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異端のLegitima   作者: 瑞希
『大切な君』
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『待望の力の重み』

「あー、めっちゃ疲れた…。」

ユキカは珍しく元気がない様子で飲み物を飲みながら呟いた。


「ごめんなさい…。私のせいで」

エミヤも息を整えるように深呼吸をして

全員に平謝りをした。


「エミヤさんのせいではありません。

 私の思慮に欠けていました…。」

「…二人とも悪くないわ。」

俯くセツナとエミヤに息を整えたサキアが優しく微笑んだ。


「そうそう、ハヤテが全部悪い。」

「何でだ。」

全責任を押し付けられたハヤテはじと~っとユキカを睨んだ。


「はい。ハヤテ先輩が悪い~。」

「お前らなぁ…」

ハンナもジュースで頭を冷やしながら、

適当にユキカに便乗して言った。

ハヤテは怒る気力もなく、ため息をついた。

そんな3人を見てエミヤは小さく笑った。


全員がこんなに疲れているのは

悪魔退治の作戦は予定通り成功したのだが、

想像以上に人が集まってきてしまい、

むしろ、人から逃げるのに苦労したからだ。


「エミヤさんって本当に人気なんですね」

一人だけ、涼しい顔を崩していないケイがにこやかに言った。


「ふふんっ。」

ケイがそう言うと何故かハンナが鼻を鳴らした。

初めて会った時のことも考えると、

ハンナは余程“エミヤちゃん“が好きなようだ。

エミヤはちょっと複雑に思えて苦笑いした。


「…あ。

 ソウダ。私、買イタイモノガ有ッタンダッター!」

ハンナはおもいっきり棒読みでそう言うと、

エミヤの腕をパシッと掴んで走り出した。


「…一匹とは限らんし、ちょっと見回り行くか。」

ハヤテは、ハンナとエミヤを

追って行く数人の人を目で追いかけながら言った。


「あ…。」

「そういうことだな。」

ハンナを不審そうに見ていたタイガは納得し、

ハヤテの言う通り、見回りという名の自由時間が与えられた。




「ハ、ハンナちゃん!?どこまで行くの!?」

ハンナはエミヤの問いにも答えずにどんどん走っていく。

人の前では話しにくいことなのか、

人通りの少ないところへと走っていっているようだ。

ハンナは人がほとんど居なくなった所でやっと止まった。


「ハンナちゃん…?」

「エミヤさん!アホ…じゃなくて、

 タイガさんは彼氏ですか!?」

振り向いたハンナは、エミヤの手を握り目を輝かせて言った。

てっきり自分の母親についてのことを聞かれる。

と思っていたエミヤは、ただでさえ驚く質問に余計に驚いた。


「…? えっ!いや、ち、ちがうよ!?」

「なぁだ。本当に違うんですね~」

ハンナは不満そうに頬を膨らませ、ため息をついた。


「柊のお祖母ちゃんから聞いて、

 ずっと、どんな人だろうって考えてたんです。

 それがエミヤちゃんだったなんて…!」

ハンナは手を組んであさっての方向を見ている。

柊のお祖母ちゃん。つまり志保の母に当たる人だろう。


「うちの家系は能力者の中でも

 異端。つまりゼノで、柊家とも関係が深いんです。

 エミヤさんもそうですよね」

異端ゼノ…だったと思う」

以前、ハヤテが言っていた言葉だ。

ゼノとは異端という意味だったらしい。

ハンナはエミヤの様子を見て、細かな説明をした。


エミヤの知っている家系の中では、

ひいらぎ家、神氷かみひょうり家、操辻あやつじ家、力道りきどう家、千里せんり家、音澤おとさわ家など、

火 雷 木 土 水 風の六大属性以外の

一部の能力レジ異端ゼノと呼ばれ、特に強力と言われている。


「へぇ…。ハンナちゃん詳しいんだね。」

「はい、最後の力業だった母には能力レジが出なくて、

 私に能力があると解った途端、

 みんな、大喜びで教えたんです」

ハンナは色んな人たちにとって、待望の娘だったようだ。

だが、そういうハンナはあまり嬉しそうではない。


「…ハンナちゃんは自分の“力”がイヤ?」

「イヤ…じゃありません!

 人を守るための力です。イヤだなんて…!」

「そう…?私には少し苦しそうに見えたけど…。」

ハンナは長いまつげを伏せた、否定も肯定もしない。

誇りに思う気持も、煩わしく思う気持も、

どちらも本当なのだろう。


「ハンナちゃんは優しいね

 でも、たまにはワガママ言ったって良いんじゃない?」

「………はい。」

ハンナはエミヤの言葉を噛み締めるように頷き微笑んだ。


「あ、エミヤ。」

聞きなれた声にエミヤは顔をあげた。

思った通りタイガが歩いて来ており、その横にはケイも居た。


「あれ、他のみんなは?」

「バラバラで行動してるよ。」

ハンナがケイトに聞くとにこやかに答えた。


「そ、そう。

 …じゃあ、四人でぶらぶらしましょうか!」

ハンナは少し赤くなってパッとケイから目を離した。

それを悟られまいとエミヤに視線を移し、元気いっぱいに言った。


「うん。そうだね」

「じゃあ、どこ行きます!?」

エミヤの了承を得たことにハンナは目を輝かせ、

どこからか持ってきた地図を見せた。


「あ、俺ゲーセン」

「ゲーセンって、やっぱり、アh…。」

「おい、今アホって言おうとしたろ」

「まっさかぁ~。御冗談を。」

ハンナはそうとうタイガをなめているらしい。

まぁ、客観的に見て、とても賢そうには見えないので仕方がない。


(タイガ、がんばっ)

エミヤは特にフォローすることもなく

心の中でそっと応援だけした。


「なにか買い物でもしましょう。

 小物入れが欲しいんですよね~。」

「あ、ハンナちゃん。前見て歩かないと…!」

「うわっ」

エミヤたちの方を見るため、

思いっきり背を向けて歩いていたハンナは

エミヤに忠告される前に男性にぶつかってしまった。

エミヤとの件といい、ハンナはよく人とぶつかる。


「………大丈夫かい?」

その男性は少し間をおいてから、

地べたに座ってしまっているハンナに手を差し伸べた。

しかし、ハンナはまるで凍ったようにピクリとも動かない。


「ハンナ?どうしたの?…体調悪い?」

ケイがすぐさまハンナに駆け寄り、顔が見えやすいよう屈んだ。


「なん…で…。」

「………ハンナ…?」

ケイがハンナに手を伸ばすと

ハンナは目を見開いて酷く、怯えた顔をした。

ケイはその反応に戸惑って慌てて手を引っ込めた。


「ハンナちゃん?」

エミヤの呼びかけにハンナはハッとした顔をして周囲を見渡した。

エミヤもふと顔をあげると、

そこにはもうハンナがぶつかった男性の姿はなかった。

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