする以上、この世界と魔界との戦争は

 もう、避けられないものとなるでしょう。」


その戦争と言うワードに一番反応したのはサキアだった。

「うそ…」


タイガはチラリとサキアを見て、再び前を向いた。

「その時、絶対悪でないもの相手に、人は人のままで居られるでしょうか?」


「…………………」


「人も、悪魔になるの…?」

人が人でなくなったら…そうしてなるものをユキカはそれ以外に思い浮かばなかった。


そういう意味ではないだろう。とハヤテは思ったが、言葉のそのまま人とは違うものになる。という意味もあったらしい。

「そう言うものにはなります。

 だからこそ、魔界もこの世界を恨んでいるのです。」


「…!」


「……………俺は是が非でもエミヤを魔界へ連れてはいかせません。

 それは、真綾様と誓ったことでもあるから。

 だが、皆さんは違う。

 誰と誓った訳でもない。

 非に走っても良い立場でもない。」

ハヤテ達はその言葉に黙ってしまった。

実際にそうだ。

もしタイガの言う通り、エミヤを連れ戻すことで、この世界と魔界との戦争のきっかけになるのなら。

タイガを止めることはすれど、協力などとんでもないだろう。


「………………すみません。皆さんに問うことでもありませんでした。」

けれど、そんな重大な判断をまだ高校生の子供にはできない。

大人でさえも難しいことだ。

もっとも客観的に見れば、答えなど解りきっているが…。


「……だけど、僕はエミヤを連れ戻すよ。

 エミヤと一緒に居たいもん。

 何でそれだけの事を、そんなに悩まなきゃいけないの?」

その言葉の重さを分かっているのか居ないのか。

それは分からないが、タイガもハヤテも、その言葉に救われたのは言うまでもないだろう。


「ユキカさん…」

「お前はずっとそのままで居てくれよ」


二人に生暖かい微妙な視線を向けられたユキカは反応に困った。

「え、なに?何か馬鹿にされてる?」


「全身全霊で誉めてるんですよ!」

「え~?

 もう何なの~?」

とりあえず笑ってくれたタイガに、心底安心したユキカだった。

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