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異端のLegitima   作者: 瑞希
《満月の夕闇》
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《恐い》

「サキア、何か見えたか?」


ハヤテの言葉に、サキアは首を振った。

「ううん。

 まず、どの程度の範囲なのか…」

サキアの能力レジでは見えなかった。

そもそもエミヤがどの範囲に居るのかすら、わからないからだ。

これでは探しようがない。


「…もうこの市に居ないのか?」

「いえ、それは有り得ません」

ハヤテの疑問に、タイガは即座に否定を断言した。


「何でだ?」

ハヤテの訝しげな顔に、タイガはハッとした様子で目を泳がせた。

「…エミヤが消えたのは昨日の夜ですけど…

 とにかくユウヤがこの市から離れることは絶対にありません」


ハヤテは時間もないとタイガを問いただすことはしなかった。

「……わかった」


少し間を開けて、ユキカが口を開いた。


「それなら…、念のためだけど。

 タイガ、台所貸してくれない?」


タイガは驚きながらも素直に頷いた。

「い…、いい、ですけど…」


「何するつもりだ?」

「捜索!

 あくまで念のためだから、期待はしないでよ」



タイガの家に入り、ユキカは鍋を借りた。

その中に三分の一ほど水を入れると、安定する床に置いた。

みんながその鍋の周りに集まるとユキカはリミッターを外し、ナツカの手を取った。


「―水よ、水よ、全てを現せ―」


ユキカがそう唱えると水は勝手に動き出し、ミニチュアのように五人を現した。


「っ…うぅっ!

 ―水よ!我が意のままに…!―」

ユキカが再びそう唱えると、ミニチュアはみるみるうちに小さくなっていき、その範囲が大きくなっていった。

市全体を現したミニチュアには、いくつかの点が見えた。


「たぶん、これ…」

ユキカはその中の一際大きい点を指差した。


「ここは…緑地公園」


タイガとユウヤ以外誰も知らないことだが、二人が夜中に話し合った場所だ。

「…そうか

 行きましょう」

タイガが立ち上がった事で、ハヤテ達も立ち上がった。

「ああ。」


少しよろけたユキカを支えるナツカが表情を固くした。

「僕らは後で行くよ」


手をナツカに押し返して、ユキカは首を振った。

「っ…、ううん。

 一緒に行く」

「……わかった。」


「………」

そんな二人をサキアだけが心底心配そうに見つめていた。




「着いた…けど

 正確な位置が解んないね…」

緑地公園の入り口にまで入ったが、そこから先は分からずユキカは溜め息を着いた。


「もう一回やってみるわ」

範囲が狭まったことで出来るかもしれないと、サキアは小指から指輪を外した。


「―眼よ、悪しきものを映せ―」

その言葉に同調し、サキアの瞳が紫から赤へ変わった。


「っ…」

サキアの反応に、ハヤテはパッと顔を明るくした。

「見えたか…?!」


瞳を赤くして、その方角を見つめたままサキアは呆然と口を開いた。

「ダメよ…」

「え?」


次の瞬間、サキアはハヤテの肩をバッと掴んだ。


「逃げなきゃ…」


「は……

 ッ!!!」

ハヤテはサキアが見つめていた方角を見つめ、サキアとタイガの手を掴んだ。


「二人でこの事をみんなに連絡してくれ

 志野さんに結界を貼るようにとも…!!!」

必死の形相のハヤテに、サキアとタイガは尻込みした、が


「おかしいでしょ

 俺とアンタは逆だ。」

タイガのキツい顔に、ハヤテは一瞬怯んで、すぐに戻った。


「俺は戦える」

ハヤテの言葉に、タイガの瞳が大きく揺らいだ。


「いや。違う。

 違う!

 俺が間違ってた。

 巻き込むべきじゃなかったんだ…!」

そう言ってハヤテの手を振りほどき、タイガはサキアが見つめていた方角へ走り出してしまった。


「タイガ!」

そんなタイガを、ユキカは迷うことなく追いかけ、ナツカも追いかけた。


「ダ…メ………」

「サキア…?」

顔を伏せたサキアをハヤテは訝しげに見つめた。


覗き込んだ瞳から涙が零れていて、ハヤテはギョッとした。

「未来が狂ってしまう……

 変えなきゃ…っ!」

サキアはそう言って携帯を取り出した。


「尼ヶ辻緑地公園に力悪魔が複数…!」

誰かに向かって携帯越しに言ったサキアの言葉に、ハヤテはギョッとした。

中の中クラスの強さだ。

本来、下の上が出るだけでも珍しいのに、中級なのだ。

それも以前のような中の下ではないうえ、複数。


「はい、はい…。

 っ…?!

 わ、わかりました…」

どうやらまた別の問題があるようだ。

まるで世界が終わるみたいだな…。本当に。

そんなわけないんだが。


「ハンナの方にも能悪魔が2体って…」

唇を震わせて、サキアは俺に言った。

俺はサキアを抱き寄せていた。

完全に震えている。

その震えに今の危機的状況がよくわかった。

一体どうしたら良いのか…、俺にも分からない。

俺個人の考えとしては、この先にサキアを連れていきたくはない。

だが、サキアは行こうとするだろう。

能力レジは攻撃系ではないが武術としては十分で、足手まといとは言い難い。

ましてやこんな状況だ。

少しでも戦力は欲しいだろう…。


ハヤテはサキアを離して、肩を掴んで言った。

「此処に居て、良いんだ」

そう言いながらもサキアが何と言うかなど、ハヤテはわかりきっていた。

それでも、僅かな希望を込めて。


「いいえ。行くわ。」


「…そうか」

ハヤテはサキアから手を離して、タイガ達の跡を追った。






「ユウヤ!!!!!」

俺はある程度まで走って、そう叫んだ。

もどかしいことだが、俺にユウヤの場所なんて分からない。

だが、ユウヤになら俺の居場所は分かっているはずだ。

俺のこともユウヤになら分かっているはずだ。


すると、茂みの奥から姿が現れた。

解っていたことだが、ユウヤではなかった。

「陛下…」

その言葉からして、ユウヤの部下なんだろう。

帝國軍の従者の奴等か…?


「エミヤは何処だ。」

俺の声に、それは俺に跪いた。

こういうのは、やっぱり俺には向かない。


「御赦し下さい。

 我らは皇帝陛下が従者」

「甲斐甲斐しい事だな」

そう冷たく言って、俺は従者それを見下した。

どうでもいい。

力づくで聞き出すまでだ。


「タイガ!」

その声に、俺はハッと振り向いた。

ユキカ先輩の声だ。

俺を追いかけてきたんだろうユキカさんの後ろにはナツカさんも居た。


「そいつ…悪魔!?」

隠れる気もないのか、従者は俺に跪いたままだった。

物凄く不味い…が。

別に隠すものでもなかったのだ。


「御友人…ですか」

「ああ、お前の主にとってもな」

ユウヤは俺たちを殺す気など毛頭ないはずだ。

少なくとも、本心では。

建前上そんなこと言えるはずはなくとも、真にユウヤを思うのなら分かるはずだ。


「皇帝に友人など居りませんよ」

…駄目だな。

俺はサッと従者から離れて、ユキカさん達を庇うような位置についた。

コイツはユウヤ本人ではなく、皇帝の従者なのだ。

それなら、こっちだって情をかける必要なんてない。


「それが貴方御答え、ですか…?」

無表情にそういう従者。

お前には、ユウヤには、魔界には悪いが、俺の答えはとっくの昔から決まりきっている。

とっくの昔からな。


「ああ。

 俺のあるじは昔からただ独りだ。」

そう言って俺は、従者を睨み付けた。


俺の主。

俺が幸せにしたいと

側に居たいと想う相手は


「え、な、え?」

「あとで説明します。

 今は敵を倒すことを考えてください」

俺の言葉に、ユキカさん達もリミッターを外して戦闘体勢に入ってくれた。

殺すんじゃない。倒すんだ。

…だが、もしもの時は、俺が。

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