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異端のLegitima   作者: 瑞希
〔可憐なる氷姫〕
34/100

『側』

ガタンッ


エミヤはバスの揺れる振動で目を覚ました。

仕事続きで最近寝ていなかったため、エミヤはいつの間にか眠ってしまっていた。

今まで眠れていたのが不思議なくらいバスの中は大騒ぎだった。

本来なら非常識極まりないが、今回ばかりは仕方がないし誰にも迷惑はかからない。

今、エミヤたち中学2年生は野外学習のため貸し切りのバスに揺られている。

むしろ、その盛り上がりは揺らしているほどの勢いだ。


『第9問!

 聖神学校、理事長の名前は!』

今はレクリエーション担当の生徒が問題を出しているようだ。

問題を出しているのは

エミヤの親友、榎本えのもと 亜美あみ

タイガの親友、ひいらぎ 孝彦たかひこだった。


『志野さん!』

シンキングタイムも無しに何故か、出題者の方から答えが出てしまった。

孝彦の奇行にバス中に笑い声が上がった。

このような調子でバスのなかは盛り上がっていたらしい。


「エミヤ、大丈夫?

 まだ時間はあるから眠りなさい。」

エミヤが横を見ると、たちばな 聖羅せいらが落ち着いた様子で座っていた。

特に煩そうにもせず、かといって楽しそうにもせず、まさに普段通りといった感じだった。


「ううん。大丈夫だよ。」

エミヤは煩さにも少しなれて、ちゃんと起きようと座り直した。


「これから忙しくなるわ。

 今のうちに休んでおきなさい。」

「…うん。わかった。」

セイラの諭すような言葉に、反論するのもどうかと思い、エミヤはもう眠たくはなかったが目を閉じて休んでおくことにした。




「エミヤ、着いたわ。」

その声にエミヤはハッとして顔をあげた。

驚きすぎて、勢い余って天井に頭をぶつけてしまった。


「大丈夫?

 焦らなくても平気よ。」

セイラが苦笑いをしながら、エミヤがぶつけた辺りを撫でた。

チラリと窓の外を見ると駐車場に停めているところだった。


「寝過ごしたかと思っちゃった~…。」

エミヤは普段見せない失態に照れ笑いを浮かべた。


「大丈夫よ。

 私が置いていくことなんてないから。」

「…それもそうだね」

エミヤは照れ笑いを少し残したまま、セイラに笑いかけた。


セイラの言う通りにそれから忙しくなった。

まずエミヤたちは昼食を取り、それから班別れ行動した。

エミヤの班のメンバーは、亜美あみ妃南ひな聖羅せいら泰芽たいが孝彦たかひこ入也いりやだ。

夜ご飯の時間になると、野外学習の施設に集まりみんなでカレーを作った。


「―遠き山に日は落ちて―」

まさに日は落ちて暗くなると、エミヤたちはキャンプファイヤーを囲み歌った。

いつの間にか練習していたトーチトアリングに目を輝かせた。

そして、体育の時間に少しずつ練習をしていたフォークダンスをみんなで踊った。


「エミヤ。」

「イリヤくん…?どうしたの?」

順番が変わると、イリヤは華麗なステップでみんなの輪からエミヤを連れ出した。

といっても踊らずにいる人はちらほら居るため、誰も気には止めない。


「ううん。

 話してみたいなと思っただけ。」

「そう、なの…?」

今まであまり話したことがなかったので、エミヤは少し驚いた。


「うん。どう?調子は」

「え…、普通だよ?」

イリヤは踊っているみんなを見つめながら、エミヤに言った。


「最近楽しかった事とか。」

「まさに今が楽しいよ!」

イリヤの言葉に、エミヤ満面の笑みで食いぎみに答えた。


「ふふっ。それもそうだ。」

イリヤは驚いた顔をしてから、エミヤに同意した。


「どうしたの、急に。」

驚いた顔も笑う顔も、ユウヤに似ている気がしてエミヤは余計に首をかしげた。


「ちょっとそういう気分になっただけだ。」

「そ、うなの…?」

取って付けたような片言の言葉に違和感を覚え、エミヤは戸惑って返した。


「エミヤってあんまりテレビ見ない人?」

イリヤは苦笑いを浮かべエミヤを見つめた。


「見るよ?タイガが…。」

「気を抜くとすぐにタイガが出てくるね。」

エミヤが答えると、イリヤは微笑み言った。

タイガの話が出ると嬉しそうにするところもユウヤに似ていると、エミヤまたは思った。


「すみません…?」

エミヤはついユウヤに言うような口調になった。


「ちょっと妬けちゃうな。」

タイガが。とイリヤはエミヤの耳元でボソッと呟いた。


「え?」

見てる。とイリヤはまた呟いた。

その呟きに驚いてエミヤがタイガの姿を探そうとすると、イリヤが顔を近づけてきた。


「ストーップ!黙ってみてれば…!!!」

「ほら見てた。」

「ほ、本当だね…」

キスしそうな体勢になると、タイガが鬼の形相で走ってきた。


「え、は、え?」

「ふふっ。お前達は本当に可愛いね。」

慌てるタイガに、イリヤはとても面白そうに幸せそうに言った。


「は…はぁ?!

 俺も入ってるのかよ!!」

自分まで可愛いと言われたことにタイガは文句を言った。


「ほら、フォークダンス放棄しちゃダメでしょ?」

「お前が言うか?!」

「じゃーねー。」

イリヤはタイガの話を無視して、フォークダンスに戻っていった。


「何だアイツ…。」

タイガは疲れた様子でため息をついた。


「タイガ、良い友達もったね。」

「は?どこがだよ…

 てか何話してたんだ?」

エミヤの言葉にタイガは嫌そうに言って、エミヤに聞いた。


「他愛もないことだよ。

 ほら、踊らなきゃ」

「おう。

 …お、おう。」

エミヤはタイガの手をとってダンスを踊り出した。


「結構上手だね~」

「話しかけないでくれ…!」

エミヤが気軽に話しかけると、タイガは足元を見たまま必死に答えた。


「…どうしよっかな~?」

「おいっ」

少しイタズラ心が湧いたエミヤにタイガはやめてくれと全身で訴えた。


「…タイガ、聞き流しててね。」

「……」

エミヤはそんな必死なタイガを見て言った。

タイガは足元を見たままダンスに必死な様子だ。


「私ねタイガのことすっごく大切なんだ。

 家族だから。

 絶対離れたくない。

 メグちゃんやヒロくんも家には居ないけど大切なの。」

「………。」

エミヤは踊りながら、キャンプファイヤーをじっと見つめ呟くように言った。


「でも、だけどね…。

 本当の家族も、大切に、したい…。

 どっちらか選ぶとしたら、って聞かれたけど

 選択肢はその2つしか、ないのかな…」

エミヤはモモナからの宿題を未だ片付けられずにいた。

タイガかユウヤか。

その二択に絞られた選択肢をエミヤは憂いていた。


「…」

「もし、本当に、どちらかしか選べないなら

 私は死ぬよ。」

エミヤはまるで家に帰るよ、とでも言うようにとても軽く言った。


「それも選べないんなら…」


「終わっちゃったね。」

エミヤが言い終わる前に、曲が終わりみんな踊るのをやめた。

夜の集いはこれで終わり。

あとは風呂に入り、就寝するだけだ。


「…エミヤ」

「聞き流してくれたよね」

なにか言おうとするタイガに、エミヤはなおキャンプファイヤーを見つめて言った。


「…………ああ。

 でも、俺はお前を取るから。」

「…ふふっ。

 好きな人じゃなかったの?」

とても真面目な顔で言ったタイガに、エミヤは全然聞き流してないねと笑いながら聞いた。


「ああ。

 お前だよ。エミヤ。」

タイガはエミヤのことをジッと見つめて言った。


「え…?

 えええええええ?!?!!?」

エミヤは珍しく驚きの声をあげた。

周りに居た人達は何事かとエミヤたちをジロジロと見つめていたが、すぐに先生から集まれと声が掛かり居なくなっていった。


「…じゃな」

タイガも驚きすぎて微動だにできないエミヤを残し、先生の元へ去っていった。

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