7—16 チームA+その9
中央で動かず謎のオーラを放っている優帆。
どこかに隠れて氷にレーザーを反射させて攻撃してくる鏡花。
姿が見えずトラップを仕掛けてくるアミ。
「先に鏡花先輩を戦闘不能にするってこと?」
「さっきからメリイセンパイが引っかかってるトラップ、優帆センパイに近付くにつれて激しくなってるんよ」
落とし穴、丸太、矢、吊し上げ、どこからとも無く急に現れるトラップの数々。
「たぶんだけど、優帆センパイは動かないんじゃなくて動けないんじゃないかなーって思う……」
「そんな意味ある? 動けないなんてマイナスじゃない?」
「そうなんだよねー……あるとしたら、あの異様なオーラに秘密があるとしか」
その時、一瞬時が止まったような感じがした。
優帆を包んでいた全身のオーラが上空に解放されていく。
陽子たちは上を見上げて絶句する。
「———は…?」
周囲が暗くなり、巨大な隕石でも降って来たのかと思うほどの塊が陽子たち目掛けて落ちてくる。
それは手だった。
優帆から放たれたのは、巨大な手。
これを出す為に直接攻撃を防ぐ事に集中していたのだ、他の2人は。
「あたっ!?」
メリイの足に紐状の何かが絡まり倒れた。
「……吹雪はブリザードお願い、メリイセンパイは綿で防御を」
言いながら陽子は銃口を優帆に向け、目は周囲を見る事に集中する。
弾を一発放つと即座にレーザーが弾丸を弾く為に発射された。
「見ぃつけた」
陽子はニヤリと笑うと、虎の姿に変身しターゲット目掛けて飛びかかる。
吹雪が発生し、視界が悪くなる中虎は獲物を狩る。
氷の塊に隠れていた鏡花を前足で押し倒して襟元に噛み付いた。
そのままブンブンと振り回して、上空の巨大な手目掛けて放り投げる。
「やっぱ、反応無いのがおかしいね……」
まるで人形。
感情が感じられない。無表情。
陽子は鏡花が偽物の可能性も視野に入れて、周囲を見渡す。
違和感は最初からあった。
本来の3人なら、絶対に陽子たちに反応する。
陽子はすぐに吹雪たちの元へ戻る。
「いい目眩しだ」
あんな巨大な手が現れたら、大多数がそちらを見るだろう。そもそも陽子たちの姿は見難くなっている。
防寒具も着ていない状態の猛吹雪は、普通の人間が耐えられる訳がない。
人形だと思ったが、一応寒いという感覚はあるようだ。
近くでクシャミが聴こえたのだ。
「やっぱりステルスですか」
鏡花のように物陰に隠れているでもなく、気配を感じるが姿が見えない。
トラップを遠隔で仕掛けられるのでなければ、ステルス、つまり透明人間のように姿が見えなくなる能力を使っている。
「すごいね、ヨウちゃん」
「アミセンパイの役割は足止め。最初からこの一撃にかけていたのだろうけど、逆に利用させてもらうよ」
陽子は再び銃口を優帆に向けて放つ。
今度こそ妨害は無く、腹部に命中して———
「消えた……ッ?」
「やっぱりヨーコちゃんは賢いわね」
「!?」
陽子は突然の背後からの囁き声に反射的に飛び退く。
「優帆センパイ!?」
振り返ると目の前に優帆が居た。
「ちょっと早く温まらせてぇぇえぇぇぇ」
「おわっアミ先輩!」
メリイが包まっている綿にアミがダイブした。
「お見事だよ陽子」
そして鏡花も現れ、陽子と吹雪は身構える。
「警戒しなくてもいいわよ。私たちの負けだから」
優帆が微笑みながら言うが陽子は疑いの眼差しで見る。
「どういう意味ですか?」
「そのまんまの意味よ、あと上のあの手は今停止してるから大丈夫、振動音で動いているように感じるだろうけれどね」
「決勝の相手がアンタらで良かったよ、私らに攻撃を与えてくれたお陰で元に戻れたんだから」
鏡花が笑顔を向けてくるが、陽子たちには意味が全くわからなかった。
「詳しい話は後でするわ。今はこの戦いを終わらせましょう。アミちゃんこっち来て」
アミがメリイに綿をくるんでもらいながら来た。
「私たちはあの手に潰されてやられた、という事にして倒れるわ。貴女たちはそのまま勝者として立っていてね」
その後、巨大な手はギリギリの高さまで地面に接近して大きな衝撃音と共に消滅した。
『これは一体どーなっているんだ!? ようやく視界が開けて……おおっと! ナンバーの3人が倒れている!!? 対するスノーサンシープはっ!? 2人立っているぞおぉぉぉ!!』
「何でメリイセンパイ倒れてるんすか!?」
陽子が小声で突っ込むと
「3人無事より激戦っぽくていいかなって」
『チーム″ナンバー″3人とも戦闘不能!! と言う事は、優勝はチーム″スノーサンシープ″だぁぁぁああああああぁぁあぁぁぁぁ!!!!』
大歓声に包まれながらも、陽子と吹雪は苦笑していた。
その後、表彰式が行われて優勝賞金100万と賞品の禍々しい石が授与された。
「おめでとうございます! 貴女たちにお願いして良かったです!」
外に出ると、ウェスタールが拍手で陽子たちを出迎えた。
「これが約束の賞品ですけど、合ってます?」
「はい! まさしくコレです」
ウェスタールは満面の笑みでそれを陽子から受け取った。
「どうです? これから祝勝会でも」
「嬉しいんですけど、遠慮しときます。前の街に仲間を待たせてるんで」
「そうですか? なんならそのお仲間さんたちも含めてもよろしいんですよ?」
「また今度お会いした時にしましょうよ」
「……わかりました。しつこいのはダメですね。ではこれで失礼します。またご縁があれば」
お互いに何度もお辞儀をして陽子たちは優帆たちの待つ場所へと向かうのだった。
「———ふー……どこかで怪しまれてしまいましたかね? それは最初からか、僕もまだまだですねぇ……それでは陽子さん、またお会いしましょう」




