〔高校生組〕
「あっれぇー、仇篠の忌み子はー?
まさか遅刻ぅー?」
学校に着き、部長達と共に悪魔が居るらしい、大きい公園まで向かった俺は唖然とした。
癖のある声で男の人が言った、その言葉が高校生組の第一声だったのだ。
「は………?」
俺はあまりの驚きに何も言葉が出なかった。
聞き間違いではないかとさえ思った。
「ああ、君は火の子かぁ。
仇篠の忌み子と一緒に入ったらしいけど、
君も大概怪しいよねぇ…?」
聞き間違いじゃなかった。
こいつ、エミヤの事を『仇篠の』でもなく、『闇の子』でもなく。
忌み子って、忌むべき子って言いやがった。
愛し子の間違いだろうが。
何が忌み子だ!
エミヤの力に頼った癖に!
エミヤの母を利用した癖に!
裏切った癖に!
「俺の事、どうこう言おうが構いませんけど、
エミヤの目の前でんなこと言ったら、ぶん殴ります…」
俺の事はどうだって良いが、こいつはエミヤの事を言ったのだ。
いっそ殺してしまいたい…けど、ダメだ。
俺もセツナのことを見習わねば。
「ぷっ………あははっ。
良いわ。合格。
君の事は信用してあげる」
さっきまで黙っていた女の人は突然笑って、俺の目を見て言った。
「はい……?」
あまりの驚きに、怒りも忘れてしまった。
何で笑ってるんだこの人。
信用って、何の話だ?
「よかったぁ……。
よぉし!高い高いしてあげよう!」
もう一人の少し大柄な男の人が俺を軽々と持ち上げ高い高いをした。
子供扱いするな!と突っ込みたいところだが、この高い高いがまた結構怖いのだ。
頼む。降ろしてくれ…。
違う!投げないでくれ…!
「はぁ…。
この御三人方はな。
新人が来ると、とりあえずイビるんだ。」
「はい!?」
え、今のが、全部新人イビり!?
どう考えても度が過ぎてるだろ!
「誰が敵で、誰が味方か、判んないからね?
いやいや、ごめんね!
半分冗談だよ!あんまり怒らないでよ!」
最初に言っていた男の人の言葉からはすっかり癖が抜けた。
コイツの言うことはもっともだ。
俺が目指すべき姿勢でもある。
が、言われたこっちは堪ったもんじゃない。
それに…。
「半分…って」
しかも、半分冗談と言うことは、もう半分は冗談じゃないと言うこだ。
どこが冗談で、どこが冗談じゃないのかは分からないが。
「あと、君には悪いけど
音澤 愛雅の事は、まだ信用できないわ。
事故にあったんですってね。
次に会う時、試させてもらうわ。」
この人は忌み子って呼ばない…。
それとも、俺の本性を炙り出すために男の人はわざとそう呼んでたのか…。
「………」
と言うことは、試すときにエミヤを忌み子って呼ぶつもりか…?
忌むべき所なんて、エミヤには何一つありはしないのに。
「“ぶん殴る”のはマキリだけにして頂戴ね」
女の人は俺の心情を読み取ったのか、おどけるような声と、真面目な声で言った。
「はい」
「いや、了承しないで!?」
大真面目に返事したらマキリと呼ばれた男の人が大袈裟に驚いた。
なんかイメージ的にピエロみたいな人だ。
「自己紹介がまだだったわね
私は神氷 懸憐、で氷
1年だけど、リーダーよ」
「スルーしたね、カレン。
同じく1年。蕾凰 真霧。雷ね」
「ははっ。俺は大石 陸穂で土だよ。
2年で、副リーダー。
痛くしないであげてね、タイガくん。」
高校生組は3人同士で喋りながら自己紹介をした。
2年のリクホ先輩を差し置いて、1年のカレンがリーダーとは。
てか、カレンって菫さんの友達の…。
何か思ってたのと違うぞ!?
むしろ、リクホ先輩が友達なんじゃないのか?
「カレン、菫さんって知らないよな?」
「は?」
あ、良かった。
やっぱり、人違いだったみたいだ。
そうだよな、あの優しい菫さんの友達はもっと、こうふわふわした…。
ふわふわと言えば、急に雪が降ってきたな。
「何で、あんたが、菫を、知っているの?」
途切れ戸切の言葉を不思議に思いながら、ふと顔をあげるとカレンの周りが小さな吹雪のようになっていた。
…なんで能力使ってんだ?この人。
「エミヤが事故って、たまたま!」
「あんたに聞いてない!!!」
ユキカ先輩が俺の前に立って焦ったようにそう言うと、カレンはユキカ先輩に向かって吹雪を起こした。
「ユキカ!」
ユキカ先輩の姉であるナツカ先輩が横に立って、妹だけでなく俺まで守ろうとした。
そして、リミッターを外そうと構えた。
「ちょっ、何で仲間に向かって能力を…!」
「私の質問に答えなさい!」
ユキカ先輩は尚も俺を庇うように前に立っている。
おそらく、ナツカ先輩はそのせいで、応戦しようとしているのだろう。
これは…マズイ。
何で、急にキレだしたんだ?
とりあえず、答えとかないともっとマズイ気がする。
「ユキカ先輩の言った通りだ。
エミヤの病室が菫さんと同じだった!それだけだ。
偶々かどうかは俺もエミヤも知らんがな!」
これが、今思ってる全てだ。
監視しなければならない対象を集めるのは当然だ。
そういう意図があったとしても、何ら不思議はない。
カレンだって、バカじゃないだろう。
「カレン。リミッター、取れかかってる。」
「リクホ!あんた知ってたの!?」
カレンは自分に伸ばされたリクホ先輩の手を、煩いと言わんばかりに叩いて叫ぶように言った。
「…知らないよ。エミヤちゃんが事故に遭ったのは、つい一昨日だろう?」
リクホ先輩は眉を寄せて悲しいような困ったような顔で言った。
「ハヤテ!」
リクホ先輩の言葉にカレンは俯いて、顔を伏せたまま部長を呼んだ。
「もう知ってると思ってましたし、
今日言えば良いと判断しました。」
部長が仏頂面の、もろ不機嫌な声で言った。
そうだった。部長は仮にもエミヤの兄なのだ。
エミヤが疑われていい気はしないだろう。
「…そう。」
カレンはふっと息を吐くと、首のチョーカーを着け直した。
どうやら、それがリミッターだったらしく、吹雪は一瞬で消えた。
「音澤 愛雅…」
「カレン…先輩」
カレンは感情の読めない声と顔でエミヤの名を呼んだ。
サキア先輩は心配そうに呼ぶと、カレンは至極不適に笑って見せた。




