甘い焼却
肉の焼ける臭いがする。生臭い。何とも鼻につくような強烈な臭いが鼻の奥に突き刺さる。臭い。匂い。ニオイ。におい。
脂の臭い。焦げ臭くて、すえた獣のような、じわじわと胃の底をせり上げさせる臭い。掃き溜めの腐臭をかき集めて口と鼻の中で撹拌したような、そんな臭いだった。
何かの脂が溶け、爆ぜ、焦げている。そう、何かが、確かに何かが。ものが焦げている。焼かれている。これは“もの”だ。もの、物、もの、モノ、もの……。我々の在り方とは全く別の、ただの物質だ。そうでなくてはならない。一続きであるはずがない。そうでなければ耐えられない。耐えられるはずがなかった。あれは紛れもなく“もの”であり、“もの”以外の仕方では存在し得なかったのだ。だから……だから……とにかく、あれは単なる肉塊だったのだ!
想像。想像。想像。それは、ありとあらゆる想像を拒み、そして想像でしか辿り着くことのできない場所。だから……誰も到達し得ない。到達した。到達し得ない。到達した。到達し得ない……。
貧弱……あまりにも貧弱なイマージュ。どれほど言葉を、イメージをかき集めても、全く届かない。あまりにも……貧しい。惨めなほどに。
ただ、それでも、想像に縋るしかないのだ。無闇に宗教的な意味を被せるのではなく、ただ肉の焼ける音を、その光景を。パチパチと弾ける火花。煮えたぎった脂の爆裂音。黒煙の立ち昇る空。地面を茹で、身体を溶かし尽くさんばかりに熱せられた肉塊。熱い。熱い。熱い。
鼻を覆い隠しても逃げられない不快な、あまりに“不快”な臭気。鼻腔がひん曲がり、内臓が裏返りそうだ。吐き気。決して吐いてはならない。唾をごくりと呑み込む。
――甘い。
何が甘いのか。熱。肉。鼻。臭い。腕。汗。煙。音。火花。赤。黒。指。足。破裂音。人間。宗教。歴史。血。黒焦げ。屍。ガス。部屋。記憶。
肉、肉、肉! 肉が燃えている。肉が!




