序章Ⅱ
序章Ⅱ
華やかな栄華を誇った大陸統一時代が過ぎ、やがて大陸は様々な国の思惑の渦巻く動乱の時代に入り数百年。
大陸統一という野望をその胸に秘め戦争を続ける国々の一つに「セレーク王国」という国がありました。長い長い年月をかけ、大陸中央部での確固たる地位を築き上げたその国は今一時の幸せな、平穏な時間を手に入れることに成功しました。人々はセレークの末永い未来を疑うことはせず、そしてこの幸せな時間が永遠に続くものだと疑いもせず、ただただ毎日呪文の如く、同じ言葉を繰り返していました。
「セレーク王家に神と天使のご加護を」
と。
全ては王家のために、国のため、そして自分たちのため、と。だから王家を守ることに何の疑問も持ちませんでした。
口を開けば彼らは皆同じことを言いました。
「王家は至高の存在である「五大家」の末裔の治める北の大国と縁深い家柄。そのような存在に治められるこのセレーク王国はなんと神聖で尊い国なのだろう」
疑いもしなかったのです。
疑えなかったのです。
王家も、国民も、疑うすべを知らなかったのです。
『至高なる血』が何を生み出したのか
『アレ』がどんな脅威になりえるのか。
たった一人の人物がそれに気づいた時にはすでに遅く、しかしそれでもその者は一計を講じ、そして王家と対立したのでした。
しかし、全ては遅すぎました。
かくして、神は、天使は聞きました。
たった一人で希望が絶望だと訴えた者。
信じ続けたいと願う希望を信じた王家。
はたして真に正しいのはどちらかと。