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恋の予感

 続いて、属性魔法付きの魔ヶ珠を試す。

 これは、各属性ごとに2個ずつ買ってある。


 火1個目・・・小型のダチョウのような鳥。体高50センチ余り。足の爪がゴツい。

 火2個目・・・大きな虫。カミキリムシのようなフォルム。体長50センチ弱。


 土1個目・・・タコ。体長1メートルぐらい。大きさも見た目も、普通のタコ。

 土2個目・・・頭部が犬のような猿。コボルトというらしい。身長1メートルぐらい。


 風1個目・・・ずんぐりした鳥。あまり機敏そうではない。翼長1メートル。

 風2個目・・・これまた、コボルト。


 水1個目・・・ヒトデ。星形じゃなく、丸い身体から細長い触手が5本生えている。1本の触手の長さは1メートル近い。身体の直径は20センチぐらい。

 水2個目・・・クラゲ。傘の直径は2メートル。


 属性魔法付きの魔ヶ珠は、単体で使ってみたいような物はなかった。全て合成用になりそうだ。

 そして、お待ちかねの固有魔法付き魔ヶ珠である。


「まずは、これ・・・。って、これは何の魔法が付いてたんだっけ?」

「魔力増幅よ」

「ああ、ありがとう」

 キョウに礼を言いながら、魔ヶ珠を地面に落とす。

 

 ぼこり――――。


 盛り上がった地面が、速やかにケモノの姿に変化する。

 魚だ。

 古代魚というのだろうか。甲冑をまとったような、ゴツゴツした魚である。大きな口の中には、肉食獣を思わせる牙。体長1.5メートル余り。


「これは、何かに合成するの?」

「うん。魔法が使えるゴーレムに合成するのが賢いよなぁ」

 ユカの問いにしばらく頭を悩ませると、青志は何かを思い付く。

「よし。これだ!」

 青志が軽く興奮しながら取り出したのは、透明な青い魔ヶ珠。

「あれ? 他のと違うね、それ」

「実は、トワに怒られそうなんだけどさ――――」

「え?」


 青志が透明な魔ヶ珠を手のひらから落とすと、地面に到達する前に半透明なケモノへと変貌した。

 青みがかった、キツネに似たケモノだ。

「ウソ、霊獣!?」

「――――大クラゲ退治のとき、1回霊獣を出しただろ? あの後、この魔ヶ珠が残ってたんだ」

「えー、なんかズルい!」

「ごめん、ごめん」

 口を尖らせるトワに、青志は汗をかきながら手を合わせた。


「それで、その霊獣に魔力増幅を合成するんですね?」

「その通り」

 キョウが話題を変えてくれたので、返事をしながら、青志は霊獣を魔ヶ珠に戻す。

 霊獣の魔ヶ珠に魔力増幅の魔ヶ珠を合成すると、一回り大きな物へと変化した。


「ちょっとコストは大きくなっちゃったけど・・・」

 合成の済んだ魔ヶ珠に青志が魔力を流すと、予想以上に大量の魔力が持って行かれ、一回り大きくなった霊獣が出現した。霊獣ゴーレムは、他のゴーレムと違って、魔力をまとって肉体とするようだ。

 霊獣がフワリと宙に浮かぶ。

「うわ、大きくなったし、なんか存在感が濃くなったって言うか・・・」

 キョウが言うように、霊獣の身体が、半透明ではあるのだが、実体感を増しているように見えた。それが、魔力増幅の効果の表れなのかも知れない。


 更に青志が指示を送ると、宙に浮かんでいた霊獣の姿が、体長1メートル余りの古代魚へと変化した。

「ほえっ!?」

 頓狂な声を上げたのは、ユカだ。

 そのユカの目の前を、半透明な青い古代魚が悠然と泳いで行く。

「魚が、宙を泳いでる!」

「霊獣ならぬ霊魚ってとこだな」

 合成のできに満足すると、青志は霊獣ゴーレムを魔ヶ珠に戻した。


「残り3個だな。・・・で、これは?」

 次に取り出した魔ヶ珠をキョウに見せる。

「加速」

「了解」

 地面に落とすと、魔ヶ珠はまたも古代魚の姿を形作った。

「また、こいつか。もしかして、さっきのと一緒にこの世界に落ちてきたのかな?」

「夫婦だっりして」と、ユカ。

「悲しくなるから、やめてくれ」


 青志は、すでに土属性を合成済みの鷹ゴーレムの魔ヶ珠に、加速の魔ヶ珠を合成した。

 加速状態から土魔法で作った弾丸を撃ち出せば、速度が上がり、それだけ威力も増すはずだ。

 鷹ゴーレムの外見も、甲冑をまとったようなゴツゴツしたものに変わってしまった。分かり易く言うと、かなりロボットっぽい。

 青志からすると「カッコいい~!」という感じだが、女性陣は特に反応する様子もなかった。


「よし、次だ。これは?」

「硬化ね」

 出てきたゴーレムは、体長80センチぐらいのクワガタ。

 頭部のハサミがゴツい。その先端が鋭く尖っており、刺すことができるようになっている。おまけに、ハサミは両刃になっていて、開くときにも閉じるときにも対象を切り裂けるようだ。

「か、カッコいい・・・」

 ついに、正直な感想が漏れてしまう青志。

 そんなアオシを見て、キョウたちは微笑ましい表情を浮かべる。


「クワガタは、そのまま使うの?」

「いや。スライムに混ぜる」

 クワガタを魔ヶ珠に戻すと、スライムの魔ヶ珠に合成。

 鉄の身体を持ち、透明になれる上、硬化能力を持ち、鬼猿とクワガタの姿に変わることのできるスライムの誕生だ。

「もう1つ、いくか」

 青志は、更に土属性のタコを混ぜ込んだ。土属性にしたのは、硬化の性能を高めるためだ。

 コストがずいぶん高くなってしまったが、今の青志ならなんとか運用可能である。


「そして、これが最後。シールドだな」

 最後の魔ヶ珠から出現したのは、巨大なコウモリ。

 翼長2メートル近い大きさだ。青志が偵察用に使っているコウモリゴーレムたちより、明らかに大きい。羽ばたく翼の音は、パタパタではなく、バッサバッサだ。

「でかっ!」

「こわっ!」

 怖がるユカとトワ。

 確かに怖い。


「これも、別のゴーレムに合成した方がいいね」

 青志は、コウモリを魔ヶ珠に戻す。

「バリアを張れる能力だから、いつもアオシさんのそばにいられるゴーレムに混ぜるのがいいんじゃない?」

「なるほど」

 キョウに頷くと、青志は猫ゴーレムの魔ヶ珠を手に取った。

 青志がこの世界に落ちてきた直後に入手し、火属性を付けたものの、ロクに出番がなかった尻尾が二股になっている猫だ。


 2つの魔ヶ珠を合成させると、ゴーレム化させてみる。

 形作られたのは、背中にコウモリの翼を生やした、尻尾が2本の猫。

「なんか、ずいぶんマンガっぽいゴーレムになっちゃったな」

「ちょっと・・・かわ・・・いい?」

「なんで、疑問形なのかね、トワくん?」

「だって、微妙なんだもん」

「まあ、否定はできんな」


 



 これで、船に乗っている間に常時召喚しておくゴーレムは、ミゴーと甲冑鷹と羽猫とスライムの4体となった。

 ミゴーとスライムは鉄製。甲冑鷹と羽猫は、鎧竜の装甲板製である。

 霊獣は材料なしにゴーレム化できるので、必要なときに呼び出せばいい。

 索敵用の鷹やコウモリも、もちろん常時召喚だ。それらを召喚するのに必要な魔力は、青志にとってはもう誤差の範囲である。


「これで終わり?」

「海中の索敵用にもう1体作っとくよ」

 そう言って、青志は、銀貨8枚分のイルカの魔ヶ珠に、やはり銀貨8枚のサメと、風属性の鳥を合成した。

 これを鎧竜の装甲板を材料にゴーレム化すると、胸ビレがやけに大きなイルカが出現する。頭がずんぐりしていたフォルムが、サメ風のすっきりした流線形となり、その口には鋭い歯がズラリと並ぶ。

  

「風魔法が使えるようになったから、元々ある超音波レーダーが強化されてるはずだ。それに――――」

 地面に寝そべっていたイルカが、ふわりと浮き上がった。

「――――飛べる」

「うわー、ファンタジーっぽい!」

「とっくにファンタジーだろ」





 日が暮れるまでに、青志たちは屋敷に戻った。

 オロチは、まだ帰って来ていない。夕食をヒョウタと一緒にすることに成功したのだろうか。

「おかえり、パパ」

 マナとウィンダが出迎えてくれたが、マナの機嫌があまり好くない。半日、ウィンダとどう過ごしていたのか分からないが、やはり青志と離れていたのが面白くなかったのだろう。


「マナ、お土産があるんだ」

 青志が真っ黒なリボンを渡すと、マナの表情が一気に輝いた。

「わ、可愛い!」

「マナの真っ赤な髪に似合うと思うんだ」

「付けて、付けて!」

 マナがはしゃぎながら、青志にリボンを付けてくれるようにねだる。

「お、おう・・・」

 

 女の子の髪なんか弄ったことのない青志は、焦りながら、それでもなんとかマナの髪にリボンを結わえ付けた。

「似合う?」

「似合ってるよ」

 青志がそう言うと、マナが心底嬉しそうに笑う。

「マナちゃん、可愛いわよ! でも、後で私たちが綺麗にしてあげる!」と、ユカ。

「ぐっ・・・」

 青志のリボンの付け方では、不合格だったらしい。

「ありがとう、パパ!」

 それでもマナは青志に抱きついて、ぐりぐりと頭を青志のお腹にこすりつけてくれた。





「ウィンダさん」

 ユカとトワがマナの髪を弄り始めたところで、青志はウィンダに歩み寄る。

「はい。どうかされましたか?」

「これ、ウィンダさんにもプレゼント。受け取って下さい」

 青志がウィンダに手渡したのは、真っ白なリボンだ。

「え? 私までいただいても、よろしいのですか?」

 自分がプレゼントをもらえるなんて、全く予想していなかったらしく、ウィンダは本当に驚いていた。当たり前のように物をねだってくる女性にしか会ったことのない青志の目には、とても新鮮に映る。


「う、嬉しいです。ありがとうございます」

 ほんのり頬を染めるウィンダ。

 そんなウィンダを見て、青志の胸も高鳴ってくる。

「あ、あの、良かったら、リボン、つ、付けようか?」

「え? あ、はい。・・・お、お願いします」

 ここは「青志自身の手で、リボンを付けてあげるべき!」と思って勇気を振り絞った青志。

 

 が、照れているウィンダの様子に、自分がとても大それた真似をしていることに気づいてしまう。

 カノジョ以外の女の子の髪にリボンを付けてあげるだなんて、イケメンにしか許されない所業ではないか、と。もちろん、マナにしてやったことは、カウント外だ。

 しかも、いつの間にか、キョウたちが固唾を飲んで、青志とウィンダを見つめている。マイペースなリュウカまでもが、目を真ん丸にして見つめて来ている。


 照れくさい!

 最高に、照れくさい!

 青志は、頭のてっぺんから汗を噴き出させつつ、ウィンダの美しい髪に手を触れる。

 以前に触れたときには、指通りも悪く、もっと堅い感触だった髪だ。

 それが、絹のような滑らかな手触りとなり、シャンプーのいい香りが鼻をくすぐってくる。

 

 思わず、その髪にキスをしてしまいそうになる青志。

 ウィンダだって、キスぐらい拒まないだろう。そんな確信があった。

 キョウやリュウカたちのいる前でなければ冗談抜きでキスぐらいしていたところだ。人目のある所で始めてしまったことを、本気で悔やんでしまう。ユカやトワの前では、さすがにR18な真似はできないのだ。

 それとは別に、マナの視線がやけに痛い。まさか熱線を放っているんじゃないだろうかとビビってしまう。


 緊張のあまり表情(かお)を引きつらせながら、青志はなんとかウィンダの髪にリボンを結わえ終わった。

 可愛い耳を真っ赤にし、視線を逸らしたまま、ウィンダが頭を下げる。

 青志も、モゴモゴと意味不明なことを呟きながら、頭を下げ返す。やはり、視線はウィンダに向けられない。

「じ、じゃあ、そろそろ・・・食堂に、行こう・・・か」

「は、はい・・・」

 そう答えながら、一瞬だけ潤んだ瞳で、上目づかいに青志を見やるウィンダ。

 その仕草の愛らしさに、青志の心は完全に射ち抜かれたのだった。





 その夜、オロチは帰って来なかった。





 翌朝、屋敷に2人の男が訪れた。

 ナポレオンとかの肖像画で見るような、コートを着て、腰からサーベルを下げている。

 どうやら、ウィンダや青志を乗せてくれる軍艦の艦長と副長らしい。

 ウィンダとシューマンが2人の対応をしており、青志たちは別室で待機中だ。

 ナナンによると、出航の準備が整ったらしい。近日中に出航ということだ。


 軍艦はルベウスが造らせた物で、艦名はアルガ。艦長を始め、士官はルベウスの私兵である。シューマン、ナナンとは、お仲間という訳だ。

 大半の船員たちは軍人ではないが、その勇猛さは並みの冒険者には負けていないそうである。

 青志としては、船に乗ってしまうと、マッチョな男たちにいたぶられることしか想像できず、胃が痛くなる思いだ。

 むろん、ルベウスの客人である以上、建て前としては、青志たちが失礼な目に合うことはないはずである。


 青志が勝手に胃痛と戦っていると、侍女が青志を呼びにやって来た。艦長が会いたがっているという。

 首を傾げながら青志が赴くと、艦長と副長が満面の笑みで迎えてくれた。2人とも2メートル近い巨漢で、頭がツルピカのくせに髭モジャという強面のため、その笑顔がとても怖い。

 おまけに、握手を求められたのはいいが、握力が人間離れしていた。右手を握り潰されそうになって、青志は悲鳴を上げる。


「いやいや、申し訳ない。あの大クラゲを駆除してくれた恩人に会えたと思うと、ついつい嬉しくなってしまいましてな!」

 そう言って、ガハハと笑う艦長。

 カウラウゴという名前だ。副長とは兄弟だそうで、外見はそっくりである。ただ、カウラウゴ艦長の方は、左目に黒い眼帯を着けており、そこで2人を判別するしかないようである。

 弟である副長の名は、マウラウゴ。


 聞けば、大クラゲにトドメを刺した大砲は、アルガ号が放ったものらしい。

 青志は、あのとき大砲を撃った、鉄製の軍艦の威容を思い出し、少し船旅への不安を解消することができた。

 木造の船だったら、巨大なケモノの体当たりだけでバラバラになっちゃうんじゃないかと、心配でならなかったのだ。

「よろしければ、クラゲを灼いたあの方法、我が鑑の乗組員にも伝授してやって下さいますかな!?」

「ええ、喜んで」

 どうやら、クラゲ事件のおかげで、軍艦の乗組員にも青志の評判は好いようだ。

 青志は、ホッとしながら、艦長と再び握手をかわすのであった。


 

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