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第二章A(第4話)

 だからこそ今から向かうアルヴェリオの森に集まるレジスタンス勢力は無魔力者が多くいるだろうと判断できる。


昔においてもここセレーク王国では魔術師である王族を支持する者達と、迫害され続けてきた無魔力者達によっての内乱という歴史がある。その内乱によって無魔力者はセレークを追われ、周辺国に亡命した。魔術を信仰することによって、セレークの主君たる北の大国に忠誠を誓うこの国は、そんな歴史を幾度と無く繰り返しその迫害の規模はセレーク王国が領土を広げるほどに強力になっていた。

そしてついに国を追われた無魔力者が群をなし森林地帯の中でも奥にあり、昼尚暗く獣も多く出るアルヴェリオの森を牙城としてレジスタンスとしての活動を開始した、というところか。


しかし、僕の記憶の奥底に刻まれた一つの言葉がある。


 魔術師は無魔力者を軽蔑し迫害するが、無魔力者はそのようなことは望んでいない。彼らが求めているのは自らの優性ではない。独裁ではなく万人に開かれた政治だ。


 そう教えてくれた学士は次の日には姿を消していた。


 魔術師は、今の大陸では明らかに数からして無魔力者には叶わない。だからこそ無魔力者に対抗するために自らを選ばれた存在として自負し、一つの思想を掲げ強権的にまとまることが必要だった。

そしてその性格は現在の戦乱の世の中においては最適であった、というだけだ。


だからこそ、思想を乱すものは根絶しなければならない。もしそれが、同族であったとしても容赦はしない、出来ない。だから先進的な考えをする僕の敬愛する学士を国は殺したのだ、と幼心に思っていた。


混沌の世では絶対的な指導者は必要である。烏合の衆を纏め上げ国家として確立するには、時には冷徹に迅速に判断することが求められる。さもなくば人々は離散し国は崩壊する。かつてはその理に従おうとしなかった無魔力者のみの国も、今では多く王政、帝政、そして独裁を敷いているのはこのためだった。

だが、その体制を拒み、独裁による迅速さよりも、より多くの国民の意見を聞くことを選んだという変革が意味するのはセレークに反旗を掲げる勢力がこの時代では叶わぬ理想に走った結果であるとしか言いようが無い。


 現在は過去でも未来でもなく、ただの現在であり、そして時の情勢は刻一刻と流れ行く川のように変化を続ける。とどまることなど知らない。


 理想を実現させるには、それに見合った時に確実に実行することが大切なのだ。万人の考えを受け入れることを掲げるレジスタンスは、確かに無魔力者の掲げる理念に一寸も間違っていない。しかし実行するには次期が的外れだっただけだ。そしてこれは致命傷に値する。


それは平和の世にこそ相応しい。


 それは戦争など一切起こらない理想の時代にこそ実現するべき夢である。


 手綱を引き、馬の首を一撫でした。

 時流に適合しなかった理想郷。これから僕が向かうのはそんな「国」だ。

 いかめしい憲兵の守る門をくぐり、そして僕はそこへ向かうため馬に拍車を入れた。




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