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時間が無い

作者: 葉沢敬一

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 アルバイト3日目で遅刻しそうになった。今度のアルバイトは派遣社員で、プロパー社員たちの下働きと遊び相手として採用された。もちろん、後者は言われなかったが、若い女性でちょっと顔が良いとこんな理由で採用されることもある。


 初日からLINE交換しようよとか言われる。彼氏は居ないけど初日から声かけてくる遊び目的の人とはちょっと遠慮したい。正直、毎度毎度角が立たないように断るのが大変。


 私はそんなにスキルあるわけでもないので、時給1200円程度。生活が厳しいのでお弁当を作っているし、化粧の時間もあるのでどうしても遅くなってしまう。


 その上、今日は電車の遅延があった。前日に株価が急落したので飛び込んだ人が居たのかも。

 詳細はよく分からない。


 急ぎ足で歩いていると、前を歩いていた白髪の老紳士が倒れた。

 私は急いで近づくと抱き起こして横にした。学校で習った応急処置だ。老紳士は暑いのに品の良いネクタイをキッチリ締めていたので、ゆるめる。


 ああ、もう遅刻だ。仕方ない、怒られよう。

 横から、看護師やってます、いう中年の女性が現れてその人に引き渡すと、私は救急車を呼んだ。老紳士は半身を起こすと、「ちょっとめまいを起こしただけだ」と言ったが、看護師は到着した救急車に無理矢理乗せてしまった。救急車に同乗したのは看護師。


 私は後から来た警察官に事情聴取され放免された。事件性はないと判断されたらしい。

 会社には大幅に遅れて出勤した。まあ、上司から怒られたけど私間違ったことしてないよね。


 数日後、職場に社長が来た。まあ、派遣社員は会うことがなくて、顔なんて覚えちゃ居ないんだけど、上の人ってどうして自分が社内で有名人だとおもっているのだろうか。


 そんなことを思って迎えたら、

――先日は、父がお世話になりまして、ありがとうございます。

 は?


 よく聞くと、助けた老紳士は会長だったらしい。朝一の会議に出席するために同じ電車に乗って、その電車が遅れて同じように到着したと。そこで、たまたま出会ったそうだ。


――おじいさん、いえ、会長はお元気で?

――はい、父は暑気にやられただけでした。検査を受けましたが脳梗塞とかなくそのまま退院しました。

――それはよかった。

――父は大変感謝しております。よかったら、こんどパーティがありますのでご招待したいと。

――いえ、私、大したことしてませんし、そんな場所に呼ばれる人間では。会長がお元気と聞いただけで嬉しいです。

――あ、パーティと言っても内々の祝いで、あ、ウチ代々神社やってまして、小さな祭りみたいなものがあるんです。社の屋上に神社があるのご存じですか? ご近所さんからなる氏子さんが集まって会食する程度なので、是非皆さんにご紹介したいと父は申し上げております。


 なに? 逃げられないの? これ? 友達に相談したら、氏子さんって地主さんたちだから玉の輿に乗る良いチャンスよって言われたんだけど。


 ここで社長一家は会社と別のところに住んでいることを知った。そうだよね。ビジネス街の真ん中で買い物不便だしね。郊外に引っ越して家業の経営と神主やってるとのこと。

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