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異端のLegitima   作者: 瑞希
〔菫の幻想曲〕
23/100

〔君が望むなら〕

「ふふっ」

「それでね?」


病室に向かうと、中から話し声が聞こえてきた。

サキアさんはノックをして、扉を開けた。


「こんにちは」

「ども」

「はい、こんにちは」

「こんにちは。すみません、ありがとうございます」

性格出るなぁと思いながら、俺はエミヤの荷物を置いた。


「ありがとね、大変だったでしょ?」

「そんな大した事はしてないぞ」

実際荷物をまとめたのはサキア先輩だ。

俺は荷物を運んだだけ。

お礼を言われるような事でもない。


「そう?

 あ、ご飯食べた?」

その言葉に、俺は一瞬目を泳がせた。

いや、食べたんだが、インスタント…。


「た…べたぞ」

「…何?その間は?」

エミヤはにこっと微笑みながら言った。

その微笑みはすごく怖いぞ。


「いや、食った。食った。

 それより、漫画とかゲームも入れてきたぞ。」

「え、本当!?ありがとう!」

エミヤはたちまち笑顔になって俺にお礼を言った。

これで、少しは暇をつぶせるだろう。

菫さんも居るんだから、二人で出来る方が良いな。


「菫さん、ゲームとかやりますか?」

サキア先輩と話している菫さんに話しかけた。

俺のゲーム機を貸せば二人で出来るはずだ。


「え?うーん、あんまりやった事ないけど」

「やります?良かったら貸しますけど」

「ホント?ありがとう」

「じゃあ、一旦戻ります」

いつもなら持ち歩いているのだが、今日は何故か持ってこなかった。

どうせ病院に行くのだから、やらないと思っていたのだが、持ってこればよかった。


「また今度で良いわよ」

「そうっすか?

 じゃ、明日帰りに持ってきます」

どうせ、明日は高校生組と会う事になっているのだ。

帰りによれば良いだろう。


「ありがとうね」

「いえ」

二人はどうやら、仲良くなったようだし、それなら、二人で楽しんでもらいたい。

菫さんの友達の高校生組のカレンなら、その人も良い人なのかもしれない。

部長ががんばと言っていたのが引っ掛かるが、菫さんやエミヤのためにも頑張ろう。


「そういえば、ユウヤさんが来てたよ」

……………………は?

あいつ、勝手に来てたのか。

探してたやつを見つけたらそりゃ会いたくもなるんだろうが。

ともかく、エミヤが無事で本当によかった。

出来れば出禁にしたいが。


「あと、携帯買ったんだって

 連絡先も貰っちゃった」

もう一度言う。

は?

何で馴染んでんだよ!

このまま、居座る気なのか?

ていうか、魔界から来たんだろ?

どうやって買ったんだよ!

と、言いたい所だが、エミヤにはユウヤの詳細を教えて居ない。


「ユウヤさんって、本当にお兄ちゃんなのかな」

現時点で確信は出来ないが、少なくともエミヤの母の物を持っていたのだから、関係者ではあるのだろう。

それも、おそらく血が繋がっている。

エミヤにとって、部長よりも近しい存在のはずだ。

これは血に関しての話だが。


「そうだったら?

 お前は血の繋がった家族と暮らしたいか?」

サキア先輩が目を見開いたのが視界の端に見えたが、エミヤには見えて居ないはず。

こんな機会にしか聞けない事だ。

この場に部長や志保先生が居なくて良かった。

例え、それがどんな答えでも平気だ。


「うーん。そうだったら良いなとは思うけど…。

 一緒に暮らしたいとは思わないかなぁ。

 タイガも心配だしね」

エミヤはおどけるように言った。

身構えていた分、俺は可笑しくって、少し吹き出してしまった。

エミヤにとって、ここはとても大切なのだ。

解っていたつもりだったが、エミヤの口から直接聞けて良かった。

それなら、ユウヤなんかにそれを渡す必要はない。


「ははっ。そうか!」

「うん!って何で笑ってるの?」

エミヤはいぶかしげに俺を見てから、つられて笑った。

視界の端で、サキア先輩がホッと胸をなでおろしている。

別に、能力者レジティーマのためにこうしてる訳じゃない。

そういう反応を取られるのはシャクだが、エミヤが望むんなら構わない。


「…で、ユウヤの連絡先は」

「え、知りたいの??」

エミヤよ。何故ニヤニヤしているんだ。

俺がユウヤと仲良くなりたがってると思ってるのか?


「あのなぁ、俺とユウヤは仲良くはならんぞ?」

「えっ!?」

俺がそう言うと何故か、菫さんの方から驚きの声が上がった。


「えって、え?」

「ううん。てっきり、仲良しなんだと…」

俺とユウヤが?

まさか、有り得ない。

というか気持ち悪い。

アイツと俺が仲良く笑ってるとこなんて、想像できないし、したくもない。


「何か、タイガくんのこと話してるときは、

 こう…ねぇ?」

「あ、はい。何と言うか、

 素直…になってた気がするよ。」

エミヤは良い言葉が見つかったという感じに笑った。

素直って…。

なお気持ち悪いわ!

気持ち悪いを通り越して、もはや不気味だ。

うっ。寒気が…。


「も、もう良いです。

 あんまり聞きたくない…。」

ただでさえ気持ち悪いのに、何でエミヤに会いに来てまで、アイツの話を。

ましてや、エミヤの口から聞かなければならないのか。

何の罰ゲームだ。


「えー?ユウヤさんは

 結構楽しそうにタイガの事話してたよ。」

「勘弁してくれ…。」

エミヤはつまらなさそうに口をすぼめたが、それ以上はユウヤのことを話さないでくれた。

ユウヤは信用ならない敵なのだ。

少なくとも、今の所は油断してはいけない。


「そろそろ、帰ります

 長居して無理させても悪いですから」

「そう。バイバイ」

サキア先輩は菫さんにお辞儀をしていった。

確かにそうかもしれない。

菫さんには少なからず負担がかかるのだろう。


「じゃあ、俺も帰るよ、またな。

 菫さんも、また来ます。」

「…ええ。

 ゲーム待ってるわ!」

菫さんが親指を立ててキリッと言ったので、俺も親指を立ててグッジョブで返した。


「サキアさん、ご迷惑をおかけします。

 今日はありがとうございました!」

「ふふっ。頼ってくれて嬉しいわ

 また来るわね」

エミヤはベッドの上で頭を下げてサキア先輩を見送った。

俺も菫さんに軽くお辞儀し、病室を後にした。


あと、何年もつか


サキア先輩の言葉を思い出しながら、俺は今にも消えてしまいそうな、幻想のような少女のことを考えていた。

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