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信じていいって信じられたらいいのに

作者: みひる

「おいで」


ソファに座ったまま腕を広げて、まるでペットにでもいうように柔らかな声色。

そういえば私が尻尾をふってすり寄ることを知ってるみたいに。


お風呂あがりでまだドライヤーはしていない。

コップに注いだ水だって半分しか飲んでない。

けど。


その声に誘われるように彼のもとへ近づいていく。

ソファに座ってるその前にすとんと床に膝をつく。

毛足の長いカーペットは柔らかい。



「負けた気分」


「何とたたかってるの?」



いいこ、いいこと撫でるその手のひらは本当って知ってる。

慈しみ深いとかは言い過ぎかな。


頭の丸さを確認するような、まるでいい子でいることを強制してるような。

……気のせいかもしれないけど。



「愛情の重さかなぁ。重い方が負けね」


「僕のが負けてると思うけど」



そういう嘘を簡単に言う。

だってあなたはきっと私だけじゃないでしょう?



「なんで泣きそうになってるの」


「なんでかなぁ、好きだから?」


「えー……僕を好きなら笑顔にして」



酷いなぁ、と思う。

泣くほど好きとか知らないんだな。

人の心を持ってるのか疑わしいときがあるもん。



「髪、乾かさないと」


「おいでって言ったくせに」


「ん、いいこ。ドライヤー持ってくるから座ってて」


「ヘアオイルつけたい」


「はいはい」



甘やかされることを愛情というのか分からない。

無償の愛なんて無くない?

そうやって疑って、期待しないでいないといつかくる別れが悲しいから。

アッパーリミットまではいかないけど、期待し過ぎないように心に半分蓋をしめておく。



「はーい、乾かすね」


「ありがとう」



手櫛でいつも使ってるオイルをつけていく。

ここでしか使わない匂い。

いつか忘れるための匂い。


ドライヤーの温風を当てられながらなにか言ってるけどうまく聞き取れないな。

まあ、でもいいか。



「聞こえないからあとでー」


「うとうとしちゃう前に歯磨きしなね」


思ったよりどうでもいい言葉だった。

子どもだとでも思われてるのかもしれない。



「はーいはいはいはい知ってますー」


「せめてはーい知ってますくらいにして」


そうやって笑い合って。

一秒でも長く君といられるように、不安を隠して笑うんだ。

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