7—9 チームA+その2
羊皮メリイが目を覚ますと知らない場所だった。
周りに人も居らず、そして異変に気付く。自分が羊の姿だということに。
パニックに陥りながらも、これは夢であると信じて眠りから覚める事を祈った。
しかしそんな事は起こらないまま月日は流れ、羊の姿のまま魔物から逃げたり街でヒトに話しかけては避けられ、寂しい思いをしていた所、お爺さんと出会った。
独り身だったお爺さんは話し相手が出来て大層喜んだそうだ。
お爺さんはペットの狼型の魔物、マモルンに跨り買い出しやら羊の世話などを行っていた。
メリイはそんなお爺さん、マモルンの横に並んで歩き一緒のひと時を楽しんでいた。
そんなある日、喋る羊が珍しいと数人の男たちが現れ大金をお爺さんの前に出してこう言った。
「この羊を買い取らせてもらいたい」
お爺さんは当然断ったが、生活費に困っていたお爺さんは内心迷ってしまう。
「この子をどうするつもりなんじゃ」
そう尋ねると男は言った。
「オークションの商品として出します」
メリイは一般的な顔立ちの羊ではあるが、この世界では大変珍しい生物でありかなりの高額が期待できるそう。
老い先短い身としては、今更大金などと考える。
考えて考えて……
その後も話し合いは続き、メリイはオークションの商品として買われたのだった。
ショックを受けたメリイは声が出せなくなってしまう。
そして現在、陽子と吹雪の姿を見たメリイは名前を呼んだ。
「ヨーコ、ちゃん…!?」
「その声……やっぱり、メリイ先輩ですか?」
「そうだよ。どうしてここに…?」
「喋る羊の噂を聞いて確かめに」
「ここから出してくれるってこと?」
メリイはケージから出ようと顔を隙間に押し付ける。
「ならん、そいつは商品として出されるんじゃ。連れて行かれたらワシは……」
メリイは俯いて黙ってしまう。
それに対して陽子はお爺さんに向かって言った。
「お爺さん、この人は仲間なんです。売りもんじゃありません」
「わかっておる…わかっておるよ! さっき虎になったお前さんを見てもしやと思った。本当は部外者に見せてはいけない、そう言われていたが…罪悪感からか、合わせてみようと思った」
「そんなの、合わせたらどうなるか分かってるんですよね! 連れて帰ります。ヒトは売物じゃないんで」
陽子はケージの扉を開けようとするが鍵がかかって時間がかかりそうなので持って行く事にした。
チャキ
「……何の真似ですか」
陽子は視線をお爺さんに向ける。そこには拳銃を構えたお爺さんが居た。
「ワシの生活費だけではない、孫の手術代も含まれておる。どうしても金はいるんじゃ。契約違反で没収されたくない」
「そんなの知ったこっちゃ——」
「もういいよ、ヨーコちゃん」
陽子はケージのメリイに目線を合わせるようにしゃがむ。
「こんな目にあっても、わたしにはお爺さんを憎めないし力になりたいと思う」
「どっかの知らないヒトに売られるって事ですよ!?」
「うん……でも、このままじゃダメなんだ」
「ヨウちゃん、他の方法を探そ」
吹雪が陽子の袖を掴んで訴えかけて来る。
陽子はため息を吐くと、一旦外に出た。
「こんなのオークションで競り落とす以外ないじゃん! そんなお金無いよ!」
小屋かは離ると陽子は頭を抱える。
「こっちも金欠だもんね」
「もし」
「持ってるのイズナ先輩だから、実質ゼロだけど」
「あのー」
「そろそろ売店のジュースが飲みたいよ」
「こんな至近距離で気付いてない訳ないですよね?」
陽子が顔を横に向けると真横に帽子を深く被った男の顔があった。
「今、それどころじゃないって雰囲気、伝わりませんでした?」
「お金に困っている事だけは伝わりました」
「そう言う事なんで失礼します」
陽子は吹雪の手を取って移動しようとして、男は慌てて止めてくる。
「お金の事なら力になれると思いますよ」
「借金とかしたくないんで結構です」
「そんなとんでもない! 貸したとしても返せとは言いません、交換条件をのんでくれれば」
「犯罪絡みはNGなんで」
「全然違いますよ! むしろ健全です。闘技場に出場して優勝賞品を獲得して貰いたいんです。勿論、賞金はあなた方のモノです」
「明日のオークションに間に合います?」
「明後日なので」
「じゃ、失礼します」
「ちょちょちょ、そうだ! カジノに行きましょう! 一攫千金狙いましょう!!」
「………違法系ではない?」
「ご安心を、会員限定の大きなカジノです」
「何で必死なんですか?」
「優勝賞品が欲しいからですよ! でも僕には戦闘能力がない。そこで先程の闘いを見させていただいた所、是非あなた方の力をお借りしたい! そう思いまして。金はあるが闘えない者と闘えるが金が無い者、協力して行きましょう?」
お金が欲しいのは事実。
陽子が頷くのに、そう時間はかからなかった。




