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異端のLegitima   作者: 瑞希
『樹木の導き』
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『黒と銀の天使』

「エミヤ、話があるんだ」






エミヤは深夜0時を過ぎても、眠れずにいた。

もしくは、眠る気すら起きないのか長い間ベッドに座っていた。


そんなエミヤに、影が重なった。


「今晩は、愛しの姫君」

黒い肌とそれと相対するような銀色の髪。

月夜に照らされたその姿には、一瞬だけ翼が見えた。

が、すぐに消えてしまった。

エミヤには、そのすべてが純黒のオーラを纏った美しい悪魔に見えた。


「…どなたでしょう。」

姫君というワードから自分の事を知っているのかと思ったエミヤは、特にリミッターを外すこともなく普通に聞いた。

以前ユウヤに、自分達の事を知っているものが居たら…という話をされていた。

だが、今のエミヤにとってはそれも良く判らなくなっていた。


エミヤの問いに、その人は窓際にもたれて、首をかしげた。

「ラムセスって言うんだけど…。

 名前聞いてる訳じゃないかな?」


ラムセスという人の言葉に、エミヤは目を泳がせ言い換えた。

「…ユウヤさんの使者か何かですか」

自分の存在を知っていて、尚且つ自分に好意的であり、そしてこのタイミング。

エミヤはユウヤ関連の人だと思った。


「あー、ううん。違うよ。

 ユウヤには、また今度会いに行くつもり。」

「対等の人ですか」

エミヤの立場を知っていながら、ユウヤの事は呼び捨てにするということは対等の人だと思ったのだ。


だが、ラムセスはそうでもないらしい。

「うーん…、僕はどっちの人間でもないから。」

「魔界の人でもない、ということですか…」

彼が、他の悪魔のように濁ったような色でなく、純黒である理由はそこにあるのかもしれない。

エミヤは何となく納得した。

少なくとも、普通の悪魔ではないのだ。

銀と黒の美しい……悪魔と言うよりは、それこそ堕天使のような。


「そのラムセスさんが、私に何の御用でしょうか。」


ラムセスは、窓際からエミヤに手を差し出して微笑んだ。

「夜間飛行とか如何ですか?

 その悩み、少しは解消できるかも。」

「………悩み、ですか。」

初対面のラムセスにそれを見透かされることなど無いと思っていたが、ラムセスは探ることもなく極当たり前のように言い当てていた。


「うん。

 気分転換は必要だろう?」

何故だか言い方が可愛くて、エミヤは思わず笑ってしまった。

もうしばらくは笑えないと思っていたが、すごく自然に笑えてしまった。

「そうですね。」

「ふふっ。」




「飛んでる…!」

エミヤは生まれて初めて、空を飛んでいた。

ラムセスにはエミヤの見間違いではなく、やはり翼があった。

それも左右足して六枚も。

その中の二枚と腕でエミヤを抱え、もう二枚の羽で飛び、もう二枚の羽は休ませている様子だった。


そのあまりに非現実的で幻想的な光景に、思わず見とれているとラムセスが視線に気づいた。

「ちょっと寒いかな?

 大丈夫?」


翼のお陰で風は全くと言っていいほど当たらないし。

むしろ、モフモフ?で暖かい気がする。

「あ、はい。平気です。」


エミヤの言葉に、ラムセスは安心したように微笑んで

「そう。良かった。

 どっちに行きたい?」

ラムセスは空中で止まってエミヤに聞いた。


どっちと言われても、エミヤにすぐに浮かんだのは一つだけだった。

「学校…とか。」

「良いね、ドキドキする。」

ラムセスは悪戯っ子の笑みを浮かべた。




学校の中に入ると、ラムセスは私を下ろしてくれ、一緒に探索を始めた。

見慣れたはずの景色だったけど、暗い学校なんて見たことがなかったから、別の場所みたいだった。

学校も、別の場所みたいなんだね。

どこの場所も…………ああ、家以外かな。

「怖いですね、なかなか。」

「お化けとか出ちゃったりね。」


その言葉に、顔がひきつるのを感じた。

「それは…。」

「怖いね。」


ブルッと身震いして見せるラムセスに、エミヤは少し驚いた。

「ラムセスさんも怖いのですか?」


エミヤのことを見下ろしてラムセスがニコッと笑った。

「わからないものって怖くない?」

「そうですね。怖いです。」

エミヤは顔が綻んだことを感じて前を向いた。


「わかっちゃえば平気だと思うけどね。」

ラムセスがふと呟いた声にエミヤは前を向いたまま重い口を開いた。

リミッターをすぐに外せるよう準備して


「………あなたは何者なんですか?

 何故、私に。」

エミヤの言葉に、ラムセスは少し間をおいてからエミヤの頭をポンポンっと撫でた。

その行動に驚いて、エミヤがバッと顔をあげると


「僕ってすんごーーーーく、お爺ちゃんでね。」

ラムセスは突拍子もない事を言い出した。

どう見てもそうは見えない。

わか…いや、年齢不詳。


「は、はぁ……。」

「もう、何歳かも分かんないんだけど

 僕の好きな人が、君のお祖母ちゃんなんだ。」

ラムセスの言葉に、エミヤは今度こそ驚いた。


「…………私のお祖母ちゃん」


「ああ…、懐かしいな。

 僕は親戚のお爺ちゃんみたいなノリで

 君みたいな子孫に逢いに回ってるんだ。」

「そうなんですか…。」

何だか変わった人だなぁとエミヤは今更ながらに思った。


「といっても、

 君とユウヤしか、もう居ないんだけど。」

「………そうなんですね。」

エミヤの祖母も、エミヤの母も、親戚も、もうこの世には居ないのだ。

エミヤにとっては、ユウヤだけが唯一の。


「うん。

 忘れ形見だね、君たちだけが。」

忘れ形見………。


「お祖母ちゃんはどんな人だったんですか?」

「うーん。魔界では英雄だね。

 7つに別れてた国を

 一つの血も流さず、平和にしたから。」


ラムセスの言葉にエミヤは軽く目を見張った。

「一つの血も流さず…?」


エミヤを見下ろし、ラムセスは笑みを見せた。

「本当は、二人怪我したんだけどね。

 確かに誰も死んでないし。」


「すごい人なんですね…。」

自分の祖母とは到底思えない遠い存在に、エミヤはただ称賛した。


「そうでもないさ。

 全世界の国を一つにした訳じゃない。

 大きな国を一つ生んでしまった。

 そうでなくとも、この世界にとっては癌だろう。」

「ガン?」

「悪いもの。

 脅威が一つになって強くなったから。」

「…………。」

すごい人なのだと思ったけれど、そうではなかったらしい。

母と同じように、ここでは忌み嫌われる存在なのだろう。


「落ち込むことはないよ、正義なんてそんなものだ。

 一方から見れば英雄。

 一方から見れば魔王。」

「そう、ですか…。」

呆気からんと言って見せるラムセスに、エミヤは複雑に思った。

それでも、ラムセスはその祖母のことが純粋に好きだったのだろう。

そんなすごい人、悪い人を何故好きになったのだろう…。


「だから君も、自分の望むことをするといい。」

「自分の?」

ラムセスの言葉にエミヤはふと足を止めた。


「うん。人のためっていうのは、不可能だよ。

 誰かを救えば誰かは不幸になる。

 自分のため、とか

 自分の好きな人のため、とか

 世界は自分を中心にした方がいい。」


エミヤはその言葉に困った。

「そうでしょうか…。

 救える命があるのなら」


エミヤの言葉にラムセスが声を重ねた。

「そうだね。

 でも、それで自分の大切な人が傷ついたら嫌じゃないか。」

「…………人助けがそんなことになりますかね。」

「ならないように気を付けないと。」

エミヤは顔を伏せて眉を潜めた。


「いつか分かると思うよ。

 分からない方が良いんだけどね。」

ラムセスはそう微笑んで下を向くエミヤに手を差し出した。


「…はい。」

エミヤはジッとラムセスの手を見つめ、少し悩むと手を握った。


そうしたエミヤに、ラムセスは満足げに笑った。

「そろそろ帰ろうか。

 今日のことはすべて夢だった。

 良いね?」

「はい。」

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