7—5 チームAその5
鬼たちが娯楽として行なっている年に一度のヨメを取り合うオスたちの闘い。
その対象が鬼のメスなのか、人間の女性なのかは気紛れに決められる。
ただ、鬼のメスが産まれる確率が低いのか年々減り、街に居るフリーのメスは子どもしか居ないという。
そういう場合に人間の女性を攫って来るのだとか。
鬼と人間のハーフは、周りを見渡せばチラホラ見られる。
確かに言われてみれば、一瞬ヒトに見えなくも無い。
「試合には、自分とミカが出るよ」
イズナたちは円を作り話し合いの結果、イズナとミカが出る事に決めた。
潤葉の重力攻撃は強力ではあるが、使う本人が怖がってまともに戦えそうにないから。
ネコネは船酔いがキツくふらふら状態である。恐らく船への攻撃はコレが目的だった可能性もある。
正直イズナも船酔いしているが、そうも言っていられなかった。
それに———
「本当に俺が出なくていいのか?」
ツナキに対して鬼たちは本気でコロしにかかって来るだろうし、何より舞台の外から攻撃してくる可能性もある。
連中にとって、男は要らないし脅威であるツナキにまともなルールが適用されるかどうかも怪しい。
目の前の敵に集中している時に死角からの攻撃はあり得る。
それは、イズナたちにも言える事ではあるが。
「ナニ……これ」
トーナメント第一回戦として、イズナとミカが舞台に上がると10匹の鬼が待ち構えていた。
「数が多いんでな、こうでもせんと長い。お主たちは片方が残れば勝ちにしてやる」
ルールは簡単。
円形の舞台から落ちるか戦闘不能にするか。
「頑張れよー」
特別席として用意された椅子にツナキと潤葉、ネコネが並んで座っていた。
イズナは片手を上げて返事をし、目の前に集中する。
「客席側の鬼たちが、何かしてくるかもだから警戒しといてね」
「うん、わかった」
開始の合図と共に一斉にイズナたちへ向かって来る。
「———ほう、若者連中を場外に落とす力はあるか」
群がって来た鬼たちの攻撃を躱しミカの能力で舞台の端っこまで追い詰めて落とす。
ダメージを与えられたかは不明だが、何とか全員場外アウトでイズナたちが勝ち進んだ。
その他の試合は互いを金棒で殴り合い、血が飛び散りながらも勝った鬼が雄叫びを上げた。
そうして迎えた2回戦。
いや、それは決勝だった。
イズナは紅葉の方を見る。
鎖に繋がれ虚ろな瞳で舞台をボーッと眺めていた。目が合った気がした。
「(待っててね)」
8匹の鬼、その中には巨体の鬼が何匹か、雰囲気が先程までと違う気がする。
「これに勝てば、紅葉ちゃんを連れ戻せる」
客席からの妨害があるのかないのか、鬼たちに注意しながら闘う余裕は果たしてあるのか。
なるべく背後はネコネたち側にして立ち回る作戦で行く。
開始の合図と共に先程と同じく集中攻撃が来るかと身構えたが、別々に闘いが始まった。
むしろこれは、ターゲットにされていない。
「巻き込まれないよう逃げ回りながらやり過ごそう」
「うん」
その後、7匹の鬼が場外へ行くと残った鬼が雄叫びを上げる。
「優勝は俺様だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!」
客席へアピールしている今ならチャンス。
「ミカちゃん今だっ」
「…………」
「ぇ、ミカ…ちゃん…?」
横にいるであろうミカに視線を向けると、その場に倒れていた。
「どうし、た———」
チク
視界が揺れる。
力が、入らない
今の首筋の感覚は……
ふらつく足で何とか背後を振り返る
「なっ———ッ」
特別席に座って居たネコネと潤葉が倒れていて、その隣に吹矢を手にしたツナキが居た。
「君たちは大事な賞品なんだから、闘ったらいかんて」
「———なに、を、してっ」
「警戒心強すぎだろ、でもこっち側は信頼してくれてたのか、警戒が疎かだったぜ?」
イズナは意識が飛びそうなのを堪えるが正直時間の問題だった。
「この薬、結構効き目強いんだけどな、よう耐えてるな……はは、何故裏切ったって顔してんな」
ツナキは立ち上がり、舞台へと歩き始める。
「裏切ったんじゃない、俺は最初から鬼側だ」




