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7—19 チームBその3


「……そんな事があったのね」

「ばぶぅ」


 汐梨(しおり)(せい)から一通りこれまでの説明を受けた。


「とにかく、他のメンバーを探してるんだけど知らないかな?」


「誰とも会ってないわねぇ」

「ぁーぃ」


「おーよしよし」

「キャッキャッ」


「いい加減キッツイんで止めてくれません? (かん)ちゃん先輩」


 汐梨におんぶされた状態の柑奈(かんな)がハッと反応した。


「違うよ! これは、違うんだからね!!」


「何が違うんスか」


「疲れた身体と心を癒して包み込んでくれる包容力に負けてなんかないんだから!!」


「おもくっそ負けてんじゃねーッスか!!」


「人は時に赤ちゃんに戻りたい時があるんだよ!」


「いや晴には全然わかんねーッス」


「柑奈ちゃんはそのまんまでいいのよー」


 赤ちゃんに語りかけるような声で汐梨は柑奈をあやす。


「ああっ脳がとろけるぅぅぅ」


「…………」


 恐らく晴はこの時、引き攣った顔をしていたのだろう。言葉が出て来なかった。


「任せてくださいよ晴先輩! この船越(ふなこし)羽海(うみ)に!」


 颯爽と現れた羽海に対し、ややこしくなると晴は思ったのだった。


「その子がアタシたちの子供かい? 可愛いね」


「羽海ちゃんも私の子供よー?」


「いーや、汐梨(あなた)はアタシの素敵な奥さん」


 キラキラした笑顔を見た晴は、羽海がファンからモテモテの人気アイドルだと言うことを思い出した。


「晴先輩も癒しを求めてるんですか?」


「………え゛?」


 まもりがおずおずと話しかけて来た。


「だ、だいぶお疲れのようですから、その…私でよければハグを」


 晴はまもりの鎧をまじまじと見て答える。


「硬そうだからいいよ」


「はぅっ!? 脱ぎます!」

「いい! いい! 脱がなくて!」


「阿呆ども、そろそろ村に着くよー」


 最前列を歩いていた(ひびき)が振り返ると、瞳のハイライトが消えた笑顔で固まった。


「バブゥ…これが赤ちゃんの気持ち!? 違う! アタシは赤ちゃんではない!」


「エルちゃーん、こっちに来てママと遊びましょー」


「いつからママになったんですか陣大(じんだい)先輩!! 来ないでくださいよ!?」


「ママー置いてかないでぇぇぇぇ!!」


「別にまもりとのハグが嫌とかじゃなくてね! あっちの連中程狂ってないっていうかっ」


「はい…はい…私が狂ってました…」



「…………………行こっかリア」

「えっいやっ諦めないでくださいよっ気持ちはわかりますけど!」


「無理よ、無理無理! 久しぶりの汐梨のお母さんパワーが強烈過ぎて赤ちゃん連中が終わってるもの!」


 響は踵を返し歩き始め、その後をリアが追いかける。


 そこへ晴が駆け寄って来て


「あっちと一緒にしないでくださいよ!?」


「だったら同期の晴かリアが止めて来なよ」


「「え゛」」



 人類皆赤ちゃん


 優しく抱きしめられると母の温もりを感じ、本人の意思とは関係なく赤ちゃんになってしまう。


 汐梨が寂しくなった時にメンバーに手当たり次第に発動し、ほとんどが赤ちゃん化した経験がある。


 恋愛経験が無く、する気もないが子供が大好きで誰かを甘やかしたい、甘えられたいという欲求が強くてそうなってしまうのだとか。


「最初の頃やられてさ、別にバブバブ言ってたわけじゃないけど、すっごく甘えてもらいたいオーラを感じて付き合った事あったよね」


「オムツをかえましょーね〜ってやられた時は全力で逃げた記憶」


「晴ちゃんもリアちゃんも会いたかったわ〜」


 汐梨に両腕でがっしりと抱きしめられた晴とリアは何とも言えない表情で、顔を埋めて来る汐梨を気の済むまで続けさせた。






 それから暫くして、ようやく歩き始めた7人は村の近くまで来ると嫌な気配を感じた。


「あれ、黒煙じゃない?」


 少し前に立ち寄った村で巨人の情報をくれたお爺さんの娘夫婦が住んでいるという村の話を聞き、預かった小包を届に来たのだが……


 村が燃えていた。


 悲鳴が聴こえるので、まだ人は居る。


 響たちは村の中へと入り、手分けして救助に向かう。


 響と柑奈。晴と汐梨。リアとエル。羽海とまもり。2人一組を作った。


 子供や女性を見かけては、村の外へと誘導していく。


 そんな中、羽海とまもりが目撃したものは。


 何者かに首筋を噛まれ、そして力無く倒れる女性。


 ペロリと口元の血を舐め、牙を出すその姿は。


「吸血鬼…?」


 まもりは、ぽつりと呟いた。


 人のような姿をしたソイツは、まもりたちを見て、ニチャァと笑うのだった。




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