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無人島から出て5日目、本日も穏やかな波で天候は晴れ。各所点検異常なし。
真希ちゃんが合流した事により、ますます船の中は活気付いて騒がしい日々。
初航海当初より乗船人数も増え、部屋の中に全員が収まらないほど。食堂や倉庫に避難するメンバーも居るとか。晴の日は殆どが甲板に出ている。
真希ちゃんがフライパンや鍋などの調理器具を作ってくれたおかげで料理の幅が広がり、料理好きの人達が張り切ってご飯を作ってくれています。
「………ふぅ」
「おつかれー」
莉衣奈がペンを置くとイズナがホットコーヒーの入ったカップを机に置いてくれた。
「ありがとー」
「それは航海日誌かい?」
イズナは覗き込むように莉衣奈の手元にある本を見る。
すると莉衣奈は軽く首を横に振ると
「書いた事も見た事も無いからただの日記。最初はメモ帳に書いてたんだけどね、真希ちゃんがスキルでこんな立派な日記帳を作ってくれたんだよ」
硬い厚紙の表紙を撫でるように触りながら莉衣奈は答えた。
「ほんと、こーゆーのマメだよね。小学生の頃だったかの夏休みの絵日記でハマったんだっけ?」
「んー、そうかも……何かを書くためにイズナちゃん誘ってあちこち行ったよね」
「そうそう! 虫嫌いなのに森林公園に行って虫見て大泣きしてた」
「別に森林公園は虫以外にもあったでしょ、イズナちゃんが草むらに入って行ったのが悪いんだから」
コンコン
その時、扉がノックされてそちらに視線を向けると響が立っていた。
「お二人さん、夕飯できましたよ」
「ありがと、今行く」
船長室として宛てがわれた部屋から莉衣奈とイズナは出る、最後に響が扉を閉めて3人は食堂へと向かった。
料理担当の潤葉とまもりが手分けして日々の献立を考える。
日中にイズナと響、風香や陽子が釣りをして獲れた時には食卓に並ぶ。
食堂に入ると、それぞれのテーブルに分かれて各々食事を摂っている。
中でもひときわ騒がしいのは、言うまでも無く柑奈たちのグループだった。
「やっぱ米が欲しいよ米!」
「前に立ち寄った街の米は高くてねー……人数分を考えると、どーしても手が出せないのよ」
晴がパンに齧り付きながら言うと潤葉が残念そうに答えた。
釣った魚にスープとパン。それと山菜の天ぷらが並ぶ。新しく手に入った炊飯器、だが肝心の米が無い。
お金は全く無いわけでは無いが、どうしても節約を考えて高価な物は渋ってしまう。
「あのーお取り込み中失礼しますけど、よろしいでしょうか?」
「なに? 羽海ちゃん」
「なんか、クジラなのかサメなのか分かんない生き物が話しかけて来てるんだけど……助けてくれませんかね?」
「え?」
莉衣奈たちは甲板に出ると暗がりの海の中に黒くて大きな生物を確認する事ができた。
「あ、皆さんお揃いで」
割と明るめのテンションで話しかけてきた。
「その声って、サっちゃん?!」
莉衣奈の横に来た風香が叫んだ。
「お、風香ちゃんじゃん! お久さー」
その場に居た全員が一瞬考えて、目の前の生物が鮫島沙智だと気付き驚いた。
「だったら最初に言ってくれよ」
羽海がそう愚痴ると
「まだ羽海先輩と全然絡んで無いですもんねー挨拶くらいですもん気付いて貰えなくても仕方ないです」
沙智は風香と同期でデビューからまだ1年経ってない新人である。
「せっかく会えたんだし上がって来ない?」
「んーこれから帰るとこなんだよねー」
「帰るって、どこに…?」
「もう少し進んだとこに拠点があってね、そこに7期の皆んなが居るんだ」
「ホント!?」
風香が喜びの余り身を乗り出した所で莉衣奈が引き戻す。
「案内するんで、付いてきて貰えますか?」
沙智はヒレを大きく動かして移動を開始した。
「羽海ちゃん、見失わないように追いかけよう」
「了解です」
沙智の身体は黒くて暗い海では見辛いが、先行する沙智を船は追いかけた。




