裏舞台(Ⅰ)
これが噂の「転生もの」ってヤツなのか……?
と、朝起きた僕は小さくなった自分の手を見ながらぼんやりと考えた。
別に寝ぼけている訳じゃない。
今見ている自分の両手は明らかに小さく、赤ん坊の手だったのだ。
更に言えば僕には「前世で一度死んだ」記憶があり、この記憶のおかげで「自分が別の人間に転生した」という今の状況をすんなりと受け入れることができた。
前世の僕は生まれたときから重い病にかかっていて、物心が付いたときには病院で暮らしていていた。
病気の症状は月日がたつにつれて悪化していき、外に出ることができない僕には当然友人はおらず、両親も一年に数回見舞いにきてくれればいい方だ。
自分以外誰もいない病室の中で、僕は両親が買ってきてくれた本や携帯小説を読んで毎日を過ごしていた。その中には、一度死んだ人間が前世の記憶を持ったまま別の人間に生まれ変わって第二の人生を経験するといういわゆる「転生もの」の作品があって、僕がそれを気に入るようになったのはある意味当然だと思う。
転生ものの小説を読みふけっては「健康な体に生まれ変わって、たくさんの友人に囲まれた自分」を想像する僕。
この時はまさか自分に小説と同じ出来事が起きるとは夢にも思っていなかった。
僕の「第一の人生最後の日」は、皮肉にも僕の十五歳の誕生日に訪れる。
誕生日の朝に突然、病気の症状が急激に悪化し、僕の異常に気づいた医師達は必死に治療しようとするが、もうすでに手遅れだったのは自分でも理解できた。
「ああ、自分はもう死ぬんだな」と生きることを諦めた僕はゆっくりと意識を手放したのだが、次に目を覚ますと何故か赤ん坊となっていた。
ちなみに今僕がいるのは病院の病室ではなく、見知らぬログハウスの一室。
病気で一度死んで、気がついたら赤ん坊となって見知らぬ場所にいた。
自分でも「もう少し驚いたらどうだ」と思いたくなる状況だが、人間とは驚きが過ぎると逆に冷静になるようだ。もしかしたら前世が僕にとってあまり未練がないことも理由の一つかもしれない。
後に僕は育ての親から「ハーミット」という新しい名前を与えられ、この異世界で第二の人生を歩むことになる。