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異端のLegitima   作者: 瑞希
《満月の夕闇》
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《幸せ。》

「やぁ、エミヤ」

その声に、私は暗い虚無を見つめながらも自分の頬が上がるのを感じた。


「貴方は、いつも夜に来るんですね」

姿を見なくとも、声や影で分かった。

どうしてここに居るかなんて、この際どうでも良い。


「…なんか不審者みたいだね、俺。」

ラムセスさんの言葉に、私は思わず吹き出した。

自分で不審者みたいだと言う不審者なんて、居るとは思わなかった。


不審者さんは、フワッと私を越え、部屋の中に入った。

「また夜間飛行とか行かない?」

差し出された手をじっと見つめてみたけれど、私がその手を取ることはなかった。


「ごめんなさい。」

私はそう微笑んで首を振った。


ラムセスさんは少し悲しそうな顔をしたけど、責めはしない。

「そっか…

 君は魔界へ行くの?」

「ええ。」

私はそっぽを向いてそう言った。

いくらラムセスさんでも、説得したところで意味はない。

私の決意は固いのだ。


「じゃあ、彼らのことはもう良いんだね」

ラムセスの言葉にギョッとして、私は慌てて首を振った。

彼らとは、タイガ達、皆のことだ。特殊能力部だけじゃなく。


「そんな訳ないでしょう?!」

どうでも良いだなんて、これっぽっちだって思ったことはない。

思ったことないし、思ってないし、これからだって思わない。


ラムセスは軽く目を見張って、私を見つめた。

「想ってるの…?」


ラムセスの驚いたような様子に、私は少し不満に思った。

「当たり前です…!!」

むしろどうして想っていない、と思えるのか…

ラムセスさん何でも知ってそうなのに、そういう感情論は解らないのね。


「そう…なんだね」

「はい。

 …何があっても、この思いだけは消えません。」

この世界…磁界から離れようと、魔界へ行こうと、王になろうと…

私は、皆との思い出や、皆への思いがあれば、それだけで、強く、強く、生きていける。

…例えそれが、皆を裏切ることになろうとも。

いつか、笑顔でいてくれるなら。

そう思えば私だっていつかは笑って過ごせるはずだ。

笑えなくとも、生きては行ける。


「…消したくないの?」

ラムセスさんの言葉に私は笑った。

「もちろん」


その言葉に、何故だかラムセスの表情が険しくなった。

「……だったら…、だったら君は、王になるべきじゃない…!」

「え―?」


「エミヤ様!」


ハッと扉を方を見ると、そこには焦った顔のランさんが居た。

「……ランさん…?」


ランさんは部屋に入って詰め寄ってきた。

「何があった?誰と話していた?」

当然のごとく、ラムセスさんは一瞬で消えている。


ランさんにも隠すものなのか少し迷ったけど、ラムセスさんはいつも“夢”と言っているから、誰にも話してはいけないのだと思う。

「えっと……」


私が躊躇ったのを見てランさんの眉が下がった。

「………やはり、魔界には…」

…!

どうしてそういう思考に至るのか解らない!

決めたと、決心したと何度も言っているのに…!

私は魔界へ行くのだ。


「ランさんは、来て欲しくないんですか…?!」

そう何度も何度も言われてはそう思ってしまう。


「そ、そういうわけではない…、ただ」

「ただ?」

ランさんは少し間をあけ、また口を開いた。


「ただ、私は貴方の幸せを願っている。

 私には貴方の幸せが王で在る事とは到底思えない。」

その言葉はとにかく私を驚かせた。

ランさんに、幸せを願っている。と言われるなんて思いもよらなかったし

幸せなんて軽い言葉を、ランさんが発するとも思わなかった。

なにより、私自身が自分の幸せがどこに在るかなんて考えもしなかったのだ。


…いや、考えてはいけないと思う。

「私個人の幸せなんかより、魔界の大勢の人の幸せの方が重要でしょう?」

そう在ることが、私の幸せと思って然るべきだ。

そうでなければならない。

忌み子でも、人の役に立てるのなら、もうそれで良いだろう。


気付けばまた少し、心が苦しくなっていた。


「私にとっては、貴方の幸せ以上に大切なものなどもうない。」

思わず頬が緩んだ。

どうしてそこまで純真に私の事を思ってくれるのか、わからない。

私はそれに値する、人間ですらないのに。


「私ね、つくづく思うんです。

 私の命ほど軽いものはないって

 自虐でも、何でもなくね」

そんな軽い命で大勢の人が救えるのなら。

それほどの奇跡なんてないだろう。ないのだ。

どうせ忌み嫌われる命なのだ。私は。

今も昔もこれからも。

それならせめて人のために使おう。


「そんなことはない…!」

必死にそう言ってくれるランさんの言葉でさえ、何だか遠く感じてしまう。


「ごめんね」

私はそういう者なのよ。

空っぽで薄情で何にもない忌み嫌われ続ける生き物なのよ。

人にも悪魔にも為れない出来損ないの御人形。


…………………生まれなければ良かったのに

エミヤはそうとう自分が嫌いらしいです。

この自己嫌悪は遺伝によるものが大きいかもしれないです。

それと、エミヤの 私の命ほど~は母である真綾と同じ言葉ですね。はい。

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