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異端のLegitima   作者: 瑞希
〔菫の幻想曲〕
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〔魔界の使者〕

「エミヤちゃん!」


青ざめた顔で病室に入ってきた女性。

特殊能力部顧問であるひいらぎ 志保しほ先生だ。

息を切らしながらエミヤを呼ぶその声は、少し震えている。


「志保先生…」

俺が力無くそう声をかけると

志保先生はハッとしてこちらを見た。

よほど焦っていたのか、

俺の横にいるユウヤに今気づいたようだ。


「タイガくん!と、誰…!?

 それより、エミヤちゃんは…!?」

「志保さん!病院です。落ち着いてください」

病院内で大声で騒いでいる志保先生を

後から追いかけてきた、

同じく副顧問の碓氷うすい 海翔かいと先生がなだめた。


「タイガ!エミヤは…!」

碓氷先生の更にその後ろから

部員で二年の清水しみず 懐架なつか倖架ゆきか

三年で部長の操辻あやつじ 颯天はやて、副部長の千里せんり 咲空さきあが入った。


いつもはやる気が無さそうにしているハヤテも

珍しく焦ったように言った。

そう言う所を見ると、部長は妹であるエミヤを

大事に思っているのだな、と思う。


「ま…さか……。嘘でしょ………?」

ユキカ先輩はエミヤの寝顔を見て声を震わせながら言った。




「うん、嘘だよー!」

今までの空気を思いっきり引き裂く

能天気な声が病室に響いた。


「え…」

その声に病室は静まり返り、

声の主にがいるカーテンの向こうに視線が集中した。


「ただ眠ってるだけ~」

「な…、なぁんだ…。

 心臓止まるかと思ったぁ」

ユキカは自分の早とちりか…と胸を撫で下ろした。

その隣でナツカもひっそり胸を撫で下ろしている。


「てか、誰だ」

ハヤテは空気を切り裂いた張本人と

ユウヤに向かってそう言った。


「ごめん、誰かカーテンを…」

自力ではカーテンを開けられないらしい。

その声を聞いてサキア先輩がカーテンを開いた。

そこに居たのは高校生くらいの、か弱い雰囲気を持つ人だ。


「あ、すみれさん…!

 そっか、ここ305号室…!」

「ええ。サキアちゃん、こんにちは」

サキア先輩と菫さんは知り合いだったらしい。

菫さんは高校生のはずだが…。

中学校で同じだったのだろうか。


「えと、菫さんも?」

俺は重い頭を何とか持ち上げ、努めて明るい声で言った。

部長は俺の言わんとしている事が解ったのか、

軽く首を振った。

どうやら、能力者レジではないらしい。

それなら、一般人。

言い方は悪いが、ユウヤの紹介をするうえで邪魔だ。


「で…、そっちは?」

能力レジ関連。」

ユウヤが自ら自己紹介をする前に、

俺は小さめの声で短くそう言った。

理解してくれたようで、すみれさんとユウヤ以外の全員が目を見開いた。


「…レジ?ああ。

 ちょっとお散歩してくるわ。」

「あ…、すみれさん。」

菫さんは何かを理解したのか、

手すりに捕まりながら、ゆっくりとベッドから降りた。

サキア先輩はそんな菫に気遣うように声をかけた。


「何時間くらい歩いてたら良いかしら…?」

「…一時間ほど」

「解りました」

ドアの前で振り向かず、

ひとり言のようにそう言った菫さんに志保は目を閉じて答えた。


「これ…。解るかな」

部長は眉間にシワを寄せ、疑いの目でユウヤを見ていたが

ユウヤが胸元にかけている懐中時計を見て目を見開いた。

エミヤの言った通り、部長は何か解ったようだ。


「おまっ、それ…」

「…母のもの」

ユウヤが言うや否や、

ハヤテはリミッターを外し突然、攻撃態勢に入った。


「ちょっ、ハヤテなに急に!?」

さっきまで黙って見ていたサキアが

ハヤテを見て驚いて止めようとした。


「何しにきた」

ハヤテは怒っているのか、

低い声でユウヤを睨み言った。


「ハ、ハヤテ?落ち着きなって」

訳がわからず、ユキカも落ち着かせようとしたが

ユキカの兄であるナツカがそれを制した。


「ユキカ、あの人がエミヤちゃんの兄なら

 それは人間ではないという事に他ならないんだよ」

ナツカは優しそうな声音でそういったが

顔は真剣そのもの。

いつもは穏やかな顔をしているナツカの表情に

今の状況がどれだけ危険なのかが解った。

全員がハッとしてユウヤに視線を集めた


「まさか、悪魔………?」

驚いたようにそう言ったが

サキア先輩はすぐに平静を取り戻し

チラッとハヤテを見てからリミッターを外した。


「…確かに半分は悪魔だよ。

 でも半分は人間。エミヤと同じ、ハーフってことさ」

エミヤと同じ、という言葉に反応したが

それでも半分は悪魔ということだ。

全員が攻撃もできず硬直状態になっていた。

すると、志保先生がユウヤに向かって歩き出した。


「ちょっ、志保さん?」

碓氷先生が驚いて肩を掴み、志保先生を止めようとしたが

志保先生は笑ってその手を肩から外し、ユウヤの前に立った。


「…マーヤ先輩は元気にしてる?」

ユウヤはそんな志保先生の対応に

少し驚いた顔をして、困った顔をした。


「いえ、母…とは、

 殆ど会ったことが無かったので。」

「そう。じゃあ、

 あなたはどうしてこっちに来たの?」

志保先生は少し悲しそうな顔をしたが

すぐにまた戻り質問を変えた。


「…妹に会いに。」

ユウヤは少し考えてから

貫くような強い目でそう言った。


「解りました」

ユウヤの言葉を聞いた、志保先生の笑顔に

碓氷先生は苦笑いして頷いた。

二人のやり取りに、部長たちも

互いの顔を見てリミッターを元に戻した。


しかし、志保が誰にも悟られないよう、

密かに顔を曇らせていたのがタイガには見えた。

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