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異端のLegitima   作者: 瑞希
『樹木の導き』
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『殺める歌』

ザワッ


「わっ…!

 広場に抜けた!」

アミの声に、エミヤはハッとして目を開けた。


ここは…!

あのときと同じ、道を抜けると強く吹く風。

円形に連なる木々と、中央に不自然に一本だけ立つ木。


「も、戻ろう…!」

一番近くに立っていたヒナの腕をつかみ、エミヤは戻るよう促した。


「えっ…え、どうして?」

戸惑った様子で聞くヒナに、エミヤは少し困って周囲を見た。

今はまだ攻撃してくる気配はないが…もしかしたら……?

…けれどエミヤは木が攻撃してくるところを、実際に見たわけではない。

それに悪魔はあのとき倒したはず………。


「う、ううん…何でも―」

「エミヤ!!!!」

セイラの叫び声と共に、エミヤは後ろから突き飛ばされた。

前へ倒れ込み、痛みに身をこわばらせたエミヤは、恐ろしい予感にハッとなって後ろを向いた。



「―!!!」

後ろにはすでに誰の姿もなく、パッと中央の木に目を向けると、木の枝に三人が囚われていた。

ドクドクと強く鳴って行く心臓の音を感じながら、エミヤはスクッと立ち上がった。


「……う、歌え…」

そう歌の最初のフレーズのみ小さく呟くと、エミヤはサッとリミッターの髪飾りを取って目を閉じた。

エミヤが歌うときに目を閉じるのは、ハヤテの“目は合わせない方が良い。”という言葉によるものだった。


「…―戦え 我らが正義のために―」

エミヤが歌い出したことにより、木々はあのときと同じようにざわめき出した。

まだ、悪魔は…死んでいなかった。

死んでいなかったから…アミは…ヒナは…セイラは…!!!


エミヤはカッと目を見開いた。

エミヤの思った通り、木々たちはエミヤに向かって枝を伸ばしていた。

それを見て、エミヤは歌いながら走り出した。

普通であれば中々難しいことだが、それは職業柄だろう。

むしろ、走ることにより、鳩尾みぞおちに力が入り、より力強い歌になった。


避けるために、円形に走りないがら、エミヤは中央の木へ向かって…アミ達の元へ向かった。

より強力に歌を聞かせるために…悪魔を倒すため………悪魔を、この手で殺すため…!


中央へたどり着けそうになると、以前は全く反応しなかった中央の木までも動きだし、エミヤに迫ってきた。

後ろからも前からも迫ってくる木にエミヤはもうダメだと思ったが、それでも歌うのはやめずにいた。

例え、刺し違えてでも…!


「―!」

目の前に迫った瞬間に、木が突然にられた。

何もないところで急に伐れたように見えたが、それを伐った正体は、エミヤには見えた。

細い、糸だ。


「部長さん!」

思わず歌うのをやめ、エミヤは居るであろうハヤテの姿を探した。

辺りを見回すと、ハヤテ、サキア、そして見知らぬ女性の姿があった。


「エミヤ!

 それが核だ!」

ハヤテの言葉に、エミヤはハッとなって木に目を向けた。

あれほど迫ってきていた木々は、ハヤテが現れたせいか、パタリとなくなっている。

けれど、エミヤが歌い出せば必ず攻撃してくるだろう。

ハヤテも無敵なわけではない。

次もエミヤを庇いきれるとは限らない。


だから…何だと言うの


自分の手に握りしめていたリミッターの一部が細く延び、エミヤの耳へ入った。

エミヤが歌うのを誘導するように、“音”が流れ出した。

「―戦え 我らが正義のために―」


木々はエミヤの思った通り、迫ってきた。

それも、エミヤにだけではなく、ハヤテたちにも。


…殺す


「―戦え!

 我らが仲間と共に!―」

エミヤは力の限り声をあげ、中央の木へ走り抜けた。


―力を―


黒い靄に包まれそうになったとき、懐かしい声が聞こえた気がした。


「「エミヤ!!」」









「…やっぱり、調べるんだ」

僕は木の隙間に隠れながら、かなり前を歩いているハヤテたちを見た。

ハヤテとサキア、そして一緒にいる女性はサキアのお母さん。


「なんで僕がこんなこと…」

始めからそんなに乗り気じゃなかったナツカが、ため息をついた。

なんで、って…そりゃ気になるでしょ…!

志野さんが感知できなくて、僕にも関知できなかった結界なんて…!


「…え?」

「ユキカも、聴こえたんだね」

ナツカの言葉に、僕は頷いた。

聞き間違えるはずもない。

これは、エミヤの歌だ。

そして、エミヤが歌っているということは―


僕たちは、特に合図することもなく、一斉に走り出した。


「何してんのハヤテ!

 早く!!」

まだ気づいてすら居ないのか、ハヤテは特に焦っている様子もない。

これだから、年寄りは…!

でも、声かけてあげなきゃ、絶対後悔しまくるんだろうし!


変な庭のところに、抜け道みたいなのが見えた。

でも、そっちよりも森を突っ着たほうが、速い!


バシバシと当たってくる枝や葉をもろともせず、僕らは全速力で走り抜けた。

森を抜けると風が強く吹いた。

まるで、僕らを歓迎しているようだ。

獲物が来たって、悦んでるんだろうね。


「で…どうする?

 エミヤは僕らに嘘ついてた子だけど?」

そうだ…った。

ナツカの言う通りで…、エミヤは悪魔との…魔王と人間の…。

魔王とハヤテのお父さんとのハーフなんだ。

でも正直、そんなのはどうでも良い。

本当に嫌なのは、エミヤが…僕らに嘘をついてたこと!!

何でこんなに苛立つのかも分かんない!

僕も…ナツカも…何でか分かんないけど怒ってる!


「でも」

「そうだね」

僕らは互いの手を握り走り出した。

エミヤが居る方へ。

エミヤがどこにも行っちゃわないように…!


「「エミヤ!」」

僕らが声をかけた途端に、気を失って、崩れ落ちてしまったエミヤを、ナツカは受け止めた。

急に力を使いすぎたんだ…。

いつもと歌の感じが違ったのは…、僕らだけには聴こえたのはこのせいだったんだ。

よく分かんないけど、僕の能力レジが、強力?になったせいか、敏感になってるんだと思う。たぶん。


…どっちにしても―!


「―水よ!刃となれ!―」

僕が出した水は、物凄い速さと鋭さで迫ってくる枝を切り裂いた。


「ナツカ!」

エミヤを横たわらせているナツカに、僕は声をかけた。


「うん!」

アイコンタクトで僕らは互いの手を再び握った。

あんまりにも能力レジを使いすぎると、互いの境目が分からなくなっていく。

だけど、そうなればそうなるほど僕ら強くなる。

僕らは…二人で一人だから。


「「―水よ!剣となりて彼の者を断罪せよ!―」」

僕らの出した水は、大きな剣になって木を根本から斬った。

木は地面につく前に枯れ葉になり、地面につくと灰になって消えた。

それにより、周囲にあった木々も同じように消え去った。


僕らはそんな木々にも、中央で倒れている知らない人にも目もくれず。

誰かのために力を使いすぎて、倒れてしまったエミヤに手を伸ばした。


「「エミヤ…」」

エミヤの頬は心なしか、白く見える。

いつも白い肌が白くなって、本当に消えてしまいそうで不安になる。

けど、手を伸ばせば触れることができて、僕らは少しだけ安心した。


「お前ら…!」

遅れて僕らのところに来たハヤテ。

サキアとサキアお母さんは、知らない人についてる。

知らない人はたぶん、エミヤの友達なんだろうけど。

エミヤはその友達のために―。


「エミヤが、危なかった。」

「力を使いすぎたんだ。」

僕らはハヤテを責めるように見つめて、拗ねた子供のように言った。


「ああ。

 俺が、力不足だったせいだ。」

ハヤテは何にも言い訳しないで、真っ先に自分を責めた。

ハヤテは優しい。

エミヤだけでも、サキアだけでもなくて…僕らにも、優しいんだ。


「…別に、ハヤテを責めたかった訳じゃない。」

「分かってる。

 助けてくれて、ありがとな」

僕はハヤテの言葉に何だか泣きそうになった。

僕…僕ら…エミヤのこと、大好きなんだ。

だから…嘘をつかれてたって分かって、すごく嫌だった。

事情だって、少し考えればわかった。

別に騙すつもりじゃなかったことだって分かってる!

でも…でも…、やっぱり分かんない!

エミヤが何を考えてるのか分かんないよ!

エミヤは…、本当は何を想ってて、何を考えてるの…?


ねぇ…、教えて。







最近、予約にばかり頼ってしまって…orz

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