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異端のLegitima   作者: 瑞希
〔可憐なる氷姫〕
29/100

〔新中学生組〕

「改めまして、秋風あきかぜ 刹梛せつなです。

 よろしくお願い致します。」

セツナはいつも以上に、冷静に丁寧にエミヤたちに挨拶をした。


「僕は………仇篠あだしの、ユウヤ。」

「おいコラ!」

次にユウヤが名を名乗った瞬間、タイガが蹴りをかましたが、ユウヤはそれをさらりと避けた。


「っ…。避けんな!」

「無茶言わないでよ~」

ユウヤに避けられたせいで、バランスを崩し転倒したタイガが、真っ赤になりながらユウヤに文句言った。

そう言われたユウヤはニコニコとタイガをおちょくるように言った。

その、あまりに普通な会話(麻痺してる)にエミヤは肩から力が抜けた。

(もっと殺伐とした感じ(麻痺してる)になるかと…ドキドキしちゃった。)


「ユウヤさんは…、エミヤさんのお兄さん。と言う事ですか?」

「そうだよ。

 凄いね、どうして解ったの?」

セツナが遠慮がちに言うと、ユウヤは真っ先にセツナを見て優しく言った。


「仇篠はひいらぎ 志桜しおうさんが

 真綾さん、つまりエミヤさんのお母さんに付けたせい

 となると、その姓を受け継ぐのは、その子供だけと思いまして。」

「うん。その通りだ。

 キミは賢い子だね。」

ユウヤはセツナの淡々とした言葉を聞くと、満足そうに笑ってセツナを褒めた。

エミヤも素直に感心した。

と同時に、エミヤはここで初めて自分の母の名を知った。

それも、自分より一歳とはいえ年下の人間から。

仇篠あだしの 真綾まあや

それが、エミヤの母の名。


「えっと、柊 志桜さんって…?」

次にエミヤは、自分の母に苗字を着けた人の事を知りたくなった。

柊、ということは志保さんのお母さんだろうか。


「私のお祖母ちゃんよ。

 ちなみに、お母さんは志野ね。」

少し驚いたが、エミヤはそうなんだと頷いた。

志保さんが見た所、30前半頃だから普通と言えば普通だったかもしれない。


「ああ。でも、エミヤちゃんのお母さんが

 悪魔だって知ってる人は殆ど居ないから大丈夫よ。」

志保はタイガとユウヤに、仇篠と名乗っても何ら問題は無いと伝えた。


「え、そうなんすか?」

「ああ。

 知っているのは、枷家、神氷、力道、

 そして一緒に戦ってた奴の家だ。」

タイガの問いに碓氷が答えた。

その声こそ、調子は変わらなかったが、碓氷は途中から苦い顔になっていた。


「…結構多くないですか?」

「そうね…」

碓氷も志保も、タイガの言葉に頭を抱えて悩んでいるようだった。


「良いじゃないですか。

 どうして、ユウヤさんが私の兄と知られたらいけないんですか?」

「いけないって言うか…」

エミヤの珍しい物言いにタイガは驚き、志保も言葉を濁した。


「僕を快く思わない人も大勢いるんだろう。

 悪魔の血の流れた僕を。」

「そんなの…、私だって」

ユウヤの自分を卑下するような物言いに、エミヤは戸惑ったように言った。


「ダメよ、そうやって同調しちゃ。」

志保は頭を抱えたままの姿で、軽く言った。


「…志保先生?」

「人は誰しも違うわ

 貴方達だけが、違う訳じゃない。」

エミヤが驚いた様子で志保を見つめると、その視線に気づいた志保がエミヤとユウヤを見つめて、普通の事を言うように言った。

そして、解るでしょ?というように首をかしげた。


「ええ。千差万別です。」

「そうだな」

セツナの言葉に、碓氷が同意した。


「その所為で、嫌…苦手な方も出てきますが」

「そうだな!」

碓氷が何故か力を込めて同意した。

セツナにも嫌…苦手な人が居るように、碓氷にもそういう人が居るらしい。


「だから隠した方が良いかな、とも思うけど

 その分、好きって言う人も居るもんね。

 私もその一人。」

志保はユウヤにそういってから碓氷に視線を向けた。


「……………………少なくとも、嫌とは思わん。」

碓氷はかなり長い間と尋常じゃない汗を流してから、息を吐いてそう言った。

人に対して好き嫌いを言うのが余程苦手らしい。


「言わせてなかったかい?」

「まさか!

 ユウヤくんったら、面白い事言うわね」

ユウヤが微笑んで聞くと、志保も同じくらいの笑みを浮かべて言った。


「ところで、ナツカ先輩とユキカ先輩は?」

「ユキカちゃんが体調不良だそうよ」

タイガが気を取り直して志保に聞いた。


「そう言って、春休み中も来ませんでしたね」

「うん。て言うか、だからユウヤくんに手伝ってもらう事にしたんだけどね」

「そうなのですか。

 しかし、体調不良ならすぐ帰ってくるのでは?」

タイガの更なる問いに志保が言うと、セツナが首をかしげた。

大いに越したことはないが、態々頼まなくても良かったのでは、と。


「それがね…、おそらくだけど、体調不良じゃないと思うの」

「…どういうことですか?」

志保の言葉にセツナがいぶかしげに言った。

体調不良でないのなら、他に何があるというのだろう。

確かに、長すぎるが…。


「今日は、それを話そうと思ってね。」

志保はエミヤたちに席に座るように促して、お茶を入れ始めた。


「タイガ、最後に二人に会ったのはいつだった?」

「え、えっと…

 ああ、高校生組の時だ。」

碓氷からの問いに、タイガは戸惑いながら思い出して言った。

エミヤはその場に居なかったが、それ以外の旧中学生組と旧高校生組が合同で討伐しに行った時の話だ。


「俺も、その時だったと記憶してる。

 だから、カレンに何か知らないか、と聞いたんだ。」

「…カレンさんとは高校生組のリーダーです」

エミヤが知らないと思い、セツナがこっそり耳打ちした。

エミヤはカレンという人間自体の事は、菫から耳がタコになるほど聞かされていたが、能力者レジティーマに関することは知らなかった。

能力者であることはSMSのグループに居ることで分かっていたが、まさかリーダーだったとは。


「そしたら、カレンちゃん凄い勢いで謝ってきてね?

 いやー、ホント、凄い勢い…」

志保は遠い目で言った。

何か大変だったらしい。


「…何故、カレンさんが謝るのですか?」

セツナがいぶかしげに志保に聞いた。

タイガも信じられないという感じで志保を見た。

二人とも、カレンが謝るというのが信じられないのだ。


「タイガが洗礼を受けたとき、仇篠とマキリが言っただろう。」

「…はい。そうっすね。」

碓氷は当然のように忌み子とは言わなかった。

そもそも、仇篠の忌み子と呼ばれたこと自体を知らないのかは分からないが、タイガはエミヤの目の前でそう呼ばれずに安心した。


「…え!?」

「そう、そうなのよ…。」

セツナが一瞬間を置いてから、腰を浮かせて驚いた。

志保はその反応を見ながら、全員にお茶を配った。


「…?」

タイガは志保にお辞儀をしながら、何故セツナが驚いているのか分からず、首をかしげていた。


「私の事に関して、話したのはぶちょ…ハヤテさんとタイガだけ。」

「………ぁあああぁあああぁああ!」

エミヤの言葉に、タイガも間を置いてから驚いていた。

そして、ユウヤも納得したように手を打った。


「今の所、それくらいしかない。」

「にしても、苗字だけでよく分かったものだ。」

碓氷が溜め息交じりに言うと、ユウヤが食い気味で言った。

何故かは分からないが、不信感を持ったようだ。


「二人の両親も、一緒に戦ってたのよ。」

志保がその不信感を解くために微笑みながら言った。


「そうなのか…」

「私たちもね」

志保は更に自分と碓氷もだとユウヤたちに伝えた。


「私の両親もです。」

セツナは更に付け加えた。

この事に関して、タイガは知っていたが、ユウヤはもちろんエミヤも知らなかった。


「じゃあ、一緒に戦ってた人ばっかりなんですね」

「そうねぇ。

ま、子作りのタイミングは大体一緒ってこと」

志保が更にエミヤに返すと、納得したように手を打った。


「こ、子作りって…」

「そんな、身も蓋も無い…」

タイガと碓氷が、それぞれエミヤと志保を見て言った。

事実ではあるが確かに身も蓋も無い。


「相手も限られますからね。」

「当然と言えば当然だね」

セツナとユウヤはお茶を飲みながら冷静に言った。

エミヤはこの時間が楽しければ楽しいほど、ここにナツカとユキカが居ない事に、悲しさを感じていった。




マズイ。


そう気付いたのは、始業式の日だった。

マキリが言ってたアダシノという単語に何故だか聞き覚えがあって、どうせだからとナツカと一緒に春休み中にずっと調べてたら、とても日にちが経っていた。

ちなみに成果は得られていない。

知ってそうな人がたまに居ても、みんな嫌な顔してしらばっくれる。

エミヤに聞くのが一番早いんだろうけど、知らないんだろうし。

忌み子って言ってたからにはきっと、悪い事だ。


話は戻すけど、このまますっぽかし続けてたら、マズイのだ。

僕が怒られるだけなら最悪構わない。

でも、水の王である僕たちが休んだとなると、清水家…はたまた水の家系全ての品格が疑われてしまう。

今はまだ両親にもばれてないけど、このままじゃ…。


分かってる…、

それは分かってるんだけど。

正直、僕に隠し事してるかもしれない人と戦いたくない。

害虫駆除なんて言うけど、本当に、本当に下手をすれば死ぬことだってあるのだ。

現に死なないまでも、僕やハヤテ、セツナ、ハンナは何度も入院した。

ハヤテにも立場があるのは分かってる。

操辻家次期当主として、異端ゼノの家系として、柊家や他の家の決定には逆らえない。

分かってるけど………………。


とはいえ、清水家の地位が危うくなるのはマズイ。


「やっぱり、僕だけでも行くよ。

 それで文句は無いはずだ。」

僕と全く同じ声で言ったのはナツカだ。

ずっと背中合わせでいたから、同じ事考えてたんだ。


「じゃあ、僕はその間…」

「うん。調べて。

 能力レジ使ったって良いから。」

僕はナツカに体重をかけながら言った。

水の能力じゃ何も出来ない。

風や操辻みたいな事は逆上がりしたって出来ない。


「水じゃ何も出来ないよ」

「操辻だって、先代から出来るようになったんだ。」

ナツカは僕に体重をかけ返して言った。

そりゃ、元々出来る家系だったんでしょ。

水でどうやって…。


「望めば出来るよ」

「わっ」

更に体重をかけ返そうとしたけど、ナツカが立ちあがった事でそのまま倒れた。


「そんな夢みたいな事」

「夢でしょ?」

僕が頭を掻いてから、ナツカに手を伸ばすと僕は引っ張られ起き上った。

確かに、能力レジ自体、夢みたいな力だけどさ…。

ま、ナツカが言うなら試してみようか。


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