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第一章(第2話)

 痛みに手は痺れ銃口を向けることは今となっては困難であり、つまりそれは絶体絶命であることを如実に表していた。自分の身を守る術がない。そのことに絶望を通り越して呆れさえ感じていた。


「……大丈夫ですか?」


 しかし、耳に届いたその声は予想を反した女の声だった。


 何故女が一人、夜明けにも近いこの時間にいるのだろう。


その考えを進めるには今の僕は余裕がなかった。かろうじて判断出来たことは、身の危険がほんの僅かではあるが遠のいた、ということだけ。なんとか拳銃を握ろうと力を込めていた手から力を抜く。そして平静を装うことに専念すればいい。


「あぁ。大丈夫だ」


 いくら夜明けに近づいた時間だといっても、いまだ辺りが暗いということは事実であり、その闇に乗じれば女に正体を明かすことなくこの場を立ち去ることは不可能ではない。

平静を装った僕の声は、確かに完璧だった。後は立ち上がり去ればいい。しかし足は完全には回復していない。何とか踏みしめ立ち上がるも、それも限界だった。


「怪我を……!」


「すみません、たいしたことありませんので……」


 足元がよれ無様にもその女の肩を掴む形となる。微かに鼻腔をついた甘い花の香り。その香りに危険を感じたのは何故なのか?


 何とか彼女から離れようと動くも上手く足は動かない。そんな僕の異変に気づいた彼女は僕を再び地面に座らせる。ぴしゃりと微かに鳴る水音に女はハッとしたようにランプの光を地面に向ける。


「これの……どこが大丈夫なのです」


 光に映し出された鮮血。闇に隠されていたその血は思いのほか地面を濡らしていた。ランプの光は弱くかろうじて僕の顔は彼女には見えてはいないだろう。


それでも僕は笑ってみせる。


ただしきちんと笑えたのか自信はない。じっとしててください、その言葉の後に足に柔らかいものが当てられる。


「スカーフですので役に立たないかもしれませんが……」


 きつくそれは縛られる。外れないようにするかのようにきつく、きつく。その行動は脳裏に深く刻まれた。


「ありがとう」


 そう言って何とか立ち上がる。当然痛みはあるが休んだためか、それとも彼女のおかげか、だいぶその動作は先程よりも楽になっていた。


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