7—8 チームA+その1
ネコネと別れて吹雪と共に″喋る羊″の居る牧場へと向かった陽子は、丘を超えた先にそれを見つけた。
沢山の羊が放牧されており、その中に居るであろう特別個体を目を凝らして探してみる。
視力に自信はあるが、羊を見分ける方法はわからない2人は管理小屋へと向かった。
「羊を実際に見るの初めてかも」
近寄って来た羊を見つめながら吹雪が言うと、陽子も記憶を遡らせながら答える。
「あたしは動物園で見た、かな…?」
「いいね動物園、行った記憶ない」
「あたしも小学生の頃くらいだから、あんま覚えてないよ」
「でもこの羊、写真と違う気がするの」
「え、そう? こんな感じじゃない?」
「……ヨウちゃん、羊とヤギの区別できる?」
「え゛………そりゃーアレだよ、毛のモコモコ具合とかじゃないか? 角も違うような…?」
「じゃあ、羊と猿は?」
「んなの全然別物じゃん………って猿じゃんこいつの顔!?」
「だよね! 猿だよねこの子!」
陽子は他の羊の顔も見ると、全匹同じだった。
この世界に動物は居ない居ない言われているが(ルピナスメンバー内で)、知っている動物に出会えて居ないのも事実。ネコネやイズナの猫と狐と自分の虎は省くとして。
陽子と吹雪は管理小屋らしき場所の扉をノックして返事を待つ。
「すいませーん、どなたかいらっしゃいませんかー?」
しばしの沈黙があって、扉がゆっくりと開いた。
中から白い髭がフサフサのお爺さんが現れた。
「なんじゃ? オークションは明日の朝に引き取りに来るんじゃろ?」
「あ、違います。そのオークションに出されるって噂の喋る羊を見てみたくてですね」
「残念ながら、そいつは出来ん。見たけりゃオークションに行ってみるんだな」
「えと、遠くからでもいいんです! どうしても一目見ておきたくて! お願いします!」
「そうは言っても、もうアヤツはワシの所有物じゃないからの———ん?」
お爺さんはバッと小屋から出て来ると、遠くの空を凝視した。すると首に掛けてある笛を思い切り吹き込んだ。
音は全く聞こえないが、お爺さんは数回吹いても音は聴こえなかった。
「おかしいな……マモルンの奴が来ない」
「その笛、壊れてません?」
陽子がそう尋ねると
「これはそういう笛なんじゃ、マモルンにしか聴こえん」
「犬笛みたいなモノなのかもね」
吹雪がそっと陽子に耳打ちした。
しかし笛を何度も吹いても何も来ず、仕方なくお爺さんは歩き出す。
「どちらに行かれるんですか?」
するとお爺さんが空を指差して答える。
「あの黒い影が見えんかね? 羊が襲われとるんじゃよ」
「それは大変だ! 急いで行かないとっ」
「はぁっはぁっ……疲れた」
陽子と吹雪はガクッと倒れ込みそうになるのを堪えつつ、お爺さんに提案した。
「だったら、あたしの背中に乗ってくださいよ!」
陽子は虎の姿に変身してお爺さんの横に付く。
「何じゃお主、化け虎じゃったか」
お爺さんが跨り、その後ろに吹雪が座って出発した。
現場に辿り着くと、羊たちが走り回りその背後を大きめの鳥、ぱっと見カラスの黒い鳥が追い詰めて行く。
すかさず吹雪が黒い鳥に向かって氷の粒を飛ばす。
鳥は旋回すると標的を陽子たちに変更して突っ込んでこようとして止めて帰って行った。
「相変わらず凄いね、ヨウちゃんの威嚇」
「人間相手には効かないけどね」
3羽くらいの鳥が居なくなると、お爺さんはマモルンを呼び掛ける。
陽子も周囲を注意深く観察して、傷付いた犬のようなライオンもどきを見つけた。
お爺さんはその犬?を抱き抱え、来た時と同じように帰るのだった。
管理小屋に運び入れると、ケージの中に羊が居るのが見えた。
「あーワシは何も見とらん見とらんし、ソイツは全然喋らんぞ」
お爺さんが露骨にそっぽを向く。
「ヨーコちゃん!?」
ケージの中からの視線を感じていた陽子はその声に一言。
「ほんとに喋った!」
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