キラキラハートはだれのもの?
女の子は目を輝かせながら目の前のクマを見つめています。
「ねえ、ママ。知ってる?このクマのぬいぐるみにハートが隠れてるんだって。」
そう言うとたくさんのクマをわしずかみ。そう、女の子は一生懸命ハートを探し始めたのです。
女の子は一個一個ゆっくりと、どこかにハートが隠れてないかクマとにらめっこ。
「ない。 これも。 これもない!」
そう言うと、女の子は怒ってぬいぐるみを投げました。
くまのぬいぐるみはポツンと床に落ちてしまいました。
「私、これを買う。」
床に落ちたくまを拾い上げると、別の女の子がお父さんに言いました。
そしてその女の子はうれしそうに落ちたぬいぐるみを抱きしめました。
「ねぇ。 そのくまにはハートないよ?」
ぬいぐるみを投げた女の子が言いました。
その女の子は聞こえなかったのかちらっと女の子の顔を見ると、そのままお父さんのとくまの手をギュッと握っていなくなってしまいました。
結局女の子は何も買わないで家に帰ると、すぐさま自分の部屋に並んでいるぬいぐるみに話しかけました。
「ねぇ、くーちゃん。」
女の子はくまのぬいぐるみに話しかけました。
「くーちゃん、ボロボロになっちゃったね。 だからね、私、ハートのクマにお願いしたかったの。」
そのくまのぬいぐるみはきれいな茶色だった体は黒っぽくなり、片方の足は取れかかっていました。
「くーちゃんをピカピカにしてあげたかったの。 見つけられなくてごめんね。」
女の子はくーちゃんをギュッと抱きしめました。
くーちゃんは何か言いたそうな目をしていました。
その日の夜、女の子は夢を見ました。
目の前のぼろぼろなくーちゃんの胸がキラキラ光って赤くハートが浮き出てきたのです。
女の子がくーちゃんに手を伸ばすと、夢は覚めました。
目を覚ますとすぐに女の子は、枕元のくーちゃんに手を伸ばしました。
すると夢と同じようにくーちゃんの胸元に赤いキラキラしたハートがあったのです。
朝再び目を覚ますと赤いハートは消えていました。
でも、女の子には赤くキラキラしたハートは見えていました。
くーちゃんも嬉しそうに笑っていました。
どんなにぼろぼろでも、その女の子にはたった一つの宝物です。
その頃、あの落ちたぬいぐるみは、女の子に抱きしめられながらにこにこしていました。
そして、胸元には赤いハートがキラキラと輝いていました。
「あの子、どうしてハートがないなんて、嘘言ったんだろうね? こんなにキラキラしてるのに。」
女の子はクマのぬいぐるみに話しかけながら、くまと同じようににこにこしていました。