7—1 チームAその1
拝啓
リーナちゃん。
いかがお過ごしでしょうか。こちらは満開の桜がとてもキレイです———
「———それではお風邪など召されませんように。イズナ」
ペンにキャップをするとイズナは「ふぅ」と一息吐いた。
それを背後から見ていた吹雪が訊ねる。
「その手紙、どうやって届けるんです?」
「ん? 出さないよ、会った時に渡すの」
「手紙の意味は?! 交換日記でもいいのでは??」
「日記なんて恥ずかしいじゃないかー」
頬を染めながら照れるイズナに吹雪は続ける。
「大して変わらないと思うんですけど」
「お花見したくなるね」
潤葉が手のひらを上にして桜の花びらが乗らないかなーとやりながら呟いた。
桜並木のまるで春のような景色にテンションが上がる。
右手には水がキレイな小川があり、心地よい音がこの場所で休憩しろと言わんばかりのリラックスしたい気分にさせてくる。
そんな事を考えながら6人は歩くペースを緩めていると、前方から馬車が来るのが見えた。
「馬車とは珍しいね、普通の馬なのかな」
ミカがよく見ようと目を細める。やがて近づいて来る馬車が大きく見えた所で全員の頭に「??」が浮かんだ。
布が被されているので客とかは不明だが、そんな事よりも、馬だと思ったモノが違った。
「ブタ…? 馬じゃなくて豚だった」
「大きさは馬だったよ…?」
簡単に言うと、胴体が馬で顔が豚だったという、まるでケンタウロスのような。
ミカが複雑そうな顔をし、ネコネは通り過ぎた後もじーっと眺めた。
日が暮れる前に何とか街へ到着した一行は見慣れたような景色に驚愕した。
「着物を着たヒトたちがいっぱい居る…!」
陽子が呟くと隣のイズナが指差して言った。
「お団子屋さんがあるよ! あっちはお蕎麦屋さん……ここはニホンかい??」
時代劇ドラマで見る街の風景にこれまでのファンタジー世界観と違い過ぎて面食らった。
「すごーい、かんざし何てこの世界で初めて見たかも」
露店に並べられた商品を見た潤葉と吹雪が盛り上がる。
「オニが出たんだよっ!!」
街行く人混みの中、男の声が聞こえてきた。
イズナは興味本位で聞き耳を立てる。
「鬼なんて昔の話だろ? 実在するかも怪しいぜ」
「知らないのかよっ? ついこの間白髪の女の子が連れて行かれたのをよ」
「そんな子居たか?」
「外の娘らしいが、人間に化けた鬼に連れて行かれたって話だ。そして今回は漁師の娘が連れて行かれたってよ」
「ふーん…? 特に噂になってないが、どこで聞いたんだ?」
「それはな……俺様ノ仲間カラヨッッ!!」
会話していた男の片方の身体がみるみる大きくなり肌も赤く染まった。到底ヒトとは思えない巨体に近くのヒトたちが悲鳴をあげながら逃げ出した。
「わざわざ俺の前で正体現すたぁどういう事だ?」
目の前で化け物になったのに、話し相手の男は驚いた様子もなく冷静に質問を投げかける。
「先日、我が同胞をヤッた事への報復に決まってるだらォォォォォォォォォッッ」
大きな金棒を振り回して男に勢いよく振り下ろしたが、男は軽やかなステップで躱すと余裕たっぷりの表情で目の前の化け物、鬼に答える。
「鬼なんかヤッたか? 変に絡んで来たヤツならぶっ飛ばしたがな。それだけだ」
イズナたちは目の前の光景を眺めていたら気がつくと自分たち以外誰も居なかった。
男に挑発され気が立っていた鬼は、こちらに気がつくと何故か突進して来た。
「ふんっ!!」
「ガハッ」
ミカが遠距離パンチを繰り出すと、鬼は殴り飛ばされ対峙していた男の足元まで転がる。
「何だか知らねーが凄いじゃんか」
男はにこやかに笑うと懐から札を取り出し、倒れた鬼の額にペタと貼り付けた。
すると鬼はそれ以上動かなくなったのだった。
「人間と鬼は共存出来ねーから棲み分けてんのに、こっちの領域まで来んなって話」
「鬼って実在するんですか?」
イズナが質問すると、男はにこやかに答える。
「実在してっから、この鬼が居るっつーわけよ。まあ俺も久々に見たけど」
「白髪の女の子について、詳しくわかりませんかね」
「ん、知り合いか?」
「かも知れないんで、一応確認を」
「この馬鹿鬼しか目撃してねーってんなら信憑性は低い。ほんとだったとしても、鬼ヶ島に行かねーと確認のしようがない」
「ちなみに何ですけど、白髪の女の子って珍しいですか?」
「珍しいんじゃね? 少なくとも俺は見た事ない」
「最後に。鬼ヶ島ってどこですか?」
「……行くつもりなら止めときな。あちらさんの領域に足を踏み入れて、食われても文句言えねーぞ」
「大切な仲間かも知れないんで、確かめたいんです」
「ふーん……詳しい位置は漁師に聞いてくれ、海の方だからよ。とっくに食われてる可能性もあるがな」
「イズナ先輩、白髪の女の子って…?」
吹雪が質問すると、イズナは人差し指を立てて答えた。
「3期生に該当する子が居るじゃないか」
「それって……紅葉先輩ですか」
「うん、でもまずは聞き込みからだね」
イズナたちは二手に分かれて聞き込みを始めた。




