6—3
「どういうつもり?」
エルは琥博を睨みつける。
「言った通りですよ……先輩方のエネルギーを吸い取らせて貰うんです」
エルは半透明のシールドに殴り掛かる。
バシィィイイン
「痛ぇッッ?!」
弾かれた腕ごとエルは後方に吹っ飛ぶ。すぐ後ろに居た陽子が受け止めた。
莉衣奈も軽く剣で突ついてみたが弾かれた。
「大人しくしておいた方が良いですよ。無駄に疲れるだけです」
「こーなりゃアレだ! ミカっ出番だ」
ミカの攻撃はシールド関係なく空間を移動する。晴はミカを探して見回すが見つからず、返事も無かった。
「……あれ? ミカは??」
「ここで寝てるよー」
ネコネが地面にうつ伏せになっているミカを突つきながら答えた。
「何でこんな時に寝てんだ!? 起こしてよ」
「ミカ先輩の能力が一番厄介そうだったんで、多めにクスリを盛らせていただきました」
「は…? くす、り?」
「昨日、風香ちゃんが沢山話してくれたんで、皆さんの能力はある程度把握してますから」
琥博はニコニコと答える。
「だったら吹雪っ———くそっ」
吹雪もセミノの膝枕で眠っていた。
「遠距離攻撃は要注意、まぁ……もうそろそろタイムアウトですかね」
「これは、どう言う事……??!」
グラスの後片付けを終えた風香と椿芽がやって来た。
風香は莉衣奈たちを囲っているシールドに近寄る。
「琥博ちゃんに閉じ込められたのっあの装置を何とかして」
莉衣奈は端的に説明する。それを聞いた風香は状況は理解出来ていないが、大きな装置に目をやった。
「説明してないの? タカミー」
「これからする所さ。風香」
風香は無言で椿芽の方に視線を向ける。先程までの笑顔は消え、睨んでいる。
「私たちの仲間にならないか?」
「仲間…? 今でも先輩たちと同じ仲間でしょ?」
「違う。ルピナスの仲間ではなく、アクマの仲間だ」
「言っている意味がわからない! それって先輩たちを裏切るって事でしょ!?」
珍しいくらいに風香は声を荒げる。普段は大人しい分、激昂する風香を見るのは初めてなのかもしれない。
「ここはアイドルが居ない世界なんだ。そして魔王が支配する世界……今こそアクマを復活させ、魔王を倒そうではないか」
「……魔王へはどの道辿り着く、でもそれは先輩たちルピナスの仲間と共に! なぜアクマに従うのかわからないけど、仲間になるのはそっちだよ」
琥博は肩をすくめてやれやれと首を横に振った。
「ほらやっぱり風香ちゃんは無理だって…あ、雨」
琥博が空を見上げると雨雲がこの辺一帯の上空にあり、ポツポツと降って来た雨はそんなに時間がかからずに土砂降りへと変わった。
それでも風香と椿芽はお互いを睨み合うのを止めない。
「勝負だ。私が勝ったら先輩たちを解放して一緒に来るんだ!」
「風香、お前は私には勝てないよ。お前が負けた時は仲間になってもらうぞ。でなきゃ命はない」
互いに距離を取り合ってタイミングをはかる。
風香の間合いは見て分かるが、椿芽の攻撃スタイルが分からないので距離の詰め方が難しい。
「!?」
キンッ
突然目の前に何かが飛んできて、風香は咄嗟にそれを斬り落とした。
「よく反応したな。これならどうだ?」
キンキンキンキンキンキンキンキンッッ
雨で視界が悪いが、連続で飛んで来るモノを全て斬り落とした。
それは、鳥の羽だった。
風香は攻撃が止んだ隙に距離を詰める。
椿芽も走り出した。
キンッ
タイミングをズラしながら飛んで来る羽を斬り落としながら走る速度を上げる。
「くっ!?」
正面からの強風に顔を顰める。
椿芽の背中に大きな鳥の翼が広がっていた。
羽ばたきと同時に無数の羽が飛んできて、風香の頬や太腿を掠めていき血が流れた。
椿芽は大きく跳び上がるとそのまま上空へと飛んでいった。
さすがに雨のように羽を降らされたら厄介なので、風香は抜刀の構えをとった。
椿芽が地上を見下ろしたその瞬間——
一歩、二歩…三歩
ダンッ
地面を強く踏み込み風香は高くジャンプをする。
身体を回転させ、そして刀が白く輝いたその時
ビシィィイイイィィッッ
風香の右腕が何かに掴まれた。
それは椿芽が出したムチで、思いっきり引っ張り上げられた風香は椿芽の前まで無防備な状態で釣り上げられたような格好になる。
「終わりだ」
ズザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ
無数の羽が風香のお腹に突き刺さった。
「———かはッッ」
口から血を吐き、上半身は血塗れになった。
そして地面に叩きつけるように振り落とされる。
うつ伏せで倒れ、動かなくなった所で椿芽は降り立った。
「もう一度問う。私たちの仲間になれ、でなければ命はない」
少しの沈黙があり、やがて風香の指が動き出す。
「何度…聞かれてもッ」
拳に力が入り、風香は顔を上げる。
「先輩たちをッッ裏切ら、ないッ」
「………そうか、残念だ———っ!?」
辺り一面に煙が充満した。風香が煙玉を使ったのだ。
「けほっけほっ目眩しで逃げるつもり?!」
琥博が手をパタパタさせる。
「でも、まぁ……相手が悪かったね。タカミーの”眼”からは逃げられない。さようなら、風香ちゃん」
やがて煙がはれた頃には2人の姿は無かった。
ザァアアァアアアァァァァァァ………
そこに、ひとりの少女が力無く倒れていた。
全身血塗れで、意識があるのか無いのか。
「…………」
———声が出ない
———身体が、動かない……
———痛みの感覚が、もう…ない……
———ごめん……な、さい……せん、ぱ……
ザァアアァアアアァァァァァァ………




