『全部、思い出した』
「今回は顔合わせだけだけど
念のため偵察もしておきますか?」
ナツカはアリアに提案した。
「ああ、パトロールね。
じゃあ、調べたいところがあるの…、良い?」
アリアの言葉に、ナツカは驚きつつ慎重に返した。
「何か疑わしいことでも…?」
ナツカの言葉にアリアは少し間を開けてから首を振った。
「…きっと勘違いよ。
志野さんも何も言っていなかったし。」
アリアの言う志野とは柊家という家の当主。
柊の能力についてエミヤは知らないが、大きく魔除けの能力であり、完全とは言えないが悪魔を関知することができるのだ。
「…じゃあ、念のため。」
「うん。」
それぞれの部長同士によって、やることが決まった。
少し不安材料は残る。
だが、これだけ人数がいれば万が一にも平気だろう。
ナツカとアリアはそう考え、話を進めた。
「それで、どこなんですか?」
「公園よ。」
アリアの言葉に、タイガは覚えがあった。
「あ
あの、めちゃくちゃデカイ?」
「そうそう!
タイガくんも行ったことあるの?」
もっと近くにも公園はあるのだが、アリアの言う公園ほど大きいところはない。
そのため、タイガは孝彦と入也達とよく使っていたのだ。
「かなりの頻度で…」
「そっか。
男の子だもんね~。」
察したアリアはにこにこしながらタイガに言った。
アリアに言われたタイガは、男の子と言われ苦い顔をした。
「まぁ、…はい。」
間違ってはいないのだが、子供扱いされているようで複雑な気分だった。
アリアはそんなタイガの事は気にせず、さらに話を進めた。
「気になったのはね。
そっちの方じゃなくて、もっと奥の方。」
アリアの言う奥という単語に、エミヤは何故だか不安を抱いた。
その単語だけ重く暗いように思えたのだ。
「奥…」
「そう。
エミヤちゃんは、知ってる?」
アリアの深い緑の瞳がエミヤをすっと見据えた。
表情は柔らかいのに、何故だかその瞳は探られているようでエミヤは驚いた。
「え…?
さあ………?」
「そう
確かに、普通はいかないわよね」
何度か瞬きすると、アリアの瞳は普通だった。
見間違いだったのだろうとエミヤはため息をついた。
「…で、どこなんだい」
「何しろ広いから…、バスで行きたいんだけど良いかしら」
アリアの問いに、代表して部長であるナツカが全員に視線で確認し、頷いた。
「…はい。大丈夫です」
「良かった。
じゃあ、行きましょうか。」
アリアは微笑んで、バスに向かって歩き出した。
公園の中に入り、しばらくバスに揺られてから降り、そこから更に歩くとアリアは森の前で足を止めた。
「この奥から変な感じがするの」
「変な感じ…ですか」
アリアの言葉に、ナツカは聞き返すことはなく、森の向こうを見つめた。
自分にも感じられるか確かめているのかもしれない。
「うん…………。
ところでユキカちゃんは?」
アリアの今さらな質問に、ナツカはキッパリと返した。
「体調不良です。」
「…そう。
それなら仕方ないわね。
全員リミッターを外しておいて」
「え、は、はい。」
アリアの回答が予想外だったナツカは戸惑いながら外した。
「変な感じが強くなってる。
早急に終わらせないと。」
アリアはそう言い切ると、ピリッとした雰囲気を漂わせた。
先程までとは違う雰囲気に、それ以上は誰も声をかけられなくなった。
単に人数が欲しかったのだろうと全員が理解した。
それを理解すると同時に、エミヤは、ユキカがいない理由を作ってしまったことに、胸の奥に重く苦しいものを感じた。
アリアは全員を一人ずつ確認して、木々の隙間から森へ入っていた。
ナツカも全員を見て頷きアリアを追いかけ、そこからユウヤ、 タイガの順に入っていった。
エミヤも胸に重く苦しいものを抱えながらもタイガについていった。
最初にセツナが周囲を確認してから、森の中へ入った。
木々の間は思った以上に葉が生い茂っていて、目も開けられないほどだった。
それでもエミヤは迷わないように。と僅かに見えるタイガの後ろ姿を追い掛け、なんとか森を抜けた。
エミヤが何とか抜けると同時に、風が強く吹いた。
エミヤは反射的に腕で顔をおおった。
風が止み、目を開けると、木に囲まれた緑の草原が目に広がった。
円形の美しい広場は中央に向かって丘のようになっており、その中央には一本だけ大きな木が立っていた。
「…エミヤちゃん、丘の上で歌ってくれる」
その光景に見とれていたエミヤは、アリアの言葉にハッと我に返った。
言葉事態は丁寧だったが、それは疑問形ではなかった。
命令なのだと理解したエミヤは、特に反論することはなく素直にうなずいた。
「わかりました。」
頷くと、エミヤは早速丘へ向かった。
ついていこうとした、タイガ、ユウヤ、セツナがアリアに止められるのを横目に見ながらエミヤは進んだ。
今回は一人で歌わなければならないのだ。
森の前では感じなかったが、エミヤも近づくにつれ、その違和感を感じてきた。
目で見れば普通の木だが、感覚的に何か違うような気がしてならないのだ。
普通の木よりも分かり易い、何か明確な“意識”があるような…。
一体それは何なのか…。
考えているとあっという間に丘の頂上へ着いた。
触れてみるとやはり違和感がある。
この木には“意識”がある。
それを…、殺して、良いの…?
ずっと忘れていた疑問が突然頭に浮かんだ。
それは、あの能悪魔というアーチーと出会ったときに強く思い。
自分に悪魔の血が通っているときに悩んだことだった。
タイガは悪魔だろうが何だろうが、私は私と言ってくれた。
だから今、私はここに居られる。
…けれど、それなら今目の前に居る、この木々は…?
チラッと後ろを見ると、アリアがじっとエミヤを見つめていた。
今のアリアに、優しい雰囲気はうかがえない。
エミヤは再び木に視線を移し、大きく息を吸った…。
「―自由を取り戻せ―」
エミヤが歌い出すと、次第に周りの木の中に、風も吹いていないのにザワザワという音が聞こえてきた。
エミヤは目を閉じて歌った。
私はまた、“意識”を殺すのだと胸のどこかで思いながら。
「なんだ…?」
エミヤの歌に呼応するようにザワつき出した木々に、俺は怪訝な視線を向けた。
「悪魔だったんでしょう」
アリアの冷静な言葉に、俺は少し驚いた。
今まで倒してきた悪魔はすべて動物だったから、植物もいたのだと驚いたのだ。
これで悪魔に明確な意思があったんなら。
…悪魔と俺たちに、本当に違いがあんのかわかんねぇな。
そもそも、俺たちは何で悪魔を倒してるんだ…………?
「聞いてる?タイガくん。」
「え、あ、すんません!」
ボーッとしてて全然話を聞いていなかった。
「…相手は悪魔よ。」
その悪魔を倒す否かが分からないんだが…。
まあ、そんなことは今に始まったことじゃなかったな。
「…………はい。」
この世界が今の状態になったのだって、そういう争いのせいだ。
そう、歴史の授業で習ってきた。
だが、それと同時に二度と繰り返すなとも習ったが…。
「それぞれ五角形に別れるわ。
私はここの真反対に。
ナツカくんは10時の方角、ユウヤくんは2時の方角
タイガくんは7時の方角、セツナちゃんは5時の方角」
アリアの指示により、俺たち四人はそれぞれの位置に移動した。
7時の方角って…どこの隊員だよ。
確かにこの場合は、わかりやすいけどな。
所定の位置について木々を見上げると、いくつかザワついてるのがあった。
…木と火。
相性が良さ過ぎるのも考えものだ。
手加減をしないと。
俺は右手を銃のように構えて、もう片手でそれを押さえた。
「―……………火よ彼のものを滅する銃弾となれ―」
そう唱え、狙いを定めて木に向かって打った。
枝だけのつもりが、小さな火だったはずの炎はその木の大部分を燃やした。
「やべっ」
慌てて手に戻して、やっとおさまった。
俺のさじ加減じゃどうにもならんな。
「っ…」
それにより怒ったのか他のザワついていた木々が一斉に俺に攻撃を仕掛けてきた。
相性は良いと言っても一瞬で燃やせるもんじゃない。
俺は襲ってきた枝に小さな種火をつけながらギリギリのところで避けていった。
俺が疲れる頃には、木々はほとんど燃えていた。
「うわっ」
油断した隙に、地面から生えた枝に足を取られた。
俺の火によって燃え上がる枝が、俺に向かって迫ってきた―
「闇よ!!!」
ユウヤの怒鳴るような声が聞こえたかと思うと、燃える枝を黒い何かが弾き飛ばした。
「タイガ!」
ユウヤの声にハッとなって、俺は足に絡み付いた枝を燃やしながら引きちぎった。
そして、容赦なくザワついた木々全てを燃やし尽くし、燃え広がりそうになった火を手に戻した。
………普通に、死ぬところだった。
「…………いつまで座ってるんだい」
いつのまにか俺の横に立っていたユウヤが俺を見下ろしてそう言った。
…こいつが出した、黒い何か…嗚呼、闇だ。
ユウヤは呆れた顔で俺に手を差し出した。
「…ほら」
腰を抜かした訳じゃないんだが…。
何か笑えてきた。
差し出された手を掴んで立ち上がり、エミヤが居るはずの丘を見上げた。
エミヤは、いつの間にか歌うのをやめ、丘の上の木に手を当てている。
金色の長い髪が髪飾りを外しているせいか、いつもとは違う風に見えた。
ピンクの瞳も、ここからでは赤に近いように見えた。
「見とれてるの?」
横目に、微笑む…というよりはニヤニヤしているユウヤの顔が映ったが。
俺は気にせずエミヤを見続けた。
「ああ。」
そう呟くように言うと、エミヤの居る丘の方へ向かった。
「……………えっ?」
後ろでアホな声を立てるユウヤの声が聞こえた。
書き終えて余裕綽々で居て
プロット確認してみたら、めちゃくちゃ脱線してて慌てて書き直したという…。
あれだね。
課題終わったと思ってたら、終わってなかったパティーンの学生の気持ちです。




