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異端のLegitima   作者: 瑞希
〔菫の幻想曲〕
18/100

〔俺の手じゃ…〕

「で?お前がエミヤの兄だと?」

「だからそうだと言っているだろう?」

タイガの飛び蹴りで大きなたんこぶを付けられたユウヤは、

特に怒る様子もなく、爽やかな笑顔で言った。


エミヤ、タイガ、ユウヤの三人は

近くの公園のベンチで話し合っていた。

エミヤとタイガが隣り合って座り、

ユウヤはタイガと敵対するように向かい合っていた。

といっても敵意を出しているのは、ほぼタイガ。


「んなもん、信じられるか!」

「そう言われてもなぁ…」

ユウヤは証明できるものがないと、困ったように言った。

見方によってはおどけているようにも見える。


「まあまあ…」

エミヤはこのままでは話が進まないと、

二人を…主にタイガをなだめた。


「あ!そうだ!証拠!」

ユウヤはパッと顔を明るくした。

ポケットから懐中時計を取り出し、それをタイガに見せた。


「これが、何の証拠になるんだよ…」

タイガがしばらく見てから呆れたように言うと、

ユウヤはまた困った顔をした。


「ダメかぁ…」

ユウヤの残念そうな声は無視して、

エミヤはボゥっと虚ろな目で懐中時計を見ていた。


「…本当にそうなら、

 部長さんの方が知ってると思う」

エミヤは懐中時計を見たまま口を開いた。


「…なんでだ?」

タイガが不機嫌そうな声のままエミヤに聞くと、

エミヤは、少し言い難そうに顔を伏せた。


「正確には、部長さんの…お母さん。」

そう言うエミヤの声が沈んでいたが、

言い終えるとパッと顔をあげた。


「私、なんか見覚えが

 あるような…無いような…。」

「すごく曖昧だな……」

タイガが目を細めて呆れたように言った。

エミヤはその視線をもろともせず、

タイガに期待のこもった視線を向けた。


「うっ、…わかったよ。

 取り敢えず部長に相談な。」

刺さらんばかりの強い視線に押され、

タイガは溜め息をついて折れた。


「じゃあ…、とりあえず、ケータイ番号教えろ。」

タイガはエミヤから視線を外すと、

またもや不機嫌そうに言った。


「けーたい、番号?」

ユウヤはまるで知らない言葉を、

投げかけられたように、困った顔をした。


「………ケータイ。持ってないのか」

タイガと同じようにエミヤも驚いた顔をした。

最近は携帯電話を持っていないほうが珍しいくらいだが

ユウヤは携帯電話、それ事態を知らないようだ。


「じゃあ、私の携帯番号教え、ムガッ」

エミヤは言い終わる前にタイガに口をふさがれ、言葉を阻まれた。


「まだ信用したわけじゃない。

 お前の住所を教えろ。」

あまりに失礼な態度に、

エミヤは怒ろうとタイガの手をどけた。


「うん、わかった」

しかし、ユウヤは怒る様子もなく、

エミヤがタイガに言う前にあっさり住所を書き始めた。


「行くぞ」

タイガはユウヤの住所が書かれたその紙を受け取ると、

用は終わったとばかりに、そそくさと公園から出て行った。

エミヤもユウヤにお辞儀してから、慌ててタイガに付いていった。


「やっと見つけた…。

 僕の可愛いエミヤ。」

二人が居なくなったあとで、ユウヤは微笑んだ。




「ちょっとタイガ!

 あまりにも失礼じゃないのっ?」

未だに不機嫌そうな顔をしているタイガに、

エミヤは目を細めていった。


「お前こそ、警戒心がなさ過ぎる。

 もう少し自分の立場をだな…」

「え…。それとこれとは、関係ないでしょ?!」

タイガの言う立場とは

ハンナも大好きな芸能人の“エミヤちゃん”の事だろう。

しかし、タイガがそんな言い方をするなんて珍しい。

何故かは解らないが、どうやら本気で怒っているらしい。


「大有りだ!

 ったく、目を離したらろくな事にならない」

「はぁ!?私がいつろくな事しなかったって?!」

だが、エミヤも意味の解らないことで怒られるのを

黙って我慢するようなタイプでもない。

少なくともタイガに対しては。


「いつもだろう!」

「いつもっていつよ!」

タイガもエミヤも睨み合って、互いに一歩も引こうとしない。


(タイガには迷惑かけてないし…。

 怒られてる意味が全っ然分かんない!)

エミヤの視界がぼやける。

エミヤは悔しさや怒りが涙になって溢れそうになった。

それを堪えようと、荷物をギュッと掴んだ。


「もういい!勝手に帰るから!」

「あ…。おい、エミヤ!」

後ろからタイガの声が聞こえるが、

エミヤは振り向かない、振り向けない。

もう、涙が零れてしまっているからだ。


(なんで…。

 ケンカなんて今までした事なかったのに…。)

エミヤは涙を人に見られぬよう、

下を向いて服の袖で涙を拭いた。


涙を拭いて視界がハッキリしてくると、

公園の方から来たであろうボールが、

エミヤの足元をすり抜けていくのが見えた。

続いて、ボールの持ち主であろう男の子が

ボールを追いかけて、赤信号の道路に飛び出してしまった。


「危ない!」

誰かがそう言った瞬間、

エミヤは頭で考えるより先に、

とっさに男の子に向かって動いていた。


「エミヤ!?」

タイガは目を見開いて、それを止めようとしたが、

タイガの手はエミヤには届かなかった。

今回は短かったので、

このあとすぐに番外編を投稿します。

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