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道中に遭遇した獣たち(今後は魔物と呼称)を、風香が蹴散らしながら進んでいくと。
「ここ……ですか?」
先程の広場よりは狭いが昨日来た広場に到着し、奥のほうに崖があるのを確認すると莉衣奈は頷いた。
岩などがほとんどないので隠れる場所もなく、見渡しても何も居ないのがわかる。
「さすがに、ずっと同じ場所に居るわけではないってことかな……?」
莉衣奈がそうつぶやくと同時に風香が叫ぶ
「リーダー上です!!!」
上空数メートルにボスがこちらに向かって突進してきているのが見えた。
リアは真上にバリアーを張り衝突を防いだ。
ボスは距離を取りこちらを伺っている。風香は懐から玉を取り出しボスの足元に投げつけるとボスは横に大きく飛び退いた。
その方向に風香は駆け出し斬りかかる。魔物のボスは牙や爪でそれらを受け止め素早い動きで反撃してくるのを風香もかわしたり刀で応戦していた。
「このままじゃ、足手まといのままだ………」
莉衣奈はここに来るまでに能力を使えるようにしておきたかった。
リアは莉衣奈とイズナのそばで敵の攻撃に備えている。
「先輩がたそっち行きましたッッッ!!!」
魔物は莉衣奈たちの目の前で方向転換し、視界から消えた。
右に気配を感じたリアは素早く姿見鏡サイズのバリアーを張る。
「リーナちゃん左だ!!」
イズナの叫び声で咄嗟に莉衣奈は左側に剣を横に構えた。
「能力は使えなくても、防御には使えるよ!」
ボスのひっかきを剣で受け止め、弾いた。
風香が再び戦闘を開始する。
呼吸の乱れは疲れじゃない、今までに体験したことの無い生物との戦いに抵抗があるのだ。
犬じゃない、狼じゃない、得体の知れない魔物なんだ。
「リーナちゃん――魔物が集まって来てる」
「崖側に行きましょう、正面からならバリアーで防げます」
森側から来る魔物たちから視線を外さないよう崖側に後退る。10頭を超えてくると数えるのも面倒で、ゆったりとした足取りで近付いてくる。
ボスに加勢されると風香が危険なので、なるべく莉衣奈たちにを惹きつけなければならなかった。
「リアちゃん、その役目……私に任せてくれないかな」
リアが石を拾うのを見た莉衣奈が一歩前に出て言う。石を受け取ると、莉衣奈は手前にいる1頭に投げ付けた。
怒った魔物が飛びかかって来るタイミングでリアがバリアーを張り弾き飛ばす。何頭かはそれで済んだが、続々と来る魔物の量にバリアーは次第に壊れていく。
「ふっ!!」
バリアーが砕けたタイミングで莉衣奈が剣で薙ぎ払う。そして———
「———あ」
剣を振った風圧なのか剣から何か出たのかわからないが、命中した魔物の他に付近の魔物も数頭吹っ飛び崖から落ちていく。
「リーナちゃん、左手……光ってる」
「足手纏いは嫌だ! リーダーとして皆んなを守る力が欲しいんだ!!」
もう迷いは無かった。
今までが嘘のように、莉衣奈は戦えるようになった。
ほとんどが力のゴリ押しだったが、集まって来た魔物は一掃する事が出来た。魔物は次々と黒い煙のように消滅していった。
「………す、凄いよリーナちゃん!!」
「はい、凄い力でした!」
「あ、ありがと……なんか、身体が勝手に動いたというか、自分じゃない動きしたんだよ」
「あとはボスだけですね!」
3人が風香の方に視線を移すと、尋常じゃない速度での戦闘が繰り広げられていた。
どちらが優勢とかではなく、拮抗した展開に莉衣奈はリアに言った。
「私がジャンプしたタイミングで足場を作って」
「———はい!」
「風香ちゃん!ボスを上空に飛ばしてッッ」
莉衣奈は全速力で駆ける。そして大きく飛び上がると、着地点にバリアーが上向きに張られ、それを踏み付け更に高く飛び上がる。
それを確認した風香はボスを真上に蹴り上げた。刀ではなく、足蹴りで意表を突かれたボスは無防備になり———
莉衣奈はボスに剣を振り下ろした。
キレイに真っ二つになったボスは、そのまま消滅した。
「能力、使えるようになったんですねリーダー!」
風香が満面の笑みで言うと、莉衣奈も笑顔で返す。
ボスを倒したからか、狼型の魔物はこれ以上攻めて来る様子は無かった。
ここに集まって来た魔物は倒したのだが。
それから4人は洞窟に戻り、ボス討伐の報告をした。
特に何も無く、平和だったそうで4人はホッとした。
村人たちにたくさんの感謝の言葉を貰って、その日は村に一晩泊めてもらい、翌朝出発することにした。
莉衣奈は改めて、剣の持ち主である老夫婦に話しかけた。
「その剣、使えたんだねぇ……良かったわ」
「ありがとうございました。これでお返しできますね」
「ふふ、言ったでしょ? 使えるのなら、あげるって……そのままアナタが使いなさいな」
するとお婆さんは隣で黙っているお爺さんの方に顔を向けると、お爺さんは無言で頷いた。
それから莉衣奈は、老夫婦のかつての冒険した話を寝る時間まで聞き続けた。
――翌朝、6人は村の入り口に集まり昨夜話し合った行先についての確認をした。
「ここから北のほうに行くと、港町があるね……そこに向かうという事でいいんだよね」
老夫婦から渡された世界地図を手に、莉衣奈は現在地から指でなぞる。
他の5人が覗き込むようにして確認をすると、互いに頷きあい肯定した。
「お待ちなさいな、えーと………イズナさんでしたっけ」
「はい?」
イズナが振り向くと、お婆さんが何かを手に持って立っていた。
「昨日……莉衣奈さんから話を聞いてね、私が昔着ていた服なんだけど……お渡ししようと思ってね」
「ほ、ほんとですか!?」
狐の姿でぴょんぴょん跳びながら喜びを表す。
しかし狐の姿では服を運べないので、莉衣奈が受取り二人で物陰へと向かった。
それから少しして、冒険者スタイルになったイズナはヒトの姿で走って戻ってきた。
その格好をネコネはまじまじと眺めて
「ミニスカじゃなくて、デニムショート風なんだ………でも、へそ出しは最高だね!」
「親指立てて感想言わないで欲しいんですけどー!!」
「そんなことより注目する所がありますよ……ケモミミが付いてますよイズナ先輩!」
リアの指摘に全員が注目する。
ぴょこぴょこと動いた。
「耳ならボクも付いてるよー」
ネコネの髪の中から、ぴょこんと耳が出てきた。
それから他のメンバーが自分の耳を確認したが、ケモミミがあるのはイズナとネコネだけだった。
「その耳、どうなってるの? 聴こえるの?」
莉衣奈が質問するとイズナが「遠くの音が聴こえる感じかねー」と答えると
「ちゃんと耳を閉じとかないと大勢ヒトが居る場所とかだと痛くなりますよぉーイズちゃん先輩」
ネコネがケモミミを出したり仕舞ったりを繰り返しながら言う。
一応、尻尾も確認したが二人とも無かった。
「敵の接近とかは分かるから、人混み以外では出してても大丈夫だと思いますよぉー」
「耳をそんなぴょこぴょこ出し入れ出来ないなー」
「ねえねえ! その耳触ってもいいっ?」
マホが興奮気味にネコネにお願いすると、ネコネは「はいどぞー」と頭を差し出して撫でられた。
「おおー! ネコッぽい!!」
「猫ですからねぇ」
「コンちゃんも!」
「嫌です拒否します」
「くっそー! 背が高くて届かないっ! しゃがめー!!」
「残念でしたねー諦めましょって事で」
「こーなりゃ奥の手じゃー!」
マホは箒に跨り宙に浮き、イズナに突撃する。
「んびゃ!?」
イズナは姿勢を低くする事でそれをかわすと、マホは勢いよく草むらに突撃して行った。
「チッキショー!! ニトちゃん擦りむいたー助けてー!」
「……はぁ……何やってるんですか、もー」
リアは呆れながらも、マホの回復に向かう。
そんな話をしながら
6人は港町へと向かうのだった———