表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異端のLegitima   作者: 瑞希
『樹木の導き』
39/100

『神の鴉』

音澤おとさわ 愛雅えみや

アンノドミニ:1999年生まれ、性別女。

聖神中学に在校、両親ともに行方不明となり死亡扱い。

唯一の親戚、祖母も5才に他界。

それ以降は遺産で過ごし中学生になると芸能の道へ進み、収入を得る。

火砕がさい家とは、祖母が存命の頃からの付き合い。

祖母の死をきっかけに、同棲を始める。

元の家は操辻の管理下へ移る。


…悲しい人ですね。


………。


そうは思いませんか?


…陛下が仰るのなら。


私は貴方がどう思うのかを聴きたいのです。


……私はこの者は幸運だと思います。


どうしてですか?


…恵まれているからです。

人に。


確かに、そうですね。

そもそも、生まれてきただけで恵まれていますね。


はい。




「…タ、イガ」

突然自分の名を呼ばれ、俺はビクリと肩を震わせた。

起こした…のか?


冷や汗をかいてしばらく息をするのも忘れていたが、どうやら寝言だったらしい。

寝言で俺を呼ぶって…、それはそれで恥ずかしいな…。

どんな夢見てんだか。

表情は穏やかに見えるし、心配することはない…んだろうが…。

ま、まあ、他のやつの名前が出るよりは良い。

ユウヤとかな!

部長は、あ、もう部長じゃないのか。

ハヤテ先輩は、多少は目をつぶろう。

…つぶれるかな。



…はぁ………。

こんなところで油うってないでさっさと部屋に戻ろう。

エミヤの部屋から物音がした気がして、慌ててきてみたが特に異常は見られない。

…朝まで居たって良いのだが、エミヤに説明しにくいし、俺が大丈夫な気がしない。

よし、帰ろう。

このままではエミヤが危険だ!

もっとも、俺にそんな根性はないはずだが。



…………!!!!



瞬間、窓を睨み付けた…が、そこに姿はなかった。

気配…確かに感じたと思ったんだが………。

気のせい…か?


不審者?

悪魔?

…………………夜明けまではドアの外に居よう。






「って…、あれ?

 タイガ起きてたんだ。」

タイガを起こしに来たエミヤは、驚いた。

珍しく、タイガが既に起きて着替えていたからだ。


「夜更かしした…。」

眠そうな顔で言ったタイガに、エミヤは呆れ半分に吹き出した。


「もう。

 授業中寝たりしないでよ~」

タイガを起こすのは毎日の習慣だった。

しかし、今日はそれが必要ないことにエミヤは微かに落胆していた。


「寝たら起こしてくれー」

眠そうにそう言ったタイガに、エミヤは拒否の意味を込め、無言で下へ向かう階段に足をかけた。


「なあ」

「ん?なに?」

タイガに後ろから話しかけられたエミヤは、階段から落ちないようにしながら答えた。


「昨日なんか、物音しなかったか?」

「昨日…?

 ってそれ、何時の話?」

下に着き、考えを巡らせたエミヤはすぐにタイガが夜更かししていたと言ってたことを思いだした。


「えーっと…たぶん2時か3時」

「寝てたよ。」

「そりゃそうだわな…。」

頭を掻きながら考えている様子のタイガに、エミヤはさらに聞いた。


「そんな大きい音だった?」

朝食をとろうと椅子に座りながら聞いたエミヤに、タイガも同じように座りながら首を振った。


「いや、音事態は大きくなかったが。」

タイガの答えに、エミヤは少し間を置いて、少し震えた声を出した。


「…やめてよ。」

「ん…?」

タイガはエミヤの声に、何事かと少し身を強張らせた。


「私がお化け怖いの知ってるでしょ!!」

「お…おお。」

必死に言ったエミヤに、タイガは驚いてから安心したように苦笑いを浮かべた。


「もう…。」

タイガの気のない返事に少し不機嫌になりながら、

エミヤは自分を落ち着かせようと、深く息を吐いてから朝食に手をつけようとした。


「わぁっ」

「ヒッ」

突然大きめの声を出したタイガの声に、エミヤは肩を縮こませて怯えた。


「ぷっ」

「タイガ…!」

エミヤの驚きっぷりに、タイガは思わず吹き出し、そんなタイガをエミヤは涙目で睨んだ。


「すまんすまん…っ。」

タイガは笑いを堪えながら、謝った。


「許しません!」

そんなタイガの謝罪に、エミヤは余計にねた。


「でも、幽霊ではないと思うから。」

「ふんっ」

そんなこと今さら言われても、驚かされたという事実にエミヤは腹に据えかねていた。




「それは、タイガさんが悪いですね。」

「うっ…」

放課後になっても、未だにまともに話せていないタイガは、後輩であるセツナに相談したが、当然セツナが励ますようなことはせず事実を素直にのべた。


「しかし、まだ許して貰えてないのですか?」

「たぶん…?」

セツナの言葉に、そういえば特に話しかけたりはしてないなとタイガは自信がなきなってきた。


「エミヤさんが根に持つタイプとは思えません。

 単に話すことがなかったのでは?」

セツナの言葉に、タイガはそれはそれで寂しいな…と苦笑を浮かべた。


「でもそうだな。

 …そうだと良いなぁ……。」

セツナの言葉にタイガは一瞬、明るくなった、

が、放課の時間なんていくらでもあったのに、一言も話してないことを思いだしたタイガはまた暗くなった。


「タイガさん。」

「ん?」

セツナはタイガを正面からまっすぐ見た。

そんな改まったような態度に、タイガも思わず正面を向いた。


鬱陶うっとうしいです。」


「……酷くね?」

後輩である…はずのセツナにズバッと正面から言われたことにタイガは涙目になった。



「ごめんね~、遅れちゃって。」

志保と碓氷がエミヤとユウヤと共に現れた。

二人は先生に放課後になって早々に呼び出されていた。

理由は知らさらてはいないが、この二人ということはおそらく兄妹関係のなにかなのだろう。


「なに話してたんだ?」

「うん。

 兄妹なのを学校に言うかとか、そんなの。」

タイガは朝喧嘩していたのも忘れて、エミヤに問いかけると、エミヤは普通に返した。


「……言うのか?」

「ううん。

 目立ちたくないし、こっちからは言わない。」

「そう、なのか?」

タイガは安心したような顔をしたあと、複雑そうな顔をして言った。


「うん。

 証明しょうめいもしにくいから。」

「…確かにな。」

ユウヤが実際に兄なのかどうかも本当のところは分からない。

それにそうだったとして、ユウヤは魔界から来たと言っているのだ。

携帯を買ったと言っていたが、どうやって買ったのか…。

そもそも、戸籍はあるのだろうか…?

そうなると、どうやって学校に入学したのか…。


「それで、最近増えたと思ったら

 また減ってきたから、どうしよう?」

「ど、どうしよう…?」

志保はお茶目に、エミヤたちに聞いた。

主語はないが、察するに悪魔の事なのだろうが、おおざっぱな質問にエミヤは戸惑った。


「高校生組も復活したからな。

 今は高校生組の方が強いだろう。」

ハヤテとサキアが卒業し、高校生に入った今は高校生組は五人となり異端ゼノは三人となっている。

一方、中学生組の異端ゼノはエミヤ一人だ。

ユウヤが入ったため、ユキカが居ればギリギリ同等だっかもしれないが…。

元々高校生組の方が年齢は上だったが今となっては力も上だ。


「それでしたら、大学生組、幼稚園組と会いませんか?」

「やっぱりそうよね。」

セツナの提案に、志保もそのつもりだったのか素直にうなずいた。


「大学生組の方を推奨します。」

「じゃあ、アリアちゃんの方にしましょうか!」

セツナの言葉に、志保は安易にうなずいた。


「アリア、ちゃん…?」

「一人しか居ない、大学生組の奴の名前だ。

 ケイの姉でもある」

「あ、え、そうなのか。」

碓氷が冷静に言った言葉に、タイガは何気に驚いた。


「むしろ僕は、一人っ子が多すぎると思うけどね」

ユウヤの言葉の意味が、エミヤたちには分からず首をかしげた。


「ああ、全くもってお前の言う通りだ。

 能力者は生まれにくいし、生まれても能力レジが出る保証はないんだ。」

碓氷はユウヤに頷いてから、一人っ子が多い理由を話した。

一般的にも子供が生まれてくるのは、奇跡以外の何でもないが、特異な力を持っていればそれはより一層だ。

生まれた命の価値に差はないが、生まれてくるまでの過程などには差があるものだ。


「案外、世知辛いんだな。」

「そういうもんだろう。

 万能な物なんてこの世にはない。」

「その通りだな。」

ユウヤと碓氷は隣り合って、真面目な顔で語り合った。

身長差さえなければ、同年代の世間話を聞いているようだ。


「精神年齢おっさんの二人は放っておきましょう。」

「そうですね。」

頷きあった、志保とセツナに碓氷とユウヤはバッと振り返った


「おっさんじゃないよ?!」

「俺がおっさんなら志保さんは…」

ユウヤは慌てて否定し、碓氷は言いかけた言葉を継ぐんで、明後日の方向を向いた。


「碓氷くん何か言ったかしら…………?」

「何も、何も言ってないです。」

笑顔で威圧をかける志保に、碓氷はいつもの冷静な顔に汗をにじませながら全力で首を振った。

そんな志保と碓氷を見て、エミヤとタイガは仲良いなぁと笑いあった。



「本当に仲良いのはどっちだろうね。」

ユウヤは、二人には聞かれないようにボソッと呟いた。


「羨ましいのですか?」

セツナはユウヤの隣に立ってそっと聞いた。

ユウヤは聞かれていたことに驚いて少し目を見開いたあと、

まさか。と笑った。


「僕は嫉妬しないよ。

 欲しいものがあれば、強欲に奪い取るのさ。」

「…」

ニコニコしながらも冷たい声でそう言ったユウヤに、セツナな静かに殺気を抱いた。


「大丈夫だよ。

 エミヤだけが、この世で唯一大切な訳じゃない。」

その殺意を感じ取ったユウヤは、微笑みながら言った。

それを見たセツナは一瞬抱いた殺気を溜め息と共に逃がした。


「…私は以前まで悪魔は絶対悪だと思っていました。」

「思って、いた?」

ユウヤはセツナの過去形の言葉に、ピクリと眉を動かした。


「はい。思っていた、のです。

 エミヤさんに会って、そして貴方に会って、分からなくなりました。」

セツナはいつにもなく、自信がないように言った。


「そうだね、僕も人間がこんな存在とは思いもしなかった。」

「…その発言を聞いてより一層分からなくなりました。」

ユウヤは微笑みながら、セツナに言った。

そして、言われたセツナは対称的に顔をうつむかせた。


「そうだね、僕も分からない。

 でも、悪魔は悪だよ。」

ユウヤはセツナの方を向いて、明確な確信を持ったように言った。


「ならば、私は貴方を殺さねばなりません。」

「もしもの時は、そうしてよ。」

セツナも、ユウヤをスッと見据えて言い返すと、ユウヤも同じように言った。


「…こうして知り合った人を殺せと?」

セツナはそのユウヤの言葉に眉を潜めた。

そして、ユウヤはそれを聞いて首を振った。


「人じゃない、悪魔だ。」

「…では、では、エミヤさんは…!」

的はずれな訂正に、セツナなキツく唇を噛み締めた。


「エミヤは特別だ。」

「そんなこと、言われても…!」

ユウヤの言葉に、セツナは一層眉のシワを深めた。

セツナは、ユウヤの言うことはどうしても受け入れられない。

それは、誰か一人を特別扱いする、ということがセツナにはどうしても許せないからだった。


「ごめん、そうだよね。」

ユウヤはセツナの頭を優しく撫でて謝った。

セツナはうつむいて黙って撫でられた。

何かを言いたくても、言葉が見つからない。



「おい、何話してる?」

そんな二人の沈黙を破ったのはタイガだった。


「何?

 タイガ、僕のこと気になるの?」

ユウヤはセツナを撫でていた手をサッと引っ込めて、タイガにニヤニヤと笑った。

そんなユウヤに、タイガはハッと鼻を鳴らした。


「お前がセツナに良からぬこと吹き込んでると思ってな!」

「うわっ、ねぇ、ちょっとエミヤ聞いた?」

腰に手を当てながら、堂々と言ったタイガを、ユウヤは告げ口しようとエミヤに声をかけた。


「へ?」

「あ、聞いてなかった…」

エミヤはキョトンとした顔で首をかしげた。

よく考えてみれば、タイガがエミヤの前で堂々とそんなことを言うわけがない。

ユウヤは諦めて溜め息をついた。


セツナは、そんな三人をスッと見据えて居た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ