7—14 チームA+その7
闘技場は順調に進み決勝戦。
陽子たちは緊張もほぐれて、その時を待っていた。
特にメリイは椅子に座って足をぷらぷらさせるくらいには落ち着いている。
ほぼ吹雪の能力で勝ち上がって来たものだから、陽子は新しく用意した武器、アサルトライフルのような長銃を構える動作を繰り返し確認して撃ちたい欲求を抑えている。
弾は相手に命中しても殺傷能力の無いモノにしてあるので、問題はない。
時を同じくして、陽子たちと反対側の西側の控え室。
2人の女の子が時間まで雑談していた。
「相手誰だろーね、優勝できれば何でもいいけどさ」
長椅子にうつ伏せで寝ながら小柄な女の子は言った。それに対して向かいの一人用の椅子に足をきれいに揃えながら座っている女の子が答える。
「決勝まで残っているんだから、そこそこ強いんじゃないかしら? あとアミちゃん、行儀が悪いわよ」
「えー? 誰も居ないんだからいいじゃーん」
「スカートなんだから姿勢にも気をつけなさいよ」
「何度も言ってるけどさー、アタシのスカートは鉄壁だから捲れる事がないのだ! ガハハ」
アミはスカートの裾をつまんでヒラヒラさせるが、太ももの際どい部分がチラチラ見えてもその先が見える事は無かった。
不思議な現象ではあるが、分かっていても気になるのだから仕方がない。実際対戦相手の男性もそこに視線を向けて集中出来ていなかった。
「先輩たちは元気っすねー頼もしいです」
ドリンクを抱えた女の子が控え室に入って来て、2人にそれぞれ配る。
「おかえりーありがとー」
アミが起き上がって受け取ると、ごくごくと飲み始めた。
「ありがとう、混んで無かった?」
「まあ、体感20分待ちですかね、時計無いんでわかんないすけど」
「帽子のおじさん見かけなかったー?」
そう言えばと思い出したようにアミが質問する。
「見てないですね」
「闘技場の優勝賞品が欲しいとか言ってたのに、全然姿見せないじゃん」
アミは飲み終わったドリンクの容器を部屋の隅にあるゴミ箱に捨てながらぼやく。
「私たちは賞金さえ入れば別に構わないのだけど、終わったら現れるのかしら?」
「えーなんかやらしー」
「あ、優帆先輩、自分が捨てて来ます」
「ありがとう、でも私の方が近いから自分で行くわ」
コンコン
その時、控え室の扉がノックされる音が聞こえた。
「? 誰かしら」
『さあお待たせしました! 只今より決勝戦を行います! それでは入場して頂きましょう!!』
客席の歓声のボルテージが上がり東と西、それぞれの入場口がゆっくりと開かれる。
『まずは東側! チーム″スノーサンシープ″だ! ここまで相手を氷漬けにして勝ち上がって来ており、他2人の戦闘能力は不明だが決勝で披露されるのか!!』
「結局、私のブリザードを突破して来ない事には始まらないよ」
吹雪がふふ、と小さく笑う。
「何か雪女っぽくなって来たね」
「は!? どこが?!」
「出番が来ませんよーに……」
「メリイセンパイさっきまで落ち着いてたじゃないすか! でも特訓の成果試したいでしょ?」
「まだ先でもいいかな、て」
『対する西側はチーム″ナンバー″だ! こちらも他を圧倒して勝ち上がって来た猛者だ! 愛らしい見た目に騙されるな!? 破壊力抜群の一撃がお見舞いされるぜ!』
実況に紹介される中、静かに登場した3人の姿を見た陽子たちは驚きの表情を見せた。
「アミ先輩に優帆先輩、それから鏡花先輩!?」
陽子と吹雪が驚いている横でメリイが食い入るように見つめて
「キョーカちゃんだ! おーい!!」
ぴょんぴょんと跳び跳ねながらメリイは大きく手を振って呼びかける。
「………」
しかし3人は無反応だった。
「あれ?」
「歓声で聞こえないとか?」
「聞こえて無くても、こっちに気付かない事ってある?」
不審に思うが、そんなのお構いなしに試合開始のゴングが鳴らされるのだった。




