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最終話

俺と由香、舞、リンが校舎に入る。


「静かだね、銀次」

「だな……とりあえず誰かいるか探すか」


俺と由香が話していると舞が前を見て


「銀兄、今なんか動いたよ」

「どこで?」

「ほらあの教室の辺り」


俺は舞が指さした所を見るが特に変わった所はなく


「なんもないぞ、舞」


舞は無言で首を傾げていたがしばらくして『ガタン』と舞が指さしていた教室から何かが動く音が聞こえた

「なんだろ……」

「行ってみたらわかるだろ」


俺が先頭を歩き後ろに由香、舞、リンの状態で教室に入る。その教室は『3―A』と書いており俺と由香、刃、真奈のクラスである。

俺達が教室に入ると掃除ロッカーがカタカタと揺れていた。俺は背中に担いでいた『紅蓮』を片方だけ左手に持ってロッカーの前まで行く。俺はロッカーを勢いよく開き中に『紅蓮』を着こうとして止めた。ロッカーの中には同じクラスの相川渚あいかわなぎさがロッカーでうずくまっていた。由香が俺の後ろから前にでて


「大丈夫、渚ちゃん?」

「えっ……由香ちゃん……」


相川は由香の顔を見て驚いていたがすぐに泣き顔になってその場に座りこむ。

俺は先に行こうとするが由香が


「銀次、止まって」


の一言でその場に留まり教室で渚が落ち着くまで待った。落ち着くと渚は俺の背中に担いでいる『紅蓮』に目を向けていた。俺がその視線に気付き


「これは気にするな」


俺はそれだけ言って黙った。由香は俺が言った事を聞いてから渚に


「他に誰かいるかわからない?」

「わからんない。気付いたら誰もいなくて怖くなってロッカーに入っただけだから」

「仕方ねぇか……とりあえず他に誰かいないか校内探すか」

「全部探すの?」

「まぁな」

「………夜までに帰れるかな………」


由香が変な所を心配しているのはこの高等部だけの校舎で全部見てまわるのに半日はかかるからだ。


「とりあえず探すか」

「探すって………銀次何処を?」

「下から準に探すしかないだろ」


舞とリンはなにがあったかわからないと言った感じでワクワクしていた。俺達は一階の所から回ることにして今体育館のドアの前にいた。


「銀次……中になんかいるよね……」

「みたいだな」


体育館の中では『ヒタヒタ』と音が聞こえる


「なにが居ようと行くけどな」


勢いよく扉を開けると中にはワニだけじゃなくて蟻や蜘蛛も何匹かいた。俺は勢いよくドアを開けたがまた勢いよく閉める。


「「「「…………」」」」

しばらく俺達四人は沈黙。だが沈黙は体育館の中から聞こえる絶叫ですぐに破られた。俺がドアを開けると蟻、蜘蛛、ワニは何かを襲うように一点を集中して襲う。その一点には五人の生徒がいたが男女どちらか解らなかった。俺はすぐに生徒五人の前に立つ。五人は俺を見て驚いていたらしいが俺は無視して前にいるワニ、蟻、蜘蛛と対峙する。先頭にいたワニがゆっくりとしたスピードでこちらに向かってくる。『チリン』

鈴の音がすると思うとワニ、蟻、蜘蛛は既にばらばらになっていた。その場にいた由香はただ呆然と見ていた。


「銀次……」

「大丈夫だ。それに早く助けるぞ」

「うん」


俺と由香は五人を連れて一度校舎からでると外には刃と真奈が真田さんとなにやら揉めていた。


「何やってんだ?刃」


俺が言うと刃達は俺の方を向いた。


「銀次!お前は草野とこれからも一緒にいるんだよな!!」

「いるんだよね、銀!!」

刃と真奈は俺に物凄い勢いで聞いてきていた。


「そりゃあな」

「だろ!!だから親父その話は無しだ!!」

「刃なんだ話って?」

「それは……」


刃が黙っていると真田さんが


「銀次、お前にはこれからもう一つの世界に向かって貰う。」

「もう一つの世界?」

「そうだ」


俺がなんだそれと思っていると真田さんが


「もう一つの世界ってのはそのまんまの意味でこれからすぐに向かってもらう」

「なんか強制だな……」

「のんびりもしてられなくてな」

「なんで?」

「あのワニとかは別の世界から来ていたみたいでな、その世界で根源をねこそぎ断ってもらいたい」

「期間は?」

「わからん。だが一度もう一つの世界に行ったら戻ってこれるかわからん」


俺は真田さんの話しを聞いてると刃や真奈、舞、リンが


「んなとこ行く必要ねぇだろ相棒!!」

「あんたが行かなくたって他の誰かが行けばいいじゃない!!銀!!由香の側にいるんでしょ!!」

「銀兄もうどっか行くのやだ!!行くなら舞も行くもん!!」

「お兄ちゃん行くならリンも行く!!」


四人は色々怒鳴っていたが俺は黙って由香の方を見ていた。由香も黙って俺の方を見ていてしばらくすると

「行ってらっしゃい。銀次」

「「「「!!由香!!」」」」

「だって銀次こうなった時止めても意味ないんだもん」


由香は笑顔だったが目からは涙が流れていた。


「由香………」

「銀次、でも出来れば早く戻って来てね………あんまり遅いと浮気しちゃうからね」

「由香………」


俺は由香を黙って見ていたが俺は真田さんに目を向けて


「行きます。もう一つの世界に」

「銀次!?」

「悪いな、刃。でも由香に『行ってらっしゃい』って言われたからさ。俺は行くよ」

「なら俺も行くぞ!!俺達は親友だろ銀次!!」

「それは駄目だ。」

「どうしてだ!?」

「由香を守る奴がいなくなる、俺がいない間由香を頼むぜ相棒」

「………銀次がいない間に俺が由香を守らなかったらどうすんだ……」

「それはねぇよ」

「なんで言い切れる……」

「刃、お前は俺の『信頼』できる唯一の相棒だから。俺はお前が由香を守ってくれると信じてるから。」

「………わかったよ……でも!!」

「なんだ?」

「もし死んで帰ってきたり帰ってこなかったりしたらボコボコにしてやるからな!!」

「ほどほどにしてくれよ、相棒」

「うるせぇ、勝手に一人できめやがって」

「んじゃな、刃」

「おう」

『パチン』


俺と刃ハイタッチすると


「銀次、そろそろ行くぞ」

「わかりました。でも真田さん、どうやって行くんですか?」

「あれだよ」


真田さんが指差した先には何かの黒い穴が会った。


「あれで行ける」

「わかりました。…………じゃあな、皆。」


俺はそういって穴をくぐろうとしたが


「銀次!!」


由香の声で止まる。


「帰ってくるよね!?ずっと待ってるから!!待ってるから、ちゃんと帰ってきてね!!銀次!!ちゃんと帰って来て私を守ってね!!」


俺は由香の方へ振り返らずただ片手を上げて


「由香!!俺は由香が大好きだ!!だから帰ってきたら結婚してくれ!!返事は帰って来てから聞くよ!!」


由香は俺に負けない大声で

「銀次の馬鹿!!あたしはあんたなんか大っ嫌い!!大っ嫌いなんだから!!」

俺はそれだけ聞くと黒い穴に入った。


「銀次のバカ………大好きだよ……」


由香は地面に座り泣いた。『銀次が帰ってきたら絶対に泣かないで迎えよう』と思っていたからだ。そして明日は笑っていようと思った。


「だって、わたしが笑ったら力になるんだよね?

銀次………待ってるからね大好きだよ。銀次」



―――――三年後――――

由香と舞、リン、真奈は今真田家にいた。


「誕生日おめでとう!!

由香!!」

「おめでとう、由香お姉ちゃん」

「おめでとう由香姉」

「ありがとう、真奈、舞、リン」


そう今日は由香の誕生日で同時に銀次の誕生日でもある。今この場には由香、舞、リン、真奈、刃がいて真田家の主、真田一がいなかったが


「ごめんちょっと急用出来たから遅れるよ、それまでは好きにやっていていいから、なるべく早く戻ってくるから」


とそれだけ言って、真田一はどこかに出掛けてしまった


「ったく、親父もプレゼント忘れんなよな。」

「真田さんってプレゼント取りに行ったの?」

「多分な」

「よかったね、由香姉」


そんな話しをしていたら


「銀次がもう一つの世界に行ってからもぅ三年なんだね」


由香が唐突に話しを切り出した。だが暗い言葉じゃなく明るく早く帰って来ないかな。と恋人を待つ心境で話していた。


「そうだね、お兄ちゃんが出ていってからもう三年なんだねぇ」

「全く、銀の字は一体いつ帰ってくるんだろうね、

ねぇ由香」

「そうだね………でもなんでかな」

「なにが?」

「ん〜なんか今日は朝からそわそわするんだよね……」

「そわそわって?」

「よくわかんないけど………」

「ふ〜ん」


真奈は由香とそんな話しをしていると由香が突然

『ハッ』として玄関の方を見た


「どうしたの?由香?」

「………来る」

「はい?」


真奈がどうしたんだと思っていると舞とリンも由香と同じような顔をして玄関を見ていた。すると玄関が開き真田一が入ってくる。


「お、帰ってきたな。」


刃がそういって玄関にいる真田一に


「おかえり、おや……!!」


刃は最後まで言葉を発せないで由香、舞、リンと同じように固まった。真奈がなんなのよと思い玄関に目を向けるとそこには………

真田一、この家の主が立っていて特になにもないと思うと由香が


「ぎ………ん……じ?」


その真田一のうしろには銀字の十文字槍『紅蓮』が会った。


「親父、それ………」

「さっき学校の前に行ったら校庭に刺さっててな」

「………銀次は?」

「いや、その場には居なかったようだ」

「っ!!…………私も行く……」


由香が言った言葉に全員が驚いた


「由香、なにいってんの!?」

「そうだ草野!?何考えてんだ!!それに行くって行ってももう穴はないんだぞ!!」

「行くの!!銀次になにかあったのかも知れない!!」


そう言って走りだそうとする由香の手を美奈が掴み引き止める


「ちょっと!落ち着きな由香!!」

「そんな暇ない!こうしてる間にも銀次が危ない目にあってるかも知れないんだよ!!」

「由香、落ち着きなって、あんたが慌ててどうすんの!?」

「いや!!離して!!銀次に会いに行くの!!離して真奈!!離して!!お願い銀次の所に行かせて、お願いだから!!なにかあったかも知れないじゃない!」

「心配してんのは由香だけじゃないんだよ!!」

「離して銀次に会いに行くの、お願いはな」

「うるせぇぞ由香、俺ならここにいるよ」

「「「「えっ」」」」


由香達の視線の先にはボロボロの黒いコートを着ている男が立っていた。


「銀……次?」

「ただいま、由香」


由香は驚いた表情から一変急に怒った顔になって


「バカ!!心配したんだから!!」


そう言って銀次に近づいて抱きしめた。


「バカぁ〜」

「泣くなよ由香。ちゃんと帰ってきただろ?」

「うるさいバカぁ〜」


銀次が由香に困っていると舞とリンが俺の背中に飛び付いて


「お兄ちゃん!!」

「銀兄!!」


としがみついて泣いた。

真奈は


「おかえり、銀」


と一言、言って黙って銀次を見ていた。

刃は


「よう相棒」

「よう刃。」


銀次と刃はこれだけ言って黙った。そして、真田家で俺と由香の誕生日が始まった。


誕生日が終わると舞とリンは寝てしまい、仕方なく真田家に今日は皆泊まる事になった。銀次と由香は真田家の庭で二人揃って空を見ていた。


「由香、俺の最後に言った事覚えてるか?」

「うん」

「じゃ、質問。俺と結婚してくれますか?」

「うん」


銀次は由香を抱きしめ静かにキスをした。


五年後


「んじゃ行くか、由香」

「うん」


俺と由香は結婚して、今日は真田と真奈の結婚式だ。正直この事にはびっくりしている。でもこれからはもっと色々な事があると思う。それでも俺は由香と一緒なら乗り越えられると思う。大事な人がいるから……………



END

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