『に』
おまけです。
「ね、ねぇ…エミヤ、どうしたんだと思う?」
お風呂から上がり、部屋に入った私たち。
アミは椅子に座ったまま微動だにしないエミヤを見ながらいった。
「わかんない…。
もしかして風邪…」
「そ、そうなの、かな…?!」
ヒナの言葉にアミはそうだったらどうしよう!と分かりやすく慌て出した。
「セイラちゃんはどう思う?」
「さあ…?
本人に聞いたら良いんじゃない?」
慌てるアミを放って、ヒナは私に意見を求めた。
ヒナも薄々は分かっているだろうに、と思いながらも私は答えた。
「聞いて大丈夫かなぁ…」
「あ、タイガに聞いてみようよ!」
アミは悩んだ末に、タイガなら理由も解決策も分かるかもしれないと提案した。
「良い案だね!
セイラちゃんも行こう?」
ヒナは明るい顔になり、私も誘ってきた。
「私は先に休むわ。」
「そう…?
わかった!」
私は髪を乾かし終わり、エミヤの隣の布団に入った。
ヒナは少し残念そうな顔をしたが、無理強いはしなかった。
「よし!こっそりね!こっそり!!」
「何かドキドキする~!」
二人はそう話し合いながら部屋を出ていった。
「主旨を忘れていない?
どちらでも構わないけど。」
二人が居なくなったのを見て、私は呟いた。
「エミヤ…」
申し訳程度に呟いたが、エミヤはやはり反応しない。
…あなたはみんなの為に、人の為に、他人の為に生きようとするけれど。
それでも、あなたの世界の中心は、やはりあなたを中心として廻るのよ。
その一番はタイガ。
解ってる?
失う前に気付きなさい。
後悔だけはしないで。
「忘れない」
私が確かに生きた、今日という過去の延長の今を絶対に忘れないために私は目を閉じた。
最後の瞬間までエミヤの横顔を見つめ…。
今日は良い日だった。
目を閉じる間際まで、愛しい人の顔を見られたのだから。
「あ…、あれ?!亜美?!」
男子たちがいるフロア当たりまで忍び込んだアミたちは、先生。
ではなく、孝彦と入也に見つかった。
「孝彦!は、解るけど入也くんまで!」
「そっち?!」
孝彦が脱走しようとしているのは、アミにとって想定の範囲内だったが、入也がいるというのは意外だった。
「やっぱり、タイガくんも変なの?」
「面白いくらいにね。」
「「やっぱり?!」」
ヒナと入也の言葉に、二人は同時に驚いた。
「そういうこと。」
「どういうことだ?」
「どういうことだろ?」
ニコッと笑う入也に、アミと孝彦は顔を見合わせ首をかしげた。
「「告白したぁぁぁぁあ?!!!?!?」」
アミと孝彦は再び同時に驚いた。
二人がこんな風に驚くことを予測していたヒナは、4人で施設の裏庭へ移動していた。
「だから、聞いて大丈夫かなぁ、って」
ヒナはセイラに言われ、渋ったことをそう説明した。
「あの下手れの代表選手みたいなタイガがなぁ。」
「なにそれ…。
でも告白されてエミヤがああなるって。」
孝彦のよくわからない例えにアミは目を細めてから、真面目な顔で言った。
「どうなってるんだ?」
「悩んでるみたいだったね。」
孝彦の疑問に、ヒナがアミに同意を求めて言った。
「うん。
普段なら二つ返事で断るけどね。」
「…結構ザックリいくんだな。」
エミヤの意外な言動に孝彦は少し驚いていた。
「てっきり、タイガが好きだからなんだと思ってたけど。」
アミは違ったんだ?と首をかしげた。
どうしても、エミヤはタイガが好きだと思うからだ。
「そうだと思うよ。」
「うん。」
ヒナと入也が言った。
「…じゃあ、何で悩んでるんだ?」
「……分からないことも、ないけどね。」
孝彦が意味がわからんという顔をすると、アミは少し考えてから言った。
「ん??」
「ま、単に好きとか解んないだけかもね。」
孝彦はアミを見て首をかしげたが、アミは話を切り替えた。
「ふーん。」
孝彦はわかんないなぁという感じで曖昧に答えた。
「僕は妃南のこと好きだよ」
「「ええ?!」」
入也の突然の告白に、アミと孝彦はまたも同時に驚いた。
「ふふっ。ありがとう。私もだよ。」
『え、なに、二人付き合ってんの?』
ヒナのあまりに普通な返しに、孝彦はコソッとアミに聞いた。
『知らない!初耳なんだけど!
…でも、彼氏いないって』
『お、おお、彼女いないって言ってたぞ…?』
ヒナにも入也にも、彼氏彼女はいないはずだと二人は混乱した。
『どっち?!どっちなの?!』
『ぬぁぁあ。…やめよ、考えんの。』
『…そうだね。やめよ。』
二人は頭を抱えて悩んだ末に、考えるのを放棄した。
ヒナと入也の二人は昔|(といっても出会って1年)からチョイチョイ分からない。
二人は溜め息をついてヒナと入也を残して撤収した。




