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迷子デビュー

 途中になってる別の作品を書いてた筈が、新しい設定を思いついてしまいました。

 他の人が似たような設定で作品を書かないうちにと思って、慌てて投稿しております。

 ストーリーは、よくあるものとなっております(汗)

 彼は、困惑していた。


 とある山の中のキャンプ場でテント泊をしていた筈が、朝になってテントから出てみると、そこは見慣れない草原に姿を変えていたのだ。

 膝ぐらいの高さの草が、どこまでも広がっている。

 もともとのキャンプ場は、きれいに整地をされ、敷地の中には数軒のログハウスも並んでいた筈だ。

 それが、影も形もない。

 自分以外にもテント泊をしていた人がいたのに、どこにもその痕跡がない。

 それどころか、キャンプ場から一望できた美しい山並みさえも、どこかに消え失せていた。


「山の中でさえないのか?」

 初めての1人きりの山ごもりは、2日目の朝にして、いきなり破綻を迎えてしまったようだ。




 彼の名前は、千種(ちぐさ)青志(あおし)

 42才になる、何の変哲もない会社員だ。

 身長が180センチで空手を習っていたこともあるが、ロクに筋肉は付いていない。掛け値なしのインドア人間である。

 ついでに言えば独身で、彼女いない歴3年。趣味は、読書とネットゲーム。黒縁眼鏡を愛用している。


 そんな彼が1人きりで山の中にいたのは、鬱病の診断を受け、強制的に会社から長期休暇を言い渡された事に端を発する。

 最初は、マンションに籠もってネットゲーム三昧なんてことも考えたが、何やかんやあって、気づけば1人で山に入ることになっていた。

 そうなる経緯は、もう、どうでもいいだろう。

 ただ、山ごもりを口実にキャンプ用品やナイフ、熊除けスプレーまで買い込む作業は楽しかった。

 インドア人間とは言え、色々な道具に興味があるのは、やっぱり男だからだろうか。


 テントを畳んで荷物を片付けると、とりあえず歩き出す。

 朝食は、ゆっくり摂る気分じゃなかったので、歩きながらの栄養バーで済ませた。


 向かう方向は、適当だ。

 草原の彼方に見える背の低い灌木を、当面の目標とした。

 リュックの中に入れてあった熊除けスプレーは、フィールドジャケットのポケットに移し変えてある。

 もちろん熊や猪に備えて買った物だが、本当に使うとは考えてなかった。いや、今だって使う必要は無いだろうと思っているが、こんな異常事態に直面している以上、絶対に大丈夫とは言い切れない。


「これって、いわゆる神隠しってヤツ?」

 しかし、本人は意外に焦ってはいなかった。

 呑気?いや、感情の起伏が乏しくなっているのだ。

「鬱病のおかげで、あんまり慌てずに済んでるのか?

 何が幸いするか分からないもんだなぁ」


 目標にしてた灌木までたどり着くのに、1時間以上かかった。

 人に踏み固められてない柔らかい地面を歩くのは、けっこう疲れるものだ。運動不足の42才には、少々きつい。

 灌木の根元に荷物を放り出すと、地面にへたり込んだ。


「よくある雑草と思わせといて、お前ら何者だ?」

 一面に生えている雑草だが、改めて見てみると、どれも食虫植物だった。茎の根元が膨らんでいて、そこに溜まった水(?)に虫が浮いている。

「食虫植物に詳しい訳じゃないけど、見える範囲全てが食虫植物なんて場所、聞いたことないぞ。

 それに、この虫・・・・・・」

 食虫植物に捕らわれてる虫の姿は、羽のあるムカデにしか見えなかった。大きさは、約2センチ。

「新種かよ」


 青志が熱心に植物や虫を見つめていると、不意にガサリと音が響く。

「!?」

 驚いて顔を上げると、謎の生物と目が合った。

 全く体毛のない肌は緑色で、二本足で立っている。(ひたい)には、2本の小さな角。身長は140センチぐらいか。

 それだけでも新種の生物確定なのに、そいつはローブの様な服をまとい、右手には金属的な光沢のある杖を持っていた。

 その奇怪な姿に、思考が停止してしまう。


「ぎぎっ!」

 呆けてる青志に向かって、謎の生物が右手の杖を突きつけてきた。

 気のせいか、相手も慌ててる様だ。こんなとこで人間に出くわすとは思ってなかったのかも知れない。


「☆~※?★★&###~※☆\¥・・・・・・」

 だみ声でうなり出す謎生物。

 でたらめじゃなく、そこには規則的な韻律が感じられ、理由も分からないままに青志の脳内に警報が鳴り渡った。

 杖の先端に取り付けられた赤い宝石が、ギラリと光を放つ。

 なんか、まずい!


 慌てて飛び起きた瞬間、直前まで彼が寝転んでいた地面から炎が噴き上がった。

「うおっ!?」

 びっくりして、腰が抜ける青志。

 そんな彼の眼前で、炎は轟々と燃え盛る。


 一瞬前まで何の異常もなかった地面からいきなり激しい炎が噴き出すなんて自然現象、見たことがなければ聞いたこともない。

 再び呆然とする青志を見ながら、悔しそうな声を上げる謎生物。

「まさか、お前が?」


 今度こそとばかりに、また謎生物が呪文(?)を唱え出す。

 先ほどより、明らかに気合いが入っているのが分かる。

 不可視のエネルギーが杖の先端の宝石に凝縮されていく。

 次の瞬間には、地面から噴き上がった炎が自分の身体を焼き焦がすのだ。


 杖の先端の赤い宝石がギラリと輝いたと同時に、青志はポケットから取り出した熊除けスプレーを謎生物に向けて噴射させていた。

「ギャーッ!!」

 真っ赤な液体が顔面にかかるや、顔を押さえて苦しみ出す謎生物。

 その足元から、激しい炎が噴き上がった。


 轟――――!!


 炎は瞬く間に謎生物の身体を覆い隠し、その生命を刈り取ってしまう。

 全てが終わるのに30秒もかからなかっただろう。

 唐突に消え去った炎の痕には、わずかに焦げた地面と杖、それに杖に付いてたのとは別の赤い宝石が残されているだけだった。


「つまり、自爆した、と?」

 もう、理解がついていかない。

 確かなのは、自分がファンタジーの世界に迷い込んでしまったらしいということだ。

 フラフラと立ち上がろうとした時、今度は激烈な痛みが彼の身体を襲った。


「ぐっ!・・・・・・ぐぎぎぎぎぎ!!」

 特に胸の痛みが凄まじい。

 自分の胸を押さえたまま七転八倒する青志。

 心臓の辺りで、何かがゴリゴリと大きくなっていく。


「げはっ!ぐおおおおぉぉぉぉっっっ!!」

 心臓だけではない。

 腕も。

 足も。

 身体の内側で、ぶちぶちと細胞が引き裂かれていく。

 肉を押し広げて、何かが育っていく。


 青志にとっては無限にも等しい時間だったが、実際には3分にも満たないものだった。

 突然痛みから解放され、ぐったりと地面に身を横たえる。

「な、なんだっていうんだ・・・・・・」

 まだ鈍痛が残る二の腕を触ると、肉の内側に何か硬い物があるのが分かった。

 一番痛みの大きかった胸は、肋骨のせいで異変は確かめられない。


 己の体内で異物が育ってるなんて、普通に考えれば非常におぞましい話だが、青志には不思議とそう感じられなかった。

 むしろ、そこから活力が湧いてくるような気さえした。

 もう一度立ち上がってみると、確かに身体が軽い。

 オッサンになってからの関節の固さや身体の重さが、少しやわらいでいる様に思える。

 

「まさか、モンスターを倒したんでレベルアップしたとか言わないよな」

 つぶやきながら、謎生物が持っていた杖と赤い宝石を拾い上げた。

「で、これがドロップアイテムってか?ゲームじゃあるまいし」

 杖を前方に突き出し、叫んでみる。

「炎よ!」

 杖の先端から、ちょろっと炎が吹き出した。

 ライターのもの程度の小さな炎だったが、間違いなく出た。

「ま、魔法!?」

 わなわなと震えながら、もう一度試してみる。

「水よ!」

 水が出た。

 テッポウウオが噴き出すのより少ない量の水だが、やっぱり出た。


 しかし、土と風は出なかった。

 待てよと思って、今度は杖を置いて試してみる。

「炎よ!」

 出ない。

「水よ!」

 出た。杖を使ったときと同じぐらいの量の水が。

 土と風は、当然のように出ない。


 つまり、謎生物の杖は炎の杖な訳だ。

「そして、オレは杖がなくても水魔法なら使える、と?」

 驚きだ。

 千種青志は、魔法が使えるらしい。


 感動に震える青志が我に帰ったとき、彼の目の前には5体の謎生物が立っていた。

 緑色の肌の小鬼。

 殺意のこもった目で、青志をにらんでいる。

 その手には、杖ではなく短い剣。

 どう見ても、仲間を殺された仕返しをしようっていう雰囲気だ。


「あ。やば・・・・・・」


 


 


 


 書きたい設定までは、もう数話かかりそう・・・・・・

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