7—6 チームAその6
人間と鬼の子どもは存在する。
しかし母親となった人間の女性は長くは生きられず、それどころか産んだ後に絶命するケースも少なくない。
そこで現れたのが、人間を鬼へと変える薬である。
いつ誰がどうやって広めたのか、今となっては知るよしもないが、攫った人間の女性に飲ませて丈夫な肉体にするという手法を使う事が当たり前になって来ている。
ただ稀に、子どもに飲ませる事もあり、鬼にとって人間の子どもの性別の区別などつかないものだから、男の子に飲ませてしまう事もある。
ツナキは鬼退治を専門とする家系ではあるが、幼少期にその力はなく運悪く鬼に捕まり薬を飲まされた結果自身が鬼となる最悪な存在となってしまったのである。
「だっせーよな、俺もどうしたらいいかわっかんねーんだ」
イズナはそんな話を聞く気力もないので、半分以上は聞き流していた。
「わあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!」
意識を保つ為、イズナは叫んだ。
そして背後に迫って来て居た鬼を睨み飛びかかった。
「お、やる気か?」
「怪我はさせんなよ」
「ったりめーよ」
左右に跳び渾身の爪で鬼の身体を抉ろうとしたが
「おー痛ぇ痛ぇ」
手応えは無く、頭部、背中、足、腕、それぞれへの攻撃は効果を感じられない。そもそも力が入らない。
足払いで体勢を崩そうとするも意味がなく。跳び蹴りをした所で足を掴まれた。
「この状況で暴れられるたぁ大した女だ」
逆さ吊りのまま、イズナはもう片方の足で顔面を蹴る。
「はっはー! 気に入った! コイツは俺が貰う!!」
「んにゃろーッ」
それまで大人しく見て居た紅葉が唸り声をあげた。
「グゥゥウウゥウウ」
「? なんだこいつ」
「どうした?」
「いや、コイツが……」
紅葉の周りの鬼たちが何だ何だと集まり
「ウガアァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァアア!!!」
割れんばかりの咆哮に、客席を含めた全ての鬼たちが紅葉を見た。
「覚醒…? いや、暴走か」
ボスの女の鬼も紅葉を見て把握する。
「こら暴れんなッッ———!?」
グシャッ
と、紅葉を押さえ付けようとした鬼の顔面が潰れ、血を飛び散らせながら1匹の鬼が倒れた。
「ソーキ、対処して来い」
「はっ」
命令に従い、1匹…いや人間とのハーフであろう鬼が素早い行動で紅葉の元へと駆け出す。
「あっちの鬼の嬢ちゃんもタフだなぁ!」
イズナの片足を持ち上げている鬼は紅葉のほうをちらりと見やり、舞台の端っこまで歩き始める。
「あっちの女が戦闘不能で、お前が場外アウトで終いよ」
「———けるな」
「言いたい事があんなら、後でタップリ聞いてやるよ! 2人っきりでなぁ!!」
「ざっけんなぁああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁあああああああああああああああああああああああああああッッ!!!」
「うおっ!?」
イズナの身体が強く光る。
そして
「何だお前は?!」
光が収まると現れたのは金色の美しい毛並み、尾は九本。
九尾の狐だった。




